『Harmony』とは
1997年にサンディエゴでプレミア上演され、2022年オフ・ブロードウェイで初演、2023年ブロードウェイで初演されたミュージカル。
1920年代にドイツで活躍した音楽グループComedian Harmonistsの人生を描いている。
作曲はBarry Manilow。作詞・脚本はBruce Sussman。
演出・振付はWarren Carlyle。
あらすじ
老人Rabbiが最後の生存者として語らなければならないことがある、と回想している。
1927年、ドイツ、ベルリンで、6人の男性ボーカルグループ「Comedian Harmonists」が結成された。
メンバーは編曲が得意なHarry、ピアノが得意なChopinことErwin、テナーのLesh、医学生のErich、バスのBobby、そしてRabbi。
ジョセフィン・ベイカーの前座など舞台の経験を積み、彼らの歌声、ハーモニーは各地で絶賛され、国際的な名声を得る。
RabbiはMaryと、Erwinはユダヤ人のRuthと恋に落ち、結婚する。
しかし、時代は移り変わり、ナチスが台頭してきた時、メンバーのうち3人がユダヤ人であるComedian Harmonistsもその影響を受けることになるのだった。
キャスト
"Rabbi" Joseph Roman Cycowski Chip Zien
Mary Sierra Boggess
Ruth Stern Julie Benko
Bobby Biberti Sean Bell
Young "Rabbi" Danny Kornfeld
Harry Frommerman Zal Owen
Erich Collin Eric Peters
Erwin "Chopin" Bootz Blake Roman
Ari "Lesh" Leshnikoff Steven Telsey
Josephine Baker Allison Semmes
Standertenführer Andrew O'Shanick
感想
実在した男性音楽グループ「Comedian Harmonists」の活躍とナチスによるユダヤ人迫害を描いたミュージカルです。
彼らの音楽が使われたジュークボックスではなく、バリー・マニロウが音楽を手がけています。
最初に上演されてから約四半世紀の時が経ちましたが*1、昨今、反ユダヤ主義が強まる状況もブロードウェイ上演決定に影響したと思われます。
▼trailer
▼開演前
老人となったRabbiを狂言回しとし、音楽グループのメンバーの青春、ブラザーフッドから始まり、ナチスの影が見え隠れする中での結婚、ナチスからの逃走と話が進みます。
事前に分かってはいたものの、前半の華やかさから一転、後半になるにつれ、観ていてつらかったです。
バリー・マニロウの音楽は古き良き時代を彷彿とさせるもので、特に印象的なのはMaryとRuthがナチスを恐れずどこまでもパートナーと運命をともにすると歌うナンバー「Where You Go」。
Sierraの美しいソプラノと、『Funny Girl』再演でファニー・ブライス役のunderstudyとして話題になったJulie Benkoが愛を誓って力強く歌っています。
Julieが演じたRuthはユダヤ人でナチスに対抗する運動に熱心な女性の役でした。
▼「Where You Go」
今シーズンのミュージカルの中で『Back to the Future』に次いで舞台装置にお金がかかっているのではと思われるほど、見事なセットでした。
背景と左右の壁は、鏡面で、且つ、映像を流すこともできるようになっている特殊なもの。
星を思わせるいくつもの電球が天井から降りてくると、どこまでも星が広がっているように見えてとても美しかったです。
▼休憩中
特に1幕ではComedian Harmonistsとしてのショーシーンが多く、振付で演出もしているWarren Carlyleの手腕が発揮されていました。"Harmonists"だけあって歌がメインなのかなと思っていたのですが、"Comedian"のとしての要素もふんだんに盛り込まれていて、タイミング勝負のようなシークエンスや、6人の息が少しでも合わないと成り立たないようなシーンもありました。
確かに語られるべき物語で見応えもありますが、悲劇的な結末とやや尻すぼみな脚本の作品を観光客があえて選んでみるかというと何とも言えません。
▼終演後