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『A Beautiful Noise, The Neil Diamond Musical』2023.6.18.19:00 @Broadhurst Theatre

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『A Beautiful Noise, The Neil Diamond Musical』とは

2022年ボストン公演を経て、同年ブロードウェイで初演されたミュージカル。

ニール・ダイアモンドの楽曲を用いたジュークボックス・ミュージカルで、彼の伝記的作品。

脚本はAnthony McCarten、振付はSteven Hoggett。

演出はマイケル・メイヤー。

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あらすじ

暗い表情で椅子に座るニール・ダイアモンドは、医師のカウンセリングを受けている。

何も話したがらないニールに、医師は彼の楽曲を振り返りながら人生を振り返ってみることを提案し、ニールは若かりし頃の自分に思いを馳せる。

若い頃、ブルックリン出身のニールはソングライターとして身を立てようと各所に売り込んでいたが、彼自身が歌えることに気づいたプロデューサーにより最終的にシンガーソングライターとして活動することとなる。

妻との結婚、不倫、2度目の結婚などプライベートの浮き沈みとともに、彼のキャリアが綴られていく。

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キャスト

Neil Diamond(Then)    Nick Fradiani

Neil Diamond(Now)    Mark Jacoby

Marcia Murphey    Robyn Hurder

Doctor    Linda Powell

Jaye Posner    Jessie Fisher

Fred Weintraub, Tommy O'Rourke  すす  Michael McCormick

Bert Berns, Kieve Diamond    Tom Alan Robbins

Ellie Greenwich, Rose Diamond    Bri Sudia

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感想

2022/2023シーズンの冒頭で開幕した作品ですが、見逃していたのでちょうど空いていた日曜ソワレで観ました。

TKTSで$80+αでオーケストラセンター前方。

ニール・ダイアモンドについては人となりは全く知らず、「Sweet Caroline」と「America」の2曲だけ聴いたことがある、という状態で観ました。

▼trailer


www.youtube.com

▼観劇直後の感想

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現在のニール・ダイアモンドが医師とのカウンセリングを通して、過去を振り返るという構成の伝記ミュージカル。

冒頭から悲観的で何も自ら語ろうとしない主人公の様子は、彼が2018年に公表したパーキンソン病に伴ううつ症状が関連していると思われます。

現在を生きるニールと若かりし頃のニールはそれぞれ別の役者によって演じられます。

残念ながらWill Swensonは出演しない回でした。

現在のニールを演じるMark Jacobyの表情の乏しさや動きの少なさなど、パーキンソン症状を表す演技が秀逸で、無表情だったニールが終盤に感涙するまでに至る変化が素晴らしかったです。

ニールの楽曲とともに彼の人生を振り返るわけですが、素朴なユダヤ人青年がスターダムに登る過程で、キャリアの面では自身やプロデューサー側との対峙、プライベートでは不倫の末、離婚、再婚と、個人的にはあまり共感できる点がありませんでした。

もちろん、長年の彼のファンは当時を振り返って懐かしい気持ちになれるのだと思います。

ミュージカルシーンは、ニールがセンターに立って歌い、周りでアンサンブルがダンスとコーラスで盛り上げるというスタイル。

アンサンブルは20代前半から半ばの若手で、本作がブロードウェイデビューという方が多かったです。

ニールが歌わずに、舞台前方でドラマが繰り広げられている背景でアンサンブルがBGM的に歌う、音楽劇的な場面もありました。

劇中で何度も彼のルーツがユダヤ系であることを意識されるシーンがありました。ニール・ダイアモンドという名前がいかにもユダヤ的で、本名ではなく芸名としてつけたと勘違いされるなど。

同じユダヤ系の著名人バーブラ・ストライサンドと高校の同級生だったという意外な事実も明かされました。

ヨーロッパから移民としてやってきた祖先に捧げられた「America」という曲があるように、ユダヤ系という出自を背負った人なのだなと感じました。

トニー賞ではノミネートすらされませんでしたが、脚本なしのトニー賞授賞式でパフォーマンスする運びとなったのも、ブロードウェイがユダヤ文化が根強く息づいている場所ということも関係しているのかもしれません。

客席はある世代の方達がシングアロングして大盛況でした。

▼終演後

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