ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ https://linktr.ee/nyny1121

『ウィキッド ふたりの魔女(2024)』Wicked (Wicked: Part Ⅰ) 注)ネタバレあり、鑑賞後に読むことをおすすめします

Wicked (2024) - IMDb

▼本作についてのXでのスペース録音

https://twitter.com/i/spaces/1vAxRDlMPzVGl

ウィキッド ふたりの魔女(2024)』とは

2003年にブロードウェイで初演されて以来ロングランしている舞台ミュージカル『Wicked』をもとにした、2024年に公開されたユニバーサル・ピクチャーズによるミュージカル映画

この映画で扱われているのは、原作の舞台ミュージカルの第一幕にあたり、第二幕に相当する部分は2025年に公開される『Wicked: Part Ⅱ(仮)』で描かれる。

監督はジョン・M・チュウ

あらすじ

このお話で主に描かれるのは、児童小説『オズの魔法使い』の以前のオズ。

西の悪い魔女が死んだと一同が喜んでいるシーンから始まり、良い魔女グリンダは悪い魔女の生い立ちについて話し始める。

悪い魔女エルファバはマンチキン国を治めていた長の子として生まれたが、実際には母と不倫相手の不義の子であり、生まれつき緑色の肌を持っていた。

シズ大学で、魔法使いになることを目指すガリンダと、足の不自由な妹ネッサの付き添いで入学したエルファバは出会う。

誰からも愛されるガリンダに対し、緑色の肌を持つエルファバはクラスメイトらにも気味悪がられる。

ひょんなきっかけでルームメイトになった2人は互いに毛嫌いしあう。

ガリンダは魔法の授業を担当するマダム・モリブルに取り入ろうとするが、教師の熱視線の先には驚くべき魔法の力を持つエルファバがおり、エルファバはマダム・モリブルの特別個人レッスンを受けることになる。

ある時、転入生としてフィエロがやってくる。

フィエロガリンダは惹かれ合い、ダンスパーティーに一緒に行こうとするが、マンチキンの青年ボックもガリンダを誘おうとする。

ガリンダに唆されたボックは、ネッサを代わりにダンスに誘う。

初めてのダンスパーティーに喜ぶネッサは、ガリンダのおかげであることをエルファバに伝える。

同じ頃、ガリンダは祖母からもらった風変わりな帽子を、冷やかす意味を込めてエルファバにプレゼントする。

ガリンダへのお返しにエルファバは、マダム・モリブルにガリンダも魔法の授業を受けられるように頼み込む。

ダンスパーティーでそのことを知ったガリンダは自身がした酷いことを悔い、2人は一気に親しい仲となる。

かつて、シズ大学で多くの動物たちが教鞭を取っていたが、今、教壇に立つのはヤギのディラモンド先生のみである。

ディラモンド先生は国中の他の動物たちがそうであるように、自身も徐々に言葉を話せなくなっていることを自覚しているが、エルファバはオズの魔法使いが何とかしてくれるのでは、と先生を励ます。

しかし、ディラモンド先生もついには捉えられ、牢に入れられてしまう。

代わりの教師は、今後は動物たちを牢に入れて管理し、言葉を話せないようにすると言い、咄嗟に魔法を使って芥子の花でみんなを眠らせたエルファバはフィエロとともに、牢に入れられた赤ちゃんライオンを森に逃す。

この時、エルファバはフィエロへの自身の気持ちに気づくが、フィエロガリンダに恋しているのだからと諦めようとする。

ある日、オズの魔法使いからエルファバ宛にエメラルド・シティへの招待状が届く。

これでオズの魔法使いに、動物たちを元に戻すことをお願いできると喜ぶエルファバ。

ガリンダもディラモンド先生のことを思って、自身の名をグリンダに改名することを発表する。

エルファバとともにグリンダはエメラルド・シティを訪れ、この上なく楽しい1日を過ごす。

オズの魔法使いに出会った2人は、彼から今後のオズをともに治めようと告げられ、夢が叶ったと束の間思ったが、動物たちに言葉を話せないように仕向けたのはオズの魔法使い自身であることを知る。

さらに、信用していたマダム・モリブルもオズの魔法使いと結託しており、彼らはエルファバの魔法の力を悪用しようとしていることが明らかになる。

エルファバは魔法の書グリムリーを手に、彼らから逃げ出す。

グリンダはエルファバを止めようとするが、エルファバを敵と見なした魔法使いらは、エルファバを「動物たちから自由を奪った悪い魔女」というレッテルを貼り、全国民に周知する。

エルファバとグリンダは互いの幸せを願い、エルファバはひとり、空の彼方に箒に乗って飛び去っていく。

キャスト

エルファバ・スロップ   シンシア・エリヴォ

ガリンダ/グリンダ・アップランド   アリアナ・グランデ

フィエロ・ティゲラール   ジョナサン・ベイリー

ボック・ウッドスマン   イーサン・スレイター

ネッサ・ローズ・スロップ   マリッサ・ボーデ

ドクター・ディラモンド   ピーター・ディンクレイジ

マダム・モリブル   ミシェル・ヨー

オズの魔法使い   ジェフ・ゴールドブラム

ファニー   ボウエン・ヤン

シェンシェン   ブロンウィン・ジェームス

スロップ総督   アンディ・ナイマン

スロップ夫人   コートニー・メイ・ブリッグス

コドル校長   キアラ・セトル

ヴァリック   アーロン・テオ

ダルシベア   シャロン・D・クラーク

感想

制作の声を聞いてから早幾年。ついに待望のミュージカル映画ウィキッド ふたりの魔女』を鑑賞することができました。日本では2025年3月公開予定ですが、私は遠征の際、5回観ることができたので、早めに感想を書いていきたいと思います。ネタバレもありますので、ぜひ鑑賞後に読んでいただけると嬉しいです。

▼trailer


www.youtube.com

第一印象は、もととされている舞台ミュージカルの良さを大切にしつつ、原作小説の描写を肉付けすることでストーリーに厚みが加わり、かつ、程よく役者のオリジナリティも表れているということです。監督がCGになるべく頼らないという方針から、冒頭の花畑やシズ大学の入江に聳える校舎まで、基本的に全て実際にセットを組み、CGと現実世界がシームレスに繋がり、壮大な世界が見事に表現されていました。歌唱はほとんどがライヴ録音で、別撮りした音源に合わせて役者が口パクをするのではなく、実際に演技をしながら歌っている音を採用しています。ミュージカル映画『イン・ザ・ハイツ(2021)』を観た時に直感していましたが、ジョン・M・チュウ監督はミュージカル映画の扱い方を心得ていると再認識しました。この企画が彼の手に委ねられて本当に良かったと安堵しました。

このプロダクションチームの素晴らしいところは、広報がミュージカル映画であるということをあえて隠さなかったこと。1970年代以降、この半世紀はミュージカル映画にとって暗黒期とも言える時代で、ミュージカル映画というとキワモノ扱いされたり、客層が限られてしまったりするため、この数年はミュージカル映画であってもミュージカル映画として売り出さずに、普通の映画であるように装って広告を出し、蓋を開けてみたらミュージカル映画だった、というように宣伝するのが主流になりつつありました。これは広報側がミュージカル映画と知られれば客が入らないと考えていたためです。*1一方、本作はロングランを続けるブロードウェイ・ミュージカルの待望の映画化であると大々的に売り出されたにも関わらず、歴史的な大ヒットを記録しています。全米の公開日をあえてアメリカ大統領選直後としたことも製作側の狙い通りで、青と赤に二分された米国民の穏やかでない心に、この作品のメッセージがどのように響くのか、興味深いところです。

これ以上にない、絶妙なキャスティング

『Wicked』のミュージカル映画化が決定した時、まず話題になったのが、誰がグリンダ/エルファバを演じるのかということでした。当初は誰が選ばれてもオリジナル・ブロードウェイ・キャストであるKristin ChenowethやIdina Menzelの印象が強く、違和感を覚えてしまうに違いないと思い込んでいました。実際に選出されたのがAriana GrandeとCynthia Erivoと名前だけ聞いた時も正直そこまで期待していませんでした。ところが、蓋を開けてみたらこれが非常に良かったんですね。特にArianaのコメディエンヌっぷりときたら、これまでどこに隠していたの?とでも言いたくなるほど見事でした。期待通り、Cynthia Erivoが圧倒的な歌唱力と演技力でこの役を全うしていますが、個人的にはAriana Grandeのグリンダ像の方が想定外だった分、印象に残っています。喜びに沸く民衆の中、ひとり憂いを帯びた表情で佇む冒頭シーンから、嫌いな相手との和解、そしてコミカルな演技に至るまで、Arianaのパフォーマンスは素晴らしく、彼女のこの作品や役柄への思い入れの深さが伝わってきました。

冷静に今回のキャストを見てみると、舞台ミュージカルを経験している方が多数を占めています。Cynthia Erivoはウエストエンドやブロードウェイの舞台ではお馴染みで、『The Color Purple』2015年ブロードウェイ再演でトニー賞を受賞し、その歌唱力は折り紙つき。一方で、Ariana Grandeはポップ歌手として名が知られていますが、ティーンエイジャーの頃にブロードウェイで『13』*2という舞台ミュージカルに出演したことがありますし、幼少期から舞台に親しんでおり、常にミュージカルへの意識を持って活動してきたことが伺えます。Jonathan Baileyは幼少期からバレエを習うなど舞台の素養を身につけており、『Company』2018年ウエストエンド再演に出演し、オリヴィエ賞を個人で受賞しました。Ethan Slaterは2017年にブロードウェイで初演されたミュージカル『SpongeBob SquarePants』に主演し、その圧巻のパフォーマンスで一躍脚光を浴び、トニー賞に個人でノミネートされました。このように主要キャストに舞台経験者(舞台での歌唱経験のある者)を配していた点も、歌唱で物語を綴っていくミュージカル映画にとっては重要なことでした。

当事者がその役を演じるという動きの中で、ネッサローズ役を車椅子ユーザーのMarissa Bodeが演じ、さらに幼少期のネッサローズも車椅子ユーザーの子役が演じたことも意義深いことだと思いました。また、『オズの魔法使(1939)』ではマンチキンを小人症の役者らが演じていましたが、本作ではそのような描写はありません。これはPeter Dinklageらがハリウッドなどで描かれてきたステレオタイプな小人役について批判してきたことが影響していると思いますが、Peter自身は今回、ディラモンド先生役として声で出演しています。

また、グリンダの取り巻き(親友風)たちも嫌味な演技が巧みで、とてもいい味を出していましたね。

何事も完璧というものはありませんが、これは完璧に近いキャスティングと言えるのではないでしょうか。

▼Arianaのコメディエンヌっぷりが光る「Popular」


www.youtube.com

映画音楽には、舞台ミュージカルだけでなく『オズの魔法使(1939)』へのオマージュも

舞台ミュージカルと同様に、Stephen Schwartzが作詞・作曲した楽曲がミュージカルナンバーとして使われています。嬉しいことに、舞台ミュージカルの第一幕で使われた楽曲が全てカットされずに使用されました。さらに、映画化に際して間奏曲やBGMとして使われる音楽が新たに作られました。これらはStephen SchwartzとJohn Powellによる合作です。BGMには舞台ミュージカルの二幕で使われる曲(「For Good」など)のinstrumentalだけでなく、『オズの魔法使(1939)』へのオマージュを感じさせる音楽もありました。具体的には、冒頭のマンチキンの子どもたちが花畑を喜び勇んで駆けていくシーンで流れるBGMで、1939年の映画で使われた「Ding Dong! The Witch Is Dead」を模したメロディラインが聞き取れます。このメロディをよく聞いてみると、「Ding Dong! The Witch is...」までの音が使われ、それに続く「Dead」に当たる音が消えているので、暗にThe Witch=エルファバは死んでいないことを仄めかしている、と捉えることもできます。

Ding-Dong! The Witch Is Dead

Ding-Dong! The Witch Is Dead

  • provided courtesy of iTunes

このようにミュージカルナンバー以外の音楽にも趣向が凝らされており、何度観ても新たな発見があって面白いです。

舞台版に加えて原作小説の世界が肉付けされた脚本

舞台ミュージカルのおよその上演時間は、2時間45分。その内、一幕は約1時間30分、二幕は約1時間10分。

本作は舞台ミュージカルの一幕を描いたものですが、上映時間は2時間40分と舞台版よりも大幅に長くなっています。舞台版と比べてミュージカルナンバーは新たに追加されていないので、ドラマ部分が追加された形となります。

最初、舞台版の一幕と二幕を分けて映画化し、part 1公開の1年後にpart 2を公開すると聞いた時、正直そんなに長く待てないよ、と思いましたし、part 1のみで2時間以上になると聞いた時はそんなに長くする必要性はあるのか、とも思いました。でも、実際に観てみると、長すぎると感じることも、中弛みすることもなく、必要十分な尺と感じました。

では、本作では舞台版の物語にどのような場面が追加されたのでしょうか。追加されたシーンは主にエルファバの幼少期に関するものです。舞台版では生まれたての赤ん坊のエルファバが登場した後、すぐに大学に入学するシーンになりますが、本作では赤ん坊のシーンの次に、9歳頃のリトル・エルファバが登場します。この場面では「この頃からすでにエルファバにとってオズの魔法使いは希望だったこと」「妹ネッサローズを守る強い姉であり続けたこと」「周囲の子どもたちから容姿についてずっと揶揄われていたこと」「理由はわからないが怒ると不思議な力が働くこと」「父親から嫌われていたこと」「乳母であるダルシベア(熊さん)だけは偏見を持たずに味方でいること」などが描かれています。特にダルシベアの描写は、エルファバがなぜ動物たちの権利保護に熱心なのかを示す重要なものです。肉親からの愛を受けられないエルファバにとって、乳母のダルシベアは母親代わりであり良き理解者でした。これに、大学進学後に出会った恩師ディラモンド先生への敬愛が加わり、エルファバの最後の選択を決定づけることになったと感じました。さらに、このリトル・エルファバは大団円でも大切な役割を果たします。「Defying Gravity」で、エルファバは清水の舞台を飛び降りる覚悟で箒で飛び出ようとしますが、重力に抗えず落下していく間に、過去の自分(リトル・エルファバ)と邂逅し、彼女と手を繋いだ瞬間にリトル・エルファバが箒に変わり、エルファバは上空に飛んでいくという筋書きでした。このシーンも舞台版では見られず、この作品で最も美しいシーンの一つだと思います。エルファバの幼少期を描くことで、なぜ彼女がグリンダとは別の道を選んだのか、物語の背景をよく知らない観客でも理解しやすいように脚本が構成されていました。

本作の脚本は以下のリンクからカットされたシーンも含めて読むことができます。皆さんのお気に入りはどのシーンですか。

deadline.com

ミュージカル映画としての魅力

上述したキャストや音楽、脚本の良さに加えて、本作のミュージカル映画としての魅力を高めているのは、撮影しながらその場で歌うライヴ歌唱だと思います。これまでも『レ・ミゼラブル(2012)』などで採用されてきた方式ですが、今回も芝居に歌が乗る、あるいは歌に芝居が乗ることが重要なミュージカルシーンで効果を発揮していました。舞台慣れしているキャストたちにとっては、この方法の方がより自然だったのだろうと思います。

▼撮影しながらその場で歌うキャストたち


www.youtube.com

とはいえ、フライングしながら歌唱をしていたなんて本当に驚きですね。Cynthia Erivoの日頃からのトレーニングの賜物でしょう。

▼ぐるぐる宙を舞いながら歌うCynthia Erivoの驚異的なパフォーマンス


www.youtube.com

「What Is This Feeling」や「Dancing Through Life」といった群舞シーンでは、アンサンブルキャストの息のあったダンスも見応えがありました。特に「What Is This Feeling」のアンサンブルのダンスはSNSでプロアマ問わず真似されてバズっていました。ころころと場所が変わっても繋がって見えるようなっていて良かったです。

▼「What Is This Feeling」


www.youtube.com

最後に、個人的に印象深かったシーンについて、少し。この作品を観ている間はほとんど涙が流れている状態でした。オープニングのあのファンファーレが鳴った時、エルファバが希望に満ちて「The Wizard and I」を歌う時、Ozdust ballroomでエルファバとグリンダが一緒に踊る時、など、枚挙に暇はありません。全体的によくできていて、何度観ても新たな発見や感動がある大好きなミュージカル映画の一つになりました。

気づいた全てのオマージュ(easter eggs)+αを列挙してみる

映画の中にはもとになった舞台ミュージカルや『オズの魔法使(1939)』などに対するオマージュが散りばめられており、それらを見つけることも舞台ファンや原作ファンにとっての楽しみとなっています。これらのeaster eggsをまとめてみました。きっと他にもあると思いますので、気づかれた方はコメント欄で教えていただけると嬉しいです。

では映画のタイムラインの順に列挙してみます。

  • マンチキンの子どもたちが花畑を駆けていく場面の背景に流れている音楽が『Ding Dong! The Witch Is Dead』を模したメロディラインになっている。

これについては上述しました(音楽の項目)。

  • 「No One Mourns the Wicked」でグリンダが登場して最初に挨拶する民が、『Wicked』ブロードウェイ公演でエルファバを演じたこともあるトニー賞受賞歴もあるStephanie J. Block。

さらりとStephanie J. Blockが出演していて、初回観た時はなんだか似ている人がいるな、くらいにしか思っていなかったのですが、3回目くらいで確信しました。多分、この冒頭のシーン、他にもカメオ出演、友情出演の方が多くいらっしゃると思います。

  • メインタイトルが『オズの魔法使(1939)』へのオマージュを感じさせるフォントや表示

これは誰もが感動するサプライズでしたね。冒頭から懐かしさが込み上げてきました。

  • 寮の組み分けの名簿にグリンダとアマ・クラッチの名が書かれている。アマ・クラッチは原作小説に登場するグリンダの付き人で、ディラモンド先生が殺される場面を目撃したために脳に障害をきたすほどの大怪我を負う。
  • シズ大学に到着したエルファバが、ネッサを校長から引き離そうとして魔法が働いた時、壁の一部が落ち、そこに動物たちが教鞭を取っている姿を描いた壁画が現れる。

この時、シズ大学に在籍する動物の教授はディラモンド先生のみとなっていましたが、この壁画から昔は動物たちも人間と同じように教鞭をとっていたことが伺えます。このような細部の作り込みに製作陣の情熱を感じました。

  • 天気を操ることに長けているマダム・モリブルは雲を模した髪型でキメている。

マダム・モリブルは白い髪、前髪はうねり、雲を表しているようです。

  • 「The Wizard and I」でエルファバが歌う場面で、草原を駆けていくエルファバの背景に虹が現れ、そこに青い鳥が飛び回っており、まさに『オズの魔法使(1939)』の「Somewhere Over the Rainbow」の歌詞にある「somewhere over the rainbow blue birds fly...」を具現化している。

これには鳥肌が起きました。ミュージカルで登場人物の願望を歌う「I want song」の代表的なこの2曲をリンクさせる名場面でした。

  • 図書室で回転するクールな円形の本棚(書庫)とその支え棒が織りなす図形が「OZ」になっている。

この図書室のデザイン自体とてもクールだと思いましたが、さらにこんな文字を隠し持っているなんて素敵です。

フィエロジェンダー問わず様々な人々を魅了していくこのシークエンスは、単にフィエロを演じるJonathan Baileyがゲイであるからではなく、フィエロという人物がBもしくはPであることを仄めかしていると思われます。少なくともストレートじゃないですよ、と観客に示していると思われます。

