
『The Lonely Few』とは
2023年にロサンゼルスでプレミア上演され、2024年オフブロードウェイで初演されたミュージカル。
作詞・作曲はZoe Sarnak、脚本はRachel Bonds。
1幕構成。
演出はTrip Cullman、Ellenore Scott。
あらすじ
舞台はケンタッキー州の小さな町。
ライラをボーカルに据えたバンド「The Lonely Few」はいつもの店でライヴをしていた。
そこに名の知れたミュージシャンであるエイミーが現れる。
「The Lonely Few」に目をとめたエイミーは、一緒にツアーを回らないかと彼らを誘う。
最初は、依存症があり精神的に安定しない兄を置いて家を離れるわけにはいかないと躊躇うライラだったが、最終的にエイミーのツアーに同行することを決意する。
ツアーをともに回るうちに、ライラとエイミーの間に恋が生まれる。
ライラはエイミーに強く惹かれ、エイミーは離婚した元妻との関係で受けたトラウマからなかなか前に進めなかったが、少しずつライラに心を開いていく。
しかし、突如、兄と連絡がつかなくなったことで不安になったライラはツアーを離れなければならなくなり、2人の関係性に変化が生じることになる。

キャスト
Lila Lauren Patten 『Jagged LIttle Pill』
Amy Taylor Iman Jones 『Scotland, PA』
Dylan Damon Daunno 『Oklahoma!』
JJ Helen J Shen 『Teeth』
Adam Peter Mark Kendall
Paul Thomas Silcott

感想
ロサンゼルス公演の時から、いつかニューヨークで上演してほしいと切に願ってきた百合ミュージカルが遂にