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『Stereophonic』2024.5.23.19:00 @Golden Theatre

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『Stereophonic』とは

2023年オフ・ブロードウェイのPlaywights Horizonsで初演され、2024年ブロードウェイで初演された、David Adjmiによるプレイ。

オリジナル楽曲はインディーバンド、アーケイド・ファイアのWill Butlerによる。

作中に登場するバンドは実在したバンドであるフリードウッド・マックがモデルにされていると考えられているが、彼らの音楽は使われていない。

4幕構成だが、2幕と3幕の間に1回休憩があるのみで、上演時間は3時間超え。

演出はDaniel Aukin。

あらすじ

舞台は1976年、カリフォルニア州サウサリート。

PeterとDianaの2人からなるボーカル、キーボードのHolly、ギターのSimon、ドラムのRegからなるバンドが、スタジオでアルバムをレコーディングしている。

それをスタッフとしてGroverとCharlieが手伝っている。

PeterとDianaは約7年付き合っているカップルだが、結婚せず子もいない。Peterは結婚して家族を持ちたいと望んでいるが、Dianaにその気はなくキャリアを積みたいと考えている。

HollyはGroverに気がある様子だったが、最終的にRegと付き合い結婚する。しかし、その関係性はまもなく破綻する。

Dianaのソロのナンバーを録音している際、Peterは冷たい叱責を繰り返す。

ショックを受けたDianaは、Peterに他の人がいる前で叱るのはやめてほしいと伝えるが、Peterはあくまでいい作品を作るために指導しているだけだと言う。

それでもDianaはPeterを愛していたが、その後も度重なるダメ出しにストレスを感じ、Dianaはドラッグに手を出す。

最終的にDianaのみソロデビューが決まり、バンドを去ることになる。

それまでDianaと仲が良かったHollyだが、このことには素直に喜べず、ハグをして別れる。

PeterはDianaに詫び、行かないでほしいと嘆願するが、Dianaは彼の元を去る。

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キャスト

Reg    Will Brill 『Oklahoma!』

Charlie    Andrew R. Butler

Holly    Juliana Canfield

Grover    Eli Gelb

Peter    Tom Pecinka

Diana    Sarah Pidgeon

Simon    Chris Stack

感想

2023年冬の遠征の時、Playwrights Horizonsですごいプレイが上演されているとSNSで話題になり、私も観たいと思ったのですが、チケットは全公演完売で、キャンセル待ちにも長蛇の列ができていて断念しました。それがこの『Stereophonic』です。今回、鳴り物入りでブロードウェイにトランスファーした公演を観ることができました。今年のトニー賞では、ブロードウェイ史上、最多ノミネートされたプレイ(13部門)として歴史に名を刻みました。

▼オフ・ブロードウェイ公演のfootage


www.youtube.com

▼「Masquerade」からの抜粋


www.youtube.com

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まず、場内に入ると舞台上に再現された見事なレコーディングスタジオのセットに圧倒されました。観客はコントロール・ルーム側にいて、遮音ガラスを隔てた奥に、ブースが見える形になっています。コントロール・ルームで繰り広げられる一部始終は当然よく見え、よく聞こえます。一方、ブース内のアーティストの様子はよく見えるのですが、話している声は聞こえず、コントロール・ルームの設定を変えて聞く形になっています。また、コントロール・ルームとブースの間の通路での様子は見えないのですが、会話している声だけはややくぐもった感じで聞き取ることができます。つまり、役者がそれぞれその時にいる場所に合わせて、マイクの設定を細かく変えているわけです。これは音響的に面白いと思いました。

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物語は1976年6月から1977年6月の約1年間の、バンド内での人間模様がリアルに描かれています。バンドのメンバーに加えてスタジオのスタッフとして2人が出演していますが、このスタッフ2人は当初は観客と同じような立場でバンドを眺めているわけですが、徐々に関係を持っていくことになります。特に誰が主人公ということはなく、群像劇とも言えると思いますが、敢えて言えばDiana、そしてPeterなのかなと思いました。このプレイは4幕構成になっており、それぞれに以下のようなタイトルが付けられています。

ACT Ⅰ

A WIZARD, A TRUE STAR

June-July 1976

 

ACT Ⅱ

FEAR OF MUSIC

September 1976

 

ACT Ⅲ

WISH YOU WERE HERE

Scene 1, Late December 1976;

Scenes 2 and 3, March 1977

 

ACT Ⅳ

GOODBYE YELLOW BRICK ROAD

June 1977

「A WIZARD」や「YELLOW BRICK ROAD」から『オズの魔法使い』のメタファーが含まれていると想像できますが、私はDianaがドロシーで、Peterがオズの魔法使いだと思いました。そして、そのほかのメンバー3人はドロシーがオズの国で出会う仲間たち、カカシやブリキ男、ライオンということかと思われます。ドロシーはオズの魔法使いが望みを叶えてくれると信じて崇拝していますが、実際には彼は魔法使いなどではなく、ただの人間に過ぎず、ドロシーは失望します。そして彼女は仲間たちと別れ、あるべき場所へと旅立っていきます。そういう意味ではDianaが主人公と言えるかと思います。最後、HollyがDianaにハグをした様子はカカシがドロシーにハグをしたあのMGM映画のシーンを想起させました。

このキャストの素晴らしさについて語り尽くすことはできないと思います。ただ演技ができるだけでも十分でなく、ただ歌えるだけでも十分でなく、かといって音楽のジャンルがソフトロックなので一般的なミュージカル俳優とも違う、非常に難しいキャスティングだったと思います。この7人を選出したキャスティングディレクターに拍手を送りたいです。

今回最も心に残って忘れ難いのは、Diana役のSarah Pidgeonのパフォーマンスです。観終わった後も彼女の演技について、何日間か考えていました。彼女はまだ若い役者で本作がbroadway debutで、ほぼ無名の状態から大抜擢されました。年上のPeterと付き合う中で、家族が欲しい男性側とキャリアを積みたい女性側の考え方のすれ違い、また、人生のパートナーで且つ指導的な立場にもあるPeterに感じてしまう愛憎を、とてもリアルに演じていて素晴らしかったです。また、彼女は歌声も魅力的なのですが、劇中で声の調子がよくなくて高いピッチの音が出なくなってしまうというくだりがあります。その場面では本当に風邪気味で声が出ないように聞こえる演技をしていて、それが故意にしている感じがなく驚きました。そんな体調不良のDianaに対してPeterは「ピッチを下げるか」とアーティストとしては屈辱的な提案をします。PeterのDianaに対する数々の発言はモラルハラスメントと言えると思います。最終的にはDianaもそれに気づいて立ち去りますが、最初のころはそれも愛情と感じている感じもあり、観ていてなかなかつらかったです。

Will Butlerによる音楽は劇中では断片的にしか聴くことができません。レコーディングをしているので当然ですが、途中で止めたり何度も繰り返したり、といったことが続きます。オリジナル・ブロードウェイ・キャスト・レコーディングはソフトロックのアルバムとしても秀逸だと思います。おすすめです。

Masquerade

Masquerade

  • Original Cast of Stereophonic, Tom Pecinka, Will Brill, Juliana Canfield, Sarah Pidgeon, Chris Stack, Will Butler & Justin Craig
  • サウンドトラック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

終演後、ステージドアで7人のキャスト全員に感想を伝えてPlaybillにサインをもらったこともいい思い出になりました。

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