ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

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『Purlie Victorious』2023.10.24.19:30 @Music Box Theatre

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『Purlie Victorious』とは

1961年にブロードウェイで初演された、オジー・デイヴィスによるプレイ。

初演では3幕構成だったが、今回観劇した2023年のブロードウェイ再演では休憩なしの1幕構成に変更された。

レズリー・オドム・Jrは、この再演で『Hamilton』以来、久々にブロードウェイに復帰した。

演出はKenny Leon。

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あらすじ

アフリカ系アメリカ人の牧師であるPurlie Victorious Judsonは、農園主のOl' Cap'n Cotchipeeから一族の遺産を取り戻すため、故郷のジョージアに帰ってきた。

地元の教会を買い戻し、自ら説法して農園主を改心させ奴隷を解放させるのがPurlieの夢だった。

Purlieが旅の途中に出会ったLutibelle Gussy Mae Jenskinsや、Purlieの兄弟であるGutlow、その妻Missyも作戦に加わることになる。

一方、Ol' Cap'n Cotchipeeの息子Charlieは人種差別廃止に賛成しており、父と意見が対立していた。


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Purlieは作戦を決行する。

LutiebelleをPurlieの亡くなった従姉妹Beeに仕立て上げ、Beeに扮したLutiebelleがOl' Cap'n Cotchipeeを訪ね、遺産を返してほしいと頼むことに。

Beeは学のある女性であり、LutiebelleはBeeになりきって無事にやり切れるか自信がない様子。

全てが計画通りには行かなかったが、途中でPurlieが介入し、Ol' Cap'n Cotchipeeは金を渡すことに同意し、Lutiebelle扮するBeeに署名を求める。

しかし、Beeの綴りがわからないLutiebelleは自分の名前を書いてしまい、偽物と明らかになり、PurlieとLutiebelleは命からがらその場から逃げ去る。

その後、彼らへの容疑は取り下げられたが、教会を取り戻すというPurlieの決意は変わっていなかった。

GitlowがOl' Cap'nと交渉し、遺産のうち500ドルを受け取る代わりに、LutiebelleをOl' Cap'nの家で働かせることで同意したとわかり、Purlieは憤慨する。

さらに、Ol' Cap'nがLutiebelleに手をあげたとわかり、Purlieは直接Ol' Cap'nに立ち向かう。

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キャスト

Purlie Victorious Judson    Leslie Odom Jr.

Lutiebelle Gussie Mae Jenkins    Kara Young

Charley Cotchipee    Noah Robbins

Ol' Cap'n Cotchipee    Jay O. Sanders 『Girl from the North Country』

Gitlow Judson    Billy Eugene Jones 『Where the Mountain Meets the Sea』

Missy Judson    Heather Alicia Simms

Idella Landy    Vanessa Bell Calloway

The Deputy    Noah Pyzik

The Sheriff    Bill Timoney

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感想

Leslie Odom Jr.が出演する"Purlie"と聞き、多くの人がミュージカル『Purlie』を思い浮かべたものの、今回はその原作となったプレイ。

一部の役で歌を歌うシーンはあるものの、Leslieは歌いませんでした。

1961年の初演ぶりの再演となった本作は、奴隷制度を扱っていますが意外にもコメディで、勧善懲悪が明快で面白かったです。

▼trailers


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チケットはTKTSで80+αドル程度のオーケストラセンター後方席を購入しました。

▼開演前

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牧師のPurlieが必ず遺産を手に入れて教会を取り戻し、キリスト教の教えで奴隷制度を変革しようと躍起になっている姿がドラマの中核で、観ていて痛快でした。

牧師ではあるものの目標のためには嘘をつくなど無茶もしてしまうPurlieですが、Leslieは歌はなくとも長回しのセリフを朗々と読み上げ、見事に演じていました。

Purlieに密かに思いを寄せているLutiebelleを演じるのは、最近2年連続でトニー賞に役者部門でノミネートされているKara Young。

LutiebelleがPurlieの従姉妹に扮して、慣れないヒールシューズを履いたり、知性派を気取って話したり、コメディックな演技が光っていました。

Purlieの兄弟のGitlowは多分1番よく歌っていた役で、いつも笑顔で農園主にうまく取り入るような話しぶり。

奴隷制度反対派の農園主の息子(white)を置くことによって、white対blackという単純な構図にはならず、また、農園主の父親も息子を無碍にはできず、後半のドラマ展開を盛り上げていました。

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木組みの舞台セットは最初に黒人たちの家、次に売店、最後に教会と変わりますが、おそらく初演時はこのセット転換のために3幕構成のかなと思いました。今回は1幕構成だったので、暗転でセット転換されていましたが、その間もバンジョーなどで奏でられる明るいアメリカーナの舞台音楽が心地よく響いていました。

これまで観てきた奴隷制度を描く作品の多くが悲劇的だったので、この作品は史実を曲げずに喜劇的に描かれていることにとても驚きつつ感動しました。

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▼終演後

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カーテンコールの最後に、作者で初演時に主演をしたオジー・デイビスの顔写真が舞台背景に映りました。彼は、俳優、映画監督、公民権運動家としても知られ、マーティン・ルーサー・キング・ジュニアとも交流があったそうです。

▼作者のオジー・デイビスの肖像の前に並ぶ主演2人

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