ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

ミューオタるんによる純粋なミュージカルブログ

『Oklahoma!』2019.5.4.13:00 @Circle in the Square Theatre

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『Oklahoma!』とは

1943年ブロードウェイ初演のミュージカル。

原作はリン・リッグズによる「ライラックは緑に育つ」。

音楽は『サウンド・オブ・ミュージック』など数々の名作を手がけたオスカー・ハマースタインⅡ世とリチャード・ロジャース

初演時は、『マイ・フェア・レディ』が登場するまでの間、ブロードウェイの最長ロングラン記録を持っていた。

今回観劇したプロダクションは、2015年のバード大学でのワークショップ、2018年ブルックリンにあるSt. Ann's Warehouseでの上演の後、2019年からブロードウェイに移行したもので、チケットの売上金の一部を銃廃止を推進する活動に寄付することを発表し話題になった。

演出はDaniel Fish。

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あらすじ

舞台は1906年オクラホマ州

エラーおばさんに育てられたローリーは、カーリーのことが好きだが、彼が他の女性たちとも仲が良いことを怒ったローリーは勢いで、農場手伝いのジャッドと村祭りに一緒に行く約束をしてしまう。

村祭りに行く前、庭先でうっつらうっつらしていたローリーは、ジャッドがカーリーを殺す不吉な夢を見る。

一緒に馬車で行く途中で、ジャッドはローリーにキスを強要しようとしたので、彼女はジャッドを馬車から突き飛ばして置き去りにしてしまう。

ローリーが村祭りの会場に到着すると、余興で学校の資金集めの競りが行われようとしていた。

すると、ローリーが寄付した料理入りの籠を巡って、カーリーとジャッドが争い、カーリーが大事にしている馬やピストルなど全財産を叩いて競り勝つ。

ローリーはカーリーの思いに素直になり、2人は遂に結婚することになる。

しかし、それを恨んでいたジャッドは、2人が乗っている干し草に火を放ち、殺そうとする・・・

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キャスト

Curly McLain    Damon Daunno

Laurey Williams    Rebecca Naomi Jones

Jud Fry    Patrick Vaill

Aunt Eller    Mary Testa

Ado Annie Carnes    Ali Stroker

Will Parker    James Davis

Andrew Carnes    Mitch Tebo

Ali Hakim    Will Brill

Gertie Cummings    Mallory Portnoy

Lead Dancer    Gabrielle Hamilton

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感想

この日のマチネは、ロジャース&ハマースタインⅡ世が手がけた名作『オクラホマ!』を斬新に演出したrevivial公演を観劇しました。

私が今まで触れてきた『オクラホマ!』は映画版、そしてヒュー・ジャックマンがカーリーを演じた舞台版を収録したものなどですが、これらからはいずれも中西部の古き良きアメリカという印象を得ていました。

しかし、今回の公演はそういったものを想定して劇場を訪れると、だいぶ裏切られるかと思われます。

▼highlightsです。


Highlights From Broadway's Oklahoma!

▼観劇後の感想です。

今回の劇場はCircle in the Square Theatreというアリーナ型の劇場でした。

こちらでは今まで『Godspell』や『Once On This Island』などを観劇したことがあります。

▼座席表はこんな感じです。

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今回は上の座席に加えて、舞台と同じ高さにテーブル席が設けられていました。

劇場に入ると、天井から垂れた色とりどりのリボン、ステージには机の上に置かれた鍋など、祝祭的雰囲気を感じた次の瞬間、壁全面に取り付けられたおびただしい数の銃に気づき、すぐに尋常ではない雰囲気を察知しました。

台詞や基本的な楽譜は同じものを使っているはずなのに、なんだかとても不穏な印象を受ける舞台でした。

まず音楽ですが、従来のオーケストラによる演奏とは異なり、ヴァイオリン、ベースに加えて、アコースティックギターマンドリンバンジョー、エレキによる少数のバンドで、イメージが全く違いました。

曲と曲の繋ぎの音楽も、ハマースタインとロジャースの音楽ではあるのですが、マイナー調に変調されていました。

冒頭ではカーリーがギターを弾き、「Oh What a Beautiful Morning」を歌いながらゆっくりステージ上を歩きます。

カーリーを演じるのはDamon Daunno

もともとロンドン公演以前の『Hadestown』でOrfeusを演じていた方です。

彼の歌い方が、もうとてもセクシーでかっこいいのです。

そして、アニーを演じるAli Stroker

彼女はエネルギッシュな魅力に溢れていて、やや重苦しい雰囲気を吹き飛ばしてくれる存在でした。

「車椅子だから選ばれたと思われたくなくて頑張っている」と語る彼女もまた、既存のアニー像に縛られない彼女らしいアニーを演じています。

▼Ali Strokerによる「I Cain't Say No」


"I Cain't Say No" | Rodgers & Hammerstein's OKLAHOMA!

実際には、幕間にチリとコーンブレッドを配っていたようなのですが、私がお手洗いに行っている間に終わってしまっていました。

劇中のお祭りで振る舞われたものを食べることで、immersive感が増しそうです。

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さて、今回の観劇で非常に印象的だったのは、「Dream Balletのシーン」と「暗転と映像の効果」です。

まず「Dream Balletのシーン」。

これはローリーが「Out of My Dream」を歌った後、彼女の夢の中で繰り広げられる葛藤をダンスで表現するというものです。

映画版もヒュー・ジャックマン版も、ローリーがカーリーとジャッド2人の男性の狭間で揺れ動く気持ちを表現しています。

映画版ではローリー自身ではなく、ローリー風のダンサーとカーリー風のダンサーによるダンスでしたが、ヒュー・ジャックマン版では実際のローリーがダンスしていたので、特別規定はないようです。

特に映画版のDream Balletは「小さい頃に見てトラウマになった」というアメリカ人続出のトラウマシーンとしても有名ですね。

 今回は、Lead Dancerの若い女性がメインで踊るものとなっていました。

このLead Dancerは、丸坊主で裸足で、布を身にまとっているという中性的な出で立ち。

最初から何かから逃げ惑うかのように、ステージ上を独特なステップで激しく駆け回ります。

すると、途中で照明が落ち、天井から何か大きなものが落ちてきます。

何かと目を凝らすと、大きな靴のオブジェでした。

これがいくつも天井から立て続けに落ちてくるのです。

これは、単にカーリーとジャッドの2人の間で揺れるというより、ボックスソーシャルという「自分の料理カゴに最高値をつけた男性と踊らなければならない」というしきたり自体が男性優位社会の象徴で、そういった伝統やしがらみに抑圧され、自身には選択権のない女性像を描いているのかなと想像しました。

「Me Too問題」に端を発した現代的な解釈というように捉えました。

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もう一点、「暗転と映像の効果」。

本公演では普通の劇場と違って、客席が暗くステージ上だけ明るいということはなく、基本的にステージと同じ明るさで客席も照らされています。

しかし、劇中、ステージと客席が一斉に、何度も暗転したり、緑照明になったりします。

緑照明はdrugか何かを表現しているのかなと最初は思ったのですが、おそらくそれは関係なさそうで、深い意味はよく分かりませんでした。

暗転は唐突に起こり、暗転中はわずかな明かりもない真っ暗闇で、キャストのセリフだけで状況を判断せざるを得ませんでした。

暗転したのは、記憶している限りでは、ジャッドがローリーに迫るシーンとカーリーがジャッドと争うシーンだったかと思います。

前者はやや猥褻な響きが広がり、後者は暴言とともに途中で銃声なども聞こえました。

暗転させて視覚をブロックすることで、観客に想像の余地を与え、舞台に深みを持たせる効果がありました。

また、暗転中、ビデオカメラでジャッドの表情をアップで撮影し、背景に投影させていましたが、これはいまいち何のためだったのか、よく分かりませんでした。

2019年のトニー賞では、リバイバル作品賞主演男優賞(Damon Daunno)、助演女優賞(Ali Stroker, Mary Testa)、演出賞(Daniel Fish)、舞台デザイン賞(Laura Jellinek)、音響デザイン賞(Drew Levy)、編曲賞(Daniel Kluger)の7部門でノミネートされています。(助演女優賞は2人それぞれノミネートされています。)

SDまとめ

今回もステージドアへ。

マチネ後だったにも関わらず、多くのキャストと交流できました。

▼Curly役のDamon Daunno。トニーノミネートおめでとう。

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▼Aunt Eller役のMary Testa。ブロードウェイの重鎮ですが、とても気さくな方。トニーノミネートおめでとうございます。

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▼Jud役のPatrick Vaill。話し振りから作品への思い入れが強い方なのだなと感じました。

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公式サイト:

Rodgers & Hammerstein’s OKLAHOMA! | Official Broadway Site | Home

 

▼今回はCircle in the Square Theatreで観劇しました。ロングランしている『Wicked』が上演されているGershwin Theatreの隣の劇場です。