ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『Jagged LIttle Pill』2020.2.27.19:00@Broadhurst Theatre

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今回は観劇の感想だけでなく、作品に関する論争にも触れるため少し長くなります。

まずはじめに、私は作品の及ぼした影響と今後の演劇界について考えていきたいと思っており、作品や個人、その属性を批判したくありません。

よろしくお願いします。

 

 

『Jagged Little Pill』とは

アラニス・モリセットの楽曲を使ったジュークボックスミュージカル。

2018年にマサチューセッツ州ケンブリッジでプレミア公演され、2019年11月ブロードウェイで初演された。

アラニス・モリセットのアルバム「Jagged Little Pill」だけでなく、彼女の他のアルバムの収録曲や、この作品のために書き下ろされた2つの新曲「Smiling」「Predator」が用いられている。

脚本はディアブロ・コーディ。

編曲はミュージカル『ネクスト・トゥー・ノーマル』の作曲などで知られるトム・キット。

演出はダイアン・パウルス。

トニー賞15部門にノミネートされ、2部門(脚本賞助演女優賞)で受賞した。

オリジナル・ブロードウェイ・キャスト・アルバムはグラミー賞を受賞した。

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あらすじ

メアリー・ジェーン(以下、MJ)はコネティカット州に暮らす主婦。

昇進が決まった夫スティーヴ、優等生の長男ニック、芸術の才があり養子の長女フランキーとの生活は、側からみると絵に描いたような幸せな家族。

しかし、実はMJは鎮痛薬であるオキシコドンの中毒に陥っていた。

夫のスティーヴとはセックスレスの状態で、彼はポルノ依存症。

フランキーは幼馴染のジョーと恋愛関係にあったが、同級生のフェニックスと知り合い、彼に惹かれるようになる。

ニックはハーバード大学に合格するような優等生だが、恋人のベラがパーティーでレイプされたことを知り動揺する。

MJはこのことが表沙汰になるとニックの評判が落ち、ハーバードの内定が取り消されるのではないかと恐れるが、彼女自身も大学時代にレイプの被害に遭い、そのことを公にせずひとりで抱えていた。

こうして少しずつ、家族の抱える問題を明らかになりはじめる。

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キャスト

Mary Jane Healy    Elizabeth Stanley

Steve Healy    Sean Allan Krill 『Parade』

Nick Healy    Derek Klena

Frankie Heally    Celia Rose Gooding

Jo    Lauren Patten

Bella    Kathryn Gallagher

Andrew    Logan Hart

Phoenix    Antonio Cipriano

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感想

2020年2月にブロードウェイでの公演を観劇しました。

この時、リバイバル作品以外はジュークボックスミュージカルばかりだったブロードウェイで、オリジナルの脚本で、劇評は概ね良かったこの作品には多少の期待はしていました。

ただ特にアラニス・モリセットに詳しくなく、そもそもジュークボックス系に苦手意識があったため、雰囲気にのれるかなと一抹の不安もありました。

でも実際、そんな不安は幕が上がると一瞬で吹き飛びました。

▼ブロードウェイ再開前のtrailerです。


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▼観劇直後の感想です。

まず会場の熱気。

感情を解き放った歌やダンスに心揺さぶられました。

舞台上にはソファーやベッドなどの家具があるだけで、舞台装置や照明は非常にシンプルですし、衣装も華美ではありませんが、そのためにかえって役者たちのエネルギッシュなパフォーマンスが映えていました。

途中、何度も歓声が上がって、ライブ会場にいるかのよう。

ダンスはコンテンポラリーというのでしょうか、ジャンルを特定するのは難しいですが、アクロバティックでもあり、とにかくかっこいいのです。

メインキャストが歌って周りでアンサンブルがダンスするよくあるスタイルですが、メインキャストの感情をアンサンブルがダンスや表情でより強調していました。

この振付はシディ・ラルビ・シェルカウイ Sidi Larbi Cherkaouiさんで、バレエやオペラを中心に国際的に活動されている振付師の方です。

 

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本作で扱われているテーマには、薬物中毒、養子、セックスレス、ポルノ中毒、同性愛、性暴力などがあり、現代社会を映す鏡のようなのですが、これら多岐に渡る事柄がうまく構成されて一つの作品として表されていました。

確かに内容的にtoo muchと感じる方がいるのは理解できますが、ストレートプレイではなくミュージカルだからこそ、このようなテーマで生じる心理的葛藤を歌やダンスで昇華させることができ、最後まで通して観ることができたのかもしれないと思いました。

ケンブリッジではメインキャストそれぞれに重点が置かれていましたが、ブロードウェイでは基本的にはMJを主人公にした物語として書き直されました。

完璧な母親として振る舞おうと努力しているMJが密かに鎮痛薬の中毒に陥り、オルターエゴと戦うように踊り歌う「Uninvited」では終始鳥肌が止まりませんでした。

▼「Uninvited」

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この「Uninvited」でMJのバックで歌っているのが、MJの長男Nickの恋人であるBella。

Bellaはレイプの被害に遭い、そのことを理解してもらえず苦しむという役柄で、演じるのはこの作品でブロードウェイデビューを飾ったKathryn Gallagher(Peter Gallagherの娘さん)です。

彼女の歌う「Predator」は心が引き裂かれるような思いで聴きました。

NickはBellaが被害に遭った時、泥酔した状態だと警察に言おうとすると、そのことでNickのハーバード大学の内定が取り消されることを恐れたMJはそれを阻止しようとします。

このあたり観劇した時、私にはMJの行動を理解できませんでしたが、息子の将来を思う母親の立場や、自身も性暴力被害のサバイバーであることを思うと、、、複雑です。

ケンブリッジからブロードウェイへ


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また、MJの長女Frankieとその親友で恋人のJoのカップルの可愛らしいこと!

Frankieを演じるCeliaちゃんもこの作品でブロードウェイデビューを迎えましたが、2017年のリーディングの時はまだ高校生でした。若い。(お母さんはOnce On This IslandやThe Color PurpleのOBCのLaChanzeさん。)

Joを演じるLaurenはブロードウェイではFun Homeのmedium Allisonで知られ、オリジナルキャストとして出演するのはこの作品が初めてですが、前作に引き続きクィアという役どころ。

CeliaちゃんとLaurenの相性の良さも魅力のひとつだと思います。

この2人はリーディングの段階からずっと一緒で、息がぴったり合っているんですよね。

ラニスがこのアルバムの楽曲を手掛けたのは10代〜20代前半で、2人のキャラクターと同じ年頃なので、楽曲との相性もいいのかもしれません。

▼OBCR発売イベントでのCeliaちゃんとLaurenによる「Hand in My Pocket」

Lauren Patten & Celia Rose Gooding sing Hand in My Pocket at the Jagged Little Pill cast album event - YouTube

FrankieがPhoenixと親密な関係になった現場をJoが目撃しまい破局を迎えますが、その後、親友としてFrankieを迎えに行ってあげるなど、なんだかんだで優しいJoなんです。

後述しますが、Frankieに裏切られた怒りを表すJoが歌う「You Oughta Know」はこの作品の中で一番の盛り上がりを見せるシーン。

怒り心頭、頭の天辺から爪先まで怒りに満ちているような状態で、シャウトに近い歌い方をしていて、とにかくとてもかっこいいのです。

このナンバーの後は必ず毎公演スタンディングオベーションが起き、ショーがストップするほど。

このシーンのためにもう1度観に行きたいと思うほど、衝撃的で忘れがたいです。

 

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Jo役のジェンダーに関する論争

 Lauren Pattenが演じるJoはFrankieの親友であり恋人でもあるという役どころ。

メインキャストに名を連ねてはいますが、出番も歌うナンバーも少ないです。

しかし、Joの歌う「You Oughta Know」は毎公演スタンディングオベーションが起こるナンバーで、この作品で一番盛り上がるシーンと言っても過言ではないと思います。

私はここまで人が怒りを露わにして全身全霊で歌うミュージカルシーンを知りません。

 しかし、このJoという役のジェンダーの捉え方を巡り、トランスジェンダーのコミュニティを中心として抗議運動が起きています。(あえて過去形では書きません。)

具体的には、ブロードウェイ上演を目指していたケンブリッジでの公演では、Joの容姿はノンバイナリー(女性や男性といった性別にとらわれないジェンダー)として描かれていたにも関わらず、ブロードウェイで蓋を開けてみるとシスジェンダー(生物学的性別と性自認が一致しているジェンダー)として捉え直されていたということです。

台詞で、Joがノンバイナリーであると明言しているシーンはないのですが、このケンブリッジでの公演時、LaurenがTwitterで「Joのpronownsはthey/themである」という旨のツイートをし、インタビューで「Joはシスジェンダーとしては描かれていない」と答え、ステージドアで同様の内容をファンと話したことも影響しています。(そのTwitterでの投稿はその後消去されています。)

このことで、ケンブリッジ公演を観てJo役に自己投影していたノンバイナリーの観客は、ブロードウェイで稀少なノンバイナリーの役を消されてしまったと感じてしまったわけです。

ブロードウェイで上演されたミュージカルで、ノンバイナリーの役柄は非常に少なく、よく知られているのは『ヘッド・オーヴァー・ヒールズ』Head Over HeelsのPythio役ですが、これはこの役は演じたペパーミントさんのために用意されたようなもので、実質ほぼないも同然。

そのような中で、忽然と現れたJoというごくありふれた高校生のキャラクターにノンバイナリー性を見出し、勇気づけられたファンが多くいたのです。

 地方でのプレミア公演からブロードウェイへのトランスファーの途中で、作品の内容が変わることはしばしばあることですが、今回問題となっているのはその変更理由です。(以下はあくまで憶測となります。)

 一つは、Jo役を演じるLauren Pattenはシスジェンダーバイセクシャルの役者であり、製作陣はシスジェンダーの役者がノンバイナリーの役を演じて批判されることを恐れたからではないかということ。

 もう一つは、ノンバイナリーの役を演じた役者がトニー賞で女優賞と男優賞のどちらに決定されるか明らかでないからではないかということ。

ケンブリッジの時点で先に述べた「You Oughta Know」後のスタンディングオベーションは起こっており、このJoという役でLaurenがトニー賞に絡んでくることは予想されていました。

トニー賞受賞はどの部門であれ、作品にとってはいいPRになりますから、製作陣はLaurenのトニー賞受賞を確実にしたいという狙いがあったのではないかということなんです。

このJoというキャラクターの変わりようは、初期からのファンの間では早くからSNSで話題になっていたようですが、より広く知れ渡ったきっかけはChristian Lewisが書いたこちらの記事。

brooklynrail.org

これとともに、このJo役の変更を批判しているのがJo役のunderstudyだったEzra Menasです。

Ezraさん自身はノンバイナリーでレズビアンであり、このJo役の変更について見るに耐えなかったと訴え、ノンバイナリーの役はノンバイナリーが演じるべきと主張しています。(ちなみにEzraさんは2021年12月公開の映画『ウエスト・サイド・ストーリー』にAnybodys 役として出演しています。)

 この作品の制作の舞台裏について書かれた本「Jagged Little Pill」(以下、[1])で説明されているJoというキャラクターは以下の通りです。

「Jo Taylorはクィアの高校生で、FOXテレビ共和党系のテレビチャンネル)を見ている母親と、ホモフォビアの牧師である父親の間で、家庭での居場所はなく、唯一心を許せる相手がFrankieである。」([1] p.139の要約)

ここにはセクシャリティーはクィアと強調されて書かれていますが、ジェンダーに関する記載は一切ありませんでした。

また、JLPという作品を通して、LGBTQの若者の心の不安を描こうとしていることはわかりました。([1], p.73)

Jagged Little Pill

Jagged Little Pill

  • Grand Central Publishing
Amazon

(こちらの本は舞台写真が満載で、この作品が少しでも心に刺さったと感じた方は買って損はないと思います。)

 JLPにまつわるジェンダーセクシャリティーなどに関して、クリエイティブらの出した動画です。

 
www.youtube.com

プロデューサーであるEvaさんは明らかに「Joはノンバイナリーとして書かれたわけではない」と言っています(12:50頃〜)。

Diabloさんも「ジェンダーセクシャリティーは複雑なもので簡単に判断できないもの…」と、なんとも釈然としない話し方をしています。

残念ながらこの動画をみた人の中には、製作陣に「ガスライティングされている」と感じる方もいて、さらなる反感を招く結果となってしまいました。

この動画の公開後、公式アカウントはこの件に関して沈黙を守っていましたが、2021年9月に入り、キャメロン・マッキントッシュによるトランスジェンダーに関するcontroversialな発言や、トランスジェンダーの役者たちが権利を主張する抗議デモなどがあり、この件に関する意識はさらに高まっていきました。

そして、トニー賞授賞式の1週間前というタイミングで、公式アカウントは以下の声明を発表しました。

詳細ページはこちら。

jaggedlittlepill.com

この声明には、謝罪と今後以下のような点を改善すると書かれています(大意)。

1. ノンバイナリーやトランスジェンダー、BIPOC(black, indigenous, people of color)を含んだドラマタージチームを新たに採用し、特にジェンダーを模索するティーンエイジャーであるJoの物語に関して脚本を深める。

2. これまで通り、全てのジェンダーアイデンティティーの役者を広く採用する。特にJoという役柄を個人的に経験したことのある、ノンバイナリーやジェンダーフルイド、トランスジェンダーの役者を積極的に採用する。

3. 安心して働くことのできる労働環境を整えるために、人種差別やトランスフォビアをなくすためのセッションなどを設ける。

4. The Trevor Project, Trans Lifelineと提携し、トランスコミュニティーとの連携を強める。

同じ時期に、Jo役のオリジナルキャストであるLaurenも自身のInstagramに以下のような動画をあげています。

インタビュアーはシャキーナさんです。

 
 
 
 
 
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この中で、Laurenは誤解を生んだことへの謝罪と、ブロードウェイ公演再開後もJo役を演じ続けることを明言しています。

彼女はJoのpronounsをthey/themと話したことについて、ノンバイナリーに限局したわけでなく、それ以外も含む"umbrella term"と表現したと話していて、この辺りの認識の違いも誤解を生むことになったのかもしれません。

キャストへの身体的・心理的虐待

もう一つの論争はアンサンブルキャストのNora Schellが手術が必要と医師に言われたにも関わらず、ステージマネジャーに手術を延期するよう強要されたという告発です。

Noraさんは多嚢胞性卵巣症候群の影響でできた膣ポリープを摘出する手術を受けるために3, 4日休むことを許されず、それにより貧血になり、稽古中にふらつくこともあったそうです。

手術の前日にGood Morning Americaでのパフォーマンスがあり、そのセットで倒れたこともあると。

しかも信じられないことに、Noraさんの健康状態について放置していた問題のステージマネジャーは、Actor's Equityのvice presidentだというのです。

これに対する製作陣の回答です。

当然ですが、この件に関しては捜査が入ることになりました。

一連の論争についての個人的な考え

 第一にキャストへの身体的・心理的虐待の件ですが、こちらに関しては言語道断、許されないことです。

Noraさんの心身の健康を心からお祈りしています。

手術によって身体的には改善しても、心の傷はそう簡単には癒えません。

2度とこのようなことが起きないようにしてほしいものです。

 続いてJoのジェンダーを巡る論争ですが、こちらについては一口では語りきれないものがあります。

まずブロードウェイの舞台を観たノンバイナリーの方達が、自身の存在を消されたように感じたことについては心から「I'm sorry.」と言いたいです。

その上で、シスジェンダー(she/her)でクィアである私の考えを書きます。

ジェンダーアイデンティティーを見かけで判断できるか

ある人のジェンダーアイデンティティーはその人自身が決めるものであって、他人の判断で決まるものではないです。

この論争は、ケンブリッジ公演でのJoの見かけや表現から、観客がJoをノンバイナリーと考えたところから始まっていますが、私は外見だけでジェンダーを決めつける危うさを感じてしまいました。

スカートでなくズボンを好む(vice versa)からノンバイナリー/トランスジェンダーなのか。

シスジェンダーでも中性的だったり、ボーイッシュ/ガーリーだったりする人はいますし、敢えて表に出さずに内に秘めている人もいます。

だからこそ、プロフィールにpronounsを表示する意味があると思います。

また、ジェンダー模索中の人や、人生の途中でジェンダーが違うことに気付く人がいることについても書いておきたいです。

ノンバイナリーの役はノンバイナリーの役者が演じるべきなのか

役柄と役者のジェンダー/セクシャリティーの一致/不一致については、様々な議論がなされていますが、個人的には一致/不一致は関係なく、その役を演じるのに相応しい能力をもった役者が演じればいいのではないかと考えます。

特にミュージカルは演技だけでなく、歌、ダンスにおけるパフォーマンス力も能力ですし、それらを抜きに役者個人の属性だけでキャスティングするのは難しいのではないでしょうか。

もちろん役者個人のジェンダー/セクシャリティーを巡る旅路はその役を表現する上で役立つとは思いますが、それだけが全てではないのではないかと。

シスジェンダーではノンバイナリー/トランスジェンダーの気持ちはわからないのでしょうか(vice versa)。

それを想像力で補える力こそ役者の演技力に繋がるのでは?

先にも述べた通り、現状ではミュージカル作品でノンバイナリーの役柄があまりに少なすぎますし、これからもっと彼らの話は語られるべき。

いつの日か、ノンバイナリーのコミュニティーの中から脚本家が出て、彼らの言葉で彼らの物語が語られる、そんな日が訪れたら素敵だと思いました。

トニー賞におけるノンバイナリー

オリンピックなどスポーツの世界では男女で分けられているのは、生物学的特性から公平性を保つために必要だと思いますが、芸術や芸能の世界で男女を分ける必要があるのでしょうか。

正直、紅白歌合戦とか、なんで男女で分けるのかずーっと昔から思ってきましたが。

ベルリン国際映画祭では2020年から俳優部門の男女分けがなくなりました。

ブロードウェイ界隈は特にLGBTQ+やそのallyが多いことで知られていますし、inclusiveな雰囲気なのにも関わらず、トニー賞ではいまだに伝統に則って、俳優部門は男女で分けられています。

今回のJoについてはシスジェンダーの役として女優賞でノミネートされましたが、今後、ノンバイナリーと明言されている役がトニー賞候補になることも考えられます。

その場合どうするのか、今回の舞台裏でどのような議論が交わされているのかわかりませんが、ブロードウェイ再開を祝う前に、来シーズンに向けて考えるべき事項なのではないかと強く思います。

「批判されたダメな作品」で終わらせたくない

2020年2月にこの作品に出会うと同時にLaurenという役者に出会って、作品も彼女も大好きになったので、その後の様々な論争が出てきた時にはとてもつらくて、一時期Twitterと距離をとっていたこともありました。

今も作品、Laurenが好きな気持ちと、トランスコミュニティーへの共感と、一部の製作陣への怒りと・・・複雑な心境です。

言いたいのは、「Jagged Little Pillはこれだけ問題が次から次に出てきてダメな作品」で終わらせたくないということです。

もちろん問題は山積していますが、この作品が提起しているテーマや成し得てきた良い面にも目を向けてほしいです。

トランスコミュニティーからのbacklashにあっていますが、実際にこの作品ではオリジナルキャストとしてノンバイナリーの役者を少なくとも4人は採用しています。これは多い方。

劇場は誰も傷つくべき場所ではないです。

今はコロナ禍で分断されてしまっていますが、今後もっと話し合いが必要です。

内容的に、この作品が日本で初演を迎えることはないでしょう。

でも、もっと多くの人にこの作品を観て、考えてもらいたいと心から願っています。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。 

▼「Thank U」リモートでのパフォーマンス


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▼オープニングナイトの様子


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