『The Gardens of Anuncia』とは
2021年にサンディエゴでプレミア上演され、2023年オフ・ブロードウェイで初演されたミュージカル。
ブロードウェイで振付師として活躍したグラシエラ・ダニエル Graciela Danieleの半生を基にしている。
ここにGraciela Danieleの経歴を簡単にまとめる。
Graciela Daniele
ダンサー、振付師、舞台演出家。
1939年アルゼンチン、ブエノスアイレスに生まれる。
7歳でアルゼンチンでダンスを習い始めた後、パリでバレエを学んでいた際に『West Side Story』を観て感動したことを機に、モダンダンスやジャズダンスを勉強するためにニューヨークに移住する。
1964年『What Makes Sammy Run?』でパフォーマーとしてブロードウェイ・デビュー。
1979年『The Most Happy Fella』ブロードウェイ再演で振付師としてデビュー。
その後、ウッディ・アレン監督の映画に関わったり、リンカーン・センターでオペラやバレエなどの振付や演出を担当する。
2021年トニー賞特別賞を受賞した。
作詞・作曲はMichael John LaChiusa。
共同振付はAlex Sanchez。演出・共同振付はGraciela Daniele。
あらすじ
現在を生きるアヌンシアが、実家の庭を前にして昔を振り返っている。
1940年代、ペロン政権下のアルゼンチン、ブエノスアイレスで、アヌンシアは、3人の女性ーー母、祖母、Tíaに囲まれて、感謝の気持ちや逆境に屈しない力を学びながら成長した。
アヌンシアの母は夫から家庭内暴力を受けていたが、娘のアヌンシアには父親を嫌わないよう諭した。
彼女たちの背中を見ながら、アヌンシアはダンスを学んでいく。
キャスト
Older Anuncia Priscilla Lopez 『Grand Horizons』
Mami Eden Espinosa
Granmama Mary Testa 『Oklahoma!』
Tía Andréa Burns 『Dear World』, 『The Light in the Piazza』
Younger Anuncia Kalyn West
Granpapa/That Man/The Priest/Moustache Brother Enrique Acevedo
The Deer/Moustache Brother Tally Sessions
感想
ブロードウェイの数々のプロダクションに関わってきたグラシエラ・ダニエルの幼少期のアルゼンチンでの生活について描いた、1幕構成、90分の短いミュージカルです。
現在のアヌンシアを『A Chorus Line』のオリジナル・ブロードウェイ・キャストでもあるPricilla Lopez、アヌンシアの母をEden Espinosaと錚々たる顔ぶれ。
主人公のアヌンシアは、現在と1940年代当時で2人の役者により演じられました。
アヌンシアという名は新約聖書の受胎告知に由来するそうです。
音楽を手がけたのは『Hello Again』『The Wild Party』などで知られ、グラシエラ・ダニエルとも親交のあるMichael John LaChiusa。
▼montage
グラシエラ・ダニエルはトニー賞特別賞を受賞していますが、クリエイティヴとしては10回もトニー賞にノミネートされながら受賞はしていないのですね。そんなこともセリフになり笑いを誘う場面もありました。
女系家族の中で、3人の女性それぞれとアヌンシアの関係が描かれ、ダンスのトレーニングのために家族が犠牲を払って支えてくれたことに対する感謝の気持ちが何度も歌われていました。
キャストはいずれも素晴らしかったのですが、Eden Espinosaの歌唱が格別でした。さすが圧巻です。
枝垂れた花を背景に物語は繰り広げられていきます。
LaChiusaによる音楽はアルゼンチンを思わせるタンゴ調のナンバーをはじめとし、家族の団結を表す温かいナンバーやリフレインを効かせるナンバーなど様々ありました。
現在のアヌンシアが回想する内容は最初は事実を中心とした現実的な内容ですが、途中で人間の言葉を話す鹿(トナカイ?)が登場して「踊れるうちに踊ろうよ」と歌うなど、ファンタジーの要素も織り交ぜられていきます。
▼開演前
チケットを購入した時はほぼ満席で、最後列の一番端の席を予約したのですが、当日行ってみると私の前方10列くらいがほぼ空席の状態でした。いったい何があったのでしょうか。usherに相談すると移動してもいいと許可され、前方のセンター寄りで観ることができラッキーでした。
▼終演後
▼グラシエラ・ダニエルの人生や作品の背景については、こちらのページに詳しく書かれています。
THE GARDENS OF ANUNCIA - Lincoln Center Theater Review by Lincoln Center Theater - Issuu