ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

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『The Wiz』2024.5.17.20:00 @Marquis Theatre

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『The Wiz』とは

1975年ブロードウェイで初演されたミュージカル。

作詞・作曲はCharlie Smalls。脚本はWilliam F. Brown。

ライマン・フランク・ボームによる1900年の児童小説「オズの魔法使い」を、アフリカ系アメリカの文化という文脈で捉え直したもの。

初演時はミュージカル作品賞を含め7部門でトニー賞を受賞した。

今回は2024年ブロードウェイで再演されたプロダクションを観劇した。

Amber Ruffinが脚色し、オリジナル脚本から一部変更されている。

演出はSchele Williams。

あらすじ

カンザス州でエムおばさん、ヘンリーおじさんと一緒に暮らしている少女ドロシーは、農場での暮らしに飽き飽きしており、どこか別の場所に行ってみたいと願っている。

白昼夢ばかりに浸っているドロシーにエムおばさんは小言をこぼし、ドロシーと口喧嘩をするが、最終的にエムおばさんが謝り、ドロシーを愛していることと、人生経験を積むにはまだ早すぎるのではと不安に思っていることを伝える。

そこに竜巻が起き、ドロシーは愛犬トトとともに家ごと吹き飛ばされてしまう。

気がつくと、彼らはオズの国にいて、悪い魔女は家の下敷きになっていた。

家に帰りたいと願うドロシーは、カカシやブリキ男、ライオンを連れ立って、オズの魔法使いに会いに行く。

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キャスト

Dorothy    Nichelle Lewis

The Wiz    Wayne Brady

Glinda    Deborah Cox

Aunt Em/Evillene    Melody A. Betts

Lion    Kyle Ramar Freeman 『A Strange Loop』

Tinman    Planco Jones, Jr.

Scarecrow    Avery Wilson

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感想

今回は、全米ツアーを回っていたプロダクションがブロードウェイで公演をする形で、ブロードウェイ公演終了後にもさらにツアー公演が決定しています。

ツアー公演メインで作られているため舞台装置は少なめでプロジェクションがメインの背景と聞いていたので、正直あまり期待していなかったのですが、プロジェクションの質が非常に高く、舞台に奥行きが出て、かつキャストによるパフォーマンスと衣装デザインとも合っていて効果的でした。

CBSでの特集


www.youtube.com

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オリジナル舞台版を観ていないのではっきりしないですが、Amber Ruffinによる脚色の主なポイントは、ドロシーをはじめとした登場人物の背景を明確にしたこと、また、ミュージカル『The Lion King』のネタを織り交ぜたこと、などでしょうか。

例えば元々、ドロシーはカンザスの農場での退屈な生活に飽き飽きして違う世界への憧れを白昼夢でみるような少女として描かれていますが、今回のプロダクションでは「ドロシーは両親を亡くした孤児であるために叔母に引き取られ、転校先の学校での新たな生活に馴染めないことから別の世界を求める」というように、ドロシーの感情の動きがより具体的で理解しやすくなっていました。

この脚色に関しては原作者への敬意に欠けるといった意見もあり、評価は様々で、トニー賞でもほぼスルーされてしまいました。この点では2022年のAaron Sorkinによって脚色された『Camelot』と類似しているように思いました。一方、2019年の『Oklahoma!』再演では脚本 を全く変更することがなかったにも関わらず、演出によって新たな作品の意義が示され、トニー賞リバイバル作品賞を受賞したことは記憶に新しいです。もちろん時代の変化に伴い、差別的あるいは侮辱的な言葉や表現を変更する必要が迫られる可能性はあるかもしれませんが、そうではないオリジナル脚本への介入はやはり好意的には受け止められていないようです。

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ミュージカル史上、最も歌うのが難しいナンバーとして挙げられることの多い「Home」ですが、従来であれば作品の最後の最後でドロシーが1回歌うのみのところ、今回は冒頭のシーンから何回も「Home」の短いフレーズを断片的にドロシーが歌い、ラストで歌う時に最大の盛り上がりを迎える形になっていました。冒頭では「Homeはどこなのか」という戸惑いの中で歌っているのに対し、ラストでは「この場所こそ私の居場所なのだ、家に帰りたい」という強い希望を持って歌っているのが対照的でした。

ラストで「Home」を絶唱したドロシーは振り返り、家に帰っていきますが、そこにエム叔母さんは登場せず終幕となりました。これもオリジナルと違う点。

また、今回のプロダクションではアフリカン・ルーツを色濃く感じる場面が何度かありました。例えばプロジェクションのデザインが明らかにアフリカ文化を感じさせる模様になっているなど。他にも、登場キャラクターのカカシやブリキ男、ライオンが抱えているそれぞれの悩み、つまり、理解力の乏しさ、感情の欠如、勇気のなさ、といったものがアフリカ系アメリカ人が抱えるコンプレックスで、それを克服するために「Ease On Down the Road」していく旅というふうに捉えられて興味深かったです。

前述したミュージカル『The Lion King』のネタというのは、エメラレルドシティに着いて門番に一行はバカにされる場面で、ライオンについて門番が『The Lion KIng』の冒頭の一節を真似しながら小馬鹿にするというくだりがあったということです。これはちょっとしたお遊びという感じでした。

竜巻のシーンは、背中や手足にマントのように広がる布をつけたダンサーが回転しながら踊ることで表現されていました。その他にも場面転換で群舞が何度かみられ、その都度圧倒されました。

キャストではNichelle Lewisの瑞々しいドロシーが印象的でした。

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