ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『Funny Girl』2022.11.29.19:00 @August Wilson Theatre

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『Funny Girl』について

1964年ブロードウェイ初演の、舞台女優ファニー・ブライスの半生を描いたミュージカル。

作曲はジューリー・スタイン、作詞はボブ・メリル。

今回は2022年4月に開幕したもので、半世紀以上の時を経て、初めてのブロードウェイ再演となった。

再演のオリジナルキャストのファニー役はビーニー・フェルドスタインだったが、彼女は2022年7月いっぱいでカンパニーを去り、2022年9月からリア・ミシェルが同役を引き継ぐこととなった。

ハーヴィー・ファイアスタインによって脚本が一部修正された。

演出はマイケル・メイヤー。

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あらすじ

ファニーは舞台に立つスターを目指しているが、母親は彼女がいわゆる美人なタイプではないため心配している。

しかし、親友エディの助けもあり、ファニーはジーグフェルド・フォーリーズの舞台に立ち、コミカルな演技を披露する。

そんな折、ファニーは賭博師のニックに出会い、恋に落ちる。

周囲は彼の職業を心配するが、ファニーはニックとの結婚を決意する。

子どもが生まれ、幸せな日々を送っていたが、ニックの借金が高額になるにつれ、2人の関係は徐々に変化していく。

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キャスト

Fanny Brice    Lea Michele

Nick Arnstein    Ramin Karimloo

Mrs. Brice    Tovah Feldshuh

Eddie Ryan    Jared Grimes

Florenz Ziegfeld    Peter Francis James

Mrs. Strakosh    Toni Dibuono

Emma    Ephie Aardema

Tom Keeney    Martin Moran

Tenor    Daniel Beeman

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感想

映画の『ファニー・ガール』が大好きで、このミュージカルのOBCRを繰り返しずっと聞いていたので、リバイバルの話が決まった時はとても嬉しかったです。

リバイバルの話は随分前から繰り返し上がっては消え、上がっては消え、を繰り返していました。

これまで名前が上がっていたのは、Leslie Kritzer(『Beatlejuice』)、Lauren Ambrose(『My Fair Lady』)など。

しかし、ブロードウェイ再演には至らず。

再演をするからには、バーブラのそっくりさんを連れてきても仕方なく、新たな意味合いをこの役に与えられる女優、というと、確かになかなかいないんですよね。

そんな中、ビーニーはコメディエンヌの才もありますし、『ハロー・ドーリー!』でブロードウェイデビュー済みですし、サイズブラインドのキャスティングという点でも、この人選には意味があるように思えました。

しかし残念ながら…(自粛

代わりに注目を集めたのがアンダースタディのJulie Benkoでした。

紆余曲折ありましたが、ついに今回観ることが叶いました。

事前にインターネットでチケットを探すと、オーケストラのセンターは1000ドル以上することもあり、どうしようかと思っていたのですが、最終的にボックスオフィスで300+αで前方のオーケストラのセンターを購入しました。

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劇場に入ると、ファニー・ブライス自身の写真も飾られていました。

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実際に観て

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今回のプロダクションで気に入った点は、オリジナルでは2幕に登場する「Who Are You Now」が1幕冒頭に登場しファニーがソロで歌うのですが、2幕終盤でリプライズされる時にはファニーとニックのデュエットになっていて、ニックがファニーの人生の一部になったように感じられるところです。

リアの歌唱については「Glee」などを見ておおよそわかっていましたが、若い頃から様々な場面でこの作品のナンバーたちを歌ってきていることもあり、歌い慣れていて、さらに年齢を重ねて今だから出せる声色がドラマに深みを与えているように思いました。

また、これは意外だったのですが、コメディエンヌとしてのファニー・ブライスの一面も申し分なく演じていました。

もちろん生涯現役で走り続ける俳優たちもいらっしゃって、その年代ごとに出せる魅力があるのはわかりますが、ファニー役は彼女のキャリアの中でもおそらく最高のものになると思われます。だからこそある程度の額を支払っても観る価値があるように思いました。

▼「I'm the Greatest Star」


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この作品でトニー賞に唯一ノミネートされたJaredは、ファニーに想いを寄せながらも親友の立場で彼女を支える健気な役柄ですが、彼のタップも間近で堪能することができ最高でした。

日本でも人気の高いラミン・カリムルーはファニーの相手役ですが、ほんの少しだけダンスシーンがあり、こんな敏捷性を実は隠し持っていたのねと少し驚きました。

ハーヴィー・ファイアスタインが脚色したシーンがどこだったのか、確かめようと思っていたのですが、なかなか時間がなく、まだ宿題として残しています。

この脚色は2018年のウエストエンドのリバイバルのプロダクションから加わっています。

聞いたところによると、セリフを別の言葉に変更した訳ではなく、長尺のセリフをカットして、シンプルにしたそうです。

その他に、2018年のウエストエンド再演から、「Music That Makes Me Dance」の後に「Dream Ballet」が加わるようになりました。

「Dream Ballet」と聞くと咄嗟に思いつくのが『Oklahoma!』なのですが、本作のものはそこまで長尺ではなく、走馬灯のようにファニーがこれまでのキャリアを振り返る様子がスローモーションで表されているだけで、そこまでの面白みはありませんでした。

「Music That Makes Me Dance」というナンバーは、密かに隠れた名曲だと思っているのですがご同意いただけるでしょうか。

オリジナルだともちろん最後はベルティングで力強く歌い上げる訳ですが、ビーニーがファニーだった時はこの曲の最後はディミヌエンドになり、「Dream Ballet」に続く形でした。

しかし、リアがファニーになってからは、オリジナルと同じくベルティングで歌い上げて終わる形なっていました。これがまた素晴らしかったです。(結局、素晴らしいとしか言えない。だって素晴らしいんだもの。)


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舞台版を観て改めて思ったのは、ファニーはずーっと出突っ張りで、息をつく暇もない過酷な役だなぁということです。客席で観ている分には楽しいのですが、なんとも大変そうでした。

具体的に数えていないですが、ウィッグも衣装も何度も変えていましたし。

コメディエンヌ、歌唱力、ルックス、ダンス、、、何を持ってしてファニーなのか、という議論が尽きることはありませんが、個人的には歌唱力です。

リアの歌声を浴びた時に「ああ、私こういうディーヴァの歌唱を拝むために生きてきたんだわ」と思ったんですよね。

私の場合はブロードウェイに求めているのってこういうものなんです。


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舞台こそ命だったファニーが恋に落ちて、キャリアも何もかも全て捨て去るほどニックを愛してしまう…でもファニーが頑張るほど関係はうまくいかなくなってしまって…

1幕と2幕ともに最後の曲はDon't Rain On My Paradeなのがまた切なかったです。