ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『ミーン・ガールズ(2024)』Mean Girls

ミーン・ガールズ(2024)』のポスター


ミーン・ガールズ(2024)』とは

2024年に公開されたユニバーサルピクチャーズによるミュージカル映画

2004年の同名映画を基にした2018年ブロードウェイで初演された舞台ミュージカルを映画化したもの。

2004年の映画は元々2002年に発表されたRosalind Wisemanによる自己啓発書『Queen Bees and Wannabes』にインスパイアされたもの。

脚本は2004年の映画、2018年の舞台ミュージカルから引き続き、Tina Feyが務めた。

作曲はJeff Richmond、作詞はNell Benjamin。

監督はSamantha JayneとArturo Perez Jr.。

あらすじ

親の仕事の都合でケニアからアメリカに移り住んだ16歳のケイディは、新たに通い出した高校で文化の違いに戸惑いながらも、ジャニスとダミアンに出会い友達になり、校内で幅を利かせている女子グループ「プラスティックス」には気をつけるよう言われる。

「プラスティックス」はゴシップ好きのグレッチェン、頭の弱いカレン、トップに君臨するレジーナから構成されている。

ジャニスは以前レジーナと仲が良かったが、ある時ジャニスがレズビアンであることをアウティングし、いじめられた過去がある。

ケイディは同じクラスをとったアーロンに一目惚れするが、彼がレジーナと付き合っていることを知る。

「プラスティックス」に気に入られたことを利用して、ケイディやジャニス、ダミアンはレジーナへの復讐を計画する。

キャスト

ケイディ   アンガーリー・ライス

ジーナ   レネー・ラップ

ジャニス   アウリイ・クラヴァーリョ

ダミアン   ジャクィル・スパイヴィー

カレン   アヴァンティ

レッチェン   ビビ・ウッズ

アーロン   クリストファー・ブライニー

ケイディの母   ジェナ・フィッシャー

ジーナの母   ビジー・フィリップス

ノーブリー先生   ティナ・フェイ

校長   ティム・メドウス

感想

2024年3月31日現在、日本では公開の見通しが立っていないミュージカル映画ミーン・ガールズ(2024)』ですが、遠征時に映画館で観てきました。

舞台版をご覧になった方は、ちょっと違うな…と感じてしまうかもしれませんが、個人的には想像していたよりは楽しめました。

▼trailer


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舞台ミュージカルで使われていた楽曲のうち「It Roars」や「Where Do You Belong?」「Fearless」「Stop」「Whose House Is This?」「More Is Better」「Do This Thing」が削られ、「It Roars」に代わって「What Ifs」が新たに加わり、エンディングに「Not My Fault」が使われています。これら新曲の制作にはレジーナ役で出演しているレネー・ラップが関わっています。学校でのクリスマスの出し物で使われる「Rockin' Around the Pole」は、ブロードウェイで毎年年末にBroadway Cares/Equity Fights AIDSが主催して制作される、各プロダクションのキャストがチャリティでクリスマス楽曲を歌うCDに収録された、OBCによって最初に歌われたナンバーです。

What Ifs

What Ifs

「It Roars」から「What Ifs」に変更されたのは、舞台版ではケイディには両親がいましたが、映画化の際にシングルマザーによって育てられているという設定に変えられており、「It Roars」の中で両親がいるという節が出てくることからだと思われます。

Not My Fault

Not My Fault

  • Reneé Rapp & ミーガン・ジー・スタリオン
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

舞台ミュージカルから映画化される時、曲がカットされるのは致し方ないと思いつつ、個人的に好きなナンバーがなくなってしまったのは寂しかったです。また、舞台版ではアンサンブルが担っていたコーラスが映画版では非常に薄く、「Revenge Party」などのナンバーで重厚感が減少していました。注意して聞いていると、削られたナンバーはinstrumentalとして部分的に挿入されていました。例えば、ダミアンのソロ曲「Stop」は終盤ティナ・フェイが話し出す時にイントロが流れるなど。

キャストでは、ブロードウェイ公演でもレジーナを演じていたレネー・ラップや、『A Strange Loop』のOBCであるダミアン役のジャクィル・スパイヴィーの他、最近のブロードウェイで見覚えのある面々も端役で出演していました。また、ジャニス役がモアナ役などで知られるアウリイ・クラヴァーリョ。カメオ出演として、『ミーン・ガールズ』のOBCでグレッチェンを演じてトニー賞にノミネートされたアシュリー・パークがフランス語の先生役、2004年の映画版でケイディを演じたリンジー・ローハンが数学コンテストのプレゼンター役としてみられました。

最近の縦動画の文化が存分に使われていました。例えば、「A Cautionary Tale」はジャニスとダミアンがTikTokInstagramかの配信で、スマホで撮影して曲を流しているという形で映画が始まります。SNSが多く使われる世界になっていて、ゴシップの広がり方も残酷さが増していました。

この作品で1番盛り上がる「Revenge Party」ではアートメイクをして異空間に飛んで繰り広げられますが、ジャニスとダミアンの2人とケイディで分かれたショットになっていて、最初は乗り気じゃなかったケイディの気持ちが変わって2人に加勢する描写(舞台版では「No, no, no!」と3回も言うけれど、本作では1回)が微妙でした。このナンバーは3人によるもので、2人がケイディを説得して最終的にケイディがレジーナへの復讐に加わるまでが見どころなので、3人同時のショットを使ってもらいたかったです。

Revenge Party

Revenge Party

  • アウリイ・クラヴァーリョ, Jaquel Spivey, Angourie Rice, ティム・メドウス & Cast of Mean Girls
  • サウンドトラック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

また、ジャニスが歌う「I'd Rather Be Me」はワンカットで撮影されています。校内の音楽室や様々な教室を巡りながら歌う形。

ミュージカルシーンがカメラ目線が多かったせいか、全体的にミュージックビデオのような印象が強かったです。アンガーリー・ライスの歌い方はミュージカルらしいベルティングではなかったので、OBCの歌い方に慣れていると物足りなく感じてしまいました。

『Water for Elephants』2024.2.24.20:00 @Imperial Theatre

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『Water for Elephants』とは

2023年アトランタでプレミア上演され、2024年ブロードウェイで初演されたミュージカル。

原作はサラ・グルーエンによる同名小説(邦題『サーカス象に水を』)。この小説は映画化もされた(邦題『恋人たちのパレード(2011)』)。

作詞・作曲はPigpen Theatre Co.による。脚本はRick Elice。

演出はJessica Stone。


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あらすじ

あるサーカス団を訪れた老人は昔を懐かしみながら、若き日にサーカス団で仕事をしていた経験について語り始める。

ジェイコブは獣医を目指して勉強に励んでいたが、卒業を間近に控えた頃、両親を不慮の事故で突然亡くす。

結局、学費を支払えないことから大学を去り、放浪の旅に出たジェイコブは、紛れ込んだ電車でオーガスト率いるベンジーニ・ブラザーズ・サーカスの一座に出会う。

オーガストはジェイコブが獣医であることを知り、彼を雇い入れる。

サーカスの団員の中にはオーガストの妻マーリーナがおり、彼女が新たに担当することになった象をジェイコブも一緒に調教するうちに、彼はマーリーナに惹かれていく。

そのうち、ジェイコブはオーガストが動物や団員たちに対して厳しく当たることを知る。

マーリーナと駆け落ちすることを考えるようになるジェイコブだが、2人の関係をオーガストに勘づかれてしまう。

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キャスト

Mr. Jankowski    Gregg Edelman

Camel    Stan Brown

Wade    Wade McCollum

Walter    Joe De Paul

Barbara    Sara Gettelfinger

August/Charlie    Paul Alexander Nolan

Marlena/June    Isabelle McCalla

Jacob Jankowski    Grant Gustin

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感想

映画化もされたベストセラー小説が舞台ミュージカル化され、各方面から期待が寄せられているミュージカル『Water for Elephants』を観てきました。

クロバットや曲芸の数々や、動物との心の交流とともに描かれるラブストーリーに仕上がっていました。

▼trailer


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▼開演前


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▼プレビュー初日ということでプレゼントをいただきました。このプロダクションは象を保護する団体と提携しているようです。


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タイトルにある象は、最初なかなか心を開かず言うことを聞かないという設定なのですが、その時は象の身体の一部(鼻だけ、とか、耳だけ、など)のみが舞台上に登場する形になっていますが、その後、徐々にマーリーナ達と心を通わせられるようになるにつれて、全身が明かされていくという形になっていました。最初から全貌を明かさない見せ方は面白いなと思いました。動物のマペットは『The Lion King』や『Life of Pi』のいずれとも違うタイプのもの。人が中に入るスタイルで、象の四肢の間の胴体から人の足が見えていました。ポーランド語で意思疎通ができるようになった象のつぶらな瞳がぱちぱち瞬きするのが可愛らしかったです。

舞台装置として登場するのは、大きいものとしてサーカス団が移動する列車がありますが、私が観た時は列車らしい縦揺れは全くなく、静止したままの金属の格子の中に乗客がいるという形でした。もしかするとプレビュー中で装置が間に合わず静止させていたのかもしれませんが、電車の揺れに合うようなナンバーもあったので、もったいないなと感じました。

最も気になっていた終盤の動物達の大脱走ですが、これは暗転して静止した逃げ惑う人々を部分的にスポットライトで照らしてみせることで表現していました。

音楽はPigpen Theater Co.というグループによるものですが、彼らは本作で初めてオン・ブロードウェイの作品を手がけたようです。元々はカーネギー・メロン大学の演技コースの学生たちの集まり。これまで、ジュークボックス・ミュージカル以外で、ミュージカルの音楽をグループで担当するのはあまり聞いたことがなく、新しい存在だと感じました。彼らの音楽はアメリカーナ、主にフォークで、正直にいうと玉石混淆で完成度はナンバーによりまちまちですが、列車で揺られながら旅をするサーカス団員たちが歌う「The Road Don't Make You Young」は朗らかで楽しいナンバー。

▼「The Lion Has Got No Teeth」


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▼「The Road Don't Make You Young」


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『The Prom』のOBCのAlyssa役で知られるIsabelle McCallaはアトランタ公演に引き続き、夫と青年の間で揺れるマーリーナ役を好演しています。先祖がサーカス団と一緒にハイチにやってきたというエピソードを持つ彼女は、この作品に縁を感じているようです。

ブロードウェイデビューを飾ったGrant Gustinが若いジェイコブ役。2012年のJesus Christ Superstar再演などで知られるPaul Alexander Nolanが少々トリッキーなオーガスト役。

個人的に嬉しかったのは大好きな作品である『City of Angels』のOBCのStine役であるGregg Edelmanを観られたこと。

サーカス団員でアクロバットを担当する役者達はオーストラリアやブラジルなど各国からサーカスの教育を受けた方々が抜擢されているようです。

振付はShana CarrollとJesse Robbによるものですが、彼らはシルク・ドゥ・ソレイユの演出や振付をしたこともあるようで、Carroll氏の方はCircus designerの肩書きもあります。

プレビュー初日ということもあり、ややもたつく感じは否めず、年老いたジェイコブの話は迂遠で冗長でした。正直、作品の完成度としては同じプレビュー期間だった『The Notebook』の方が上。ただし、この辺りをプレビュー期間中にブラッシュアップすれば違ってくると思いました。