  • 「Dancing Through Life」で図書館でのダンスシーンの振付は、映画『オズの魔法使(1939)』でカットされた「Jitterbug」の振付へのオマージュが感じ取れる部分がある。
  • 「Dancing Through Life」で、グリンダがエルファバに帽子を渡す直前、ファニーとシェンシェンが部屋を出ていく時に「I'm gonna rouge my knees...」のようなことを言っている。これはおそらくミュージカル『Chicago』の「All That Jazz」からの歌詞へのオマージュ(「I'm gonna rouge my knees and roll my stockings down」)。
  • 「Popular」でグリンダが、映画『オズの魔法使』でドロシーが履くことになる赤い靴の踵を3回打ち鳴らし、ポンと投げる。
  • 「One Short Day」でエルファバとグリンダがサロンでネイルしてもらうシーンは、Jon M. Chuが監督したミュージカル映画『In the Heights』へのオマージュと思われる。
  • 「One Short Day」でグレムリーについてのショーの中に舞台ミュージカル『Wicked』のオリジナル・ブロードウェイ・キャストでグリンダとエルファバをそれぞれ演じた、Kristin ChenowethとIdina Menzelが登場し、Idinaは「Defying Gravity」の最後の「Ahhhhh〜!」に似せた歌い回しを披露する。

オリジナル・ブロードウェイ・キャストで主演した2人が登場したのは胸熱でしたね。

  • 同じく「One Short Day」でグレムリーについてのショーの中で、ナレーターは『Wicked』ブロードウェイ公演でフィエロの代役として出演していたMichael McCorry Rose
  • 同じく「One Short Day」でグレムリーについてのショーの中で、グレムリーを読むオズの魔法使いを表したものが「オーマーハー」と繰り返し言っているが、これは児童小説『オズの魔法使い』でオズの魔法使いネブラスカ州オマハ出身であることに由来している。

実際、オズの魔法使いは魔法など使うことのできない、ネブラスカ出身の単なるサーカスおじさんですけれどね。

  • 同じく「One Short Day」のグレムリーについてのショーの中で、オズの魔法使いがグレムリーを読むことができると感嘆の声を上げているのは、舞台ミュージカル『Wicked』の脚本を担当したWinnie Holzman。
  • 「One Short Day」の最後でオズの魔法使いの城にエルファバとグリンダが入ろうとする時に、招待状を確認して「The wizard will see you now!」と言う門番が、このミュージカルの作詞・作曲を手掛けたStephen Schwartz。

お髭をつけていたので、最初見た時は「あれ?」と見間違えましたが、絶妙な台詞の棒読みと相まって「Stephen Schwartz」しかいない、と思いました。

  • ディラモンド先生が連れ去られた授業で、ライオンを連れて逃げ出したエルファバとフィエロは、ライオンをバスケットに入れて自転車で森へ急ぐ。このバスケットつきの自転車は『オズの魔法使(1939)』でドロシーの愛犬トトをガウチさん(オズの国では西の悪い魔女を演じる)が連れ去る時に乗る自転車に類似している。
  • 「Defying Gravity」で最後の歌詞が、舞台版では「Get her!」だが映画版では「Kill her!」に変更されている。

Youtubeポッドキャスト「Theater Night Talk」を始めました。以前、こちらの映画に対する期待について話したことがあるので、よろしければ聴いていただけると嬉しいです。


www.youtube.com

*1:例えば『ミーン・ガールズ(2024)』が最たるもので、案の定、大コケしたわけです。この映画はもっと良くなる要素がたくさんあったので、残念でした。この他にも『ウォンカ(2023)』もミュージカル映画としては売り出されませんでしたよね。なんだか「ミュージカル映画=恥」とされているようで、この流れについて個人的には悲しかったです。

*2:そうです。Netflixで2022年にミュージカル映画化されました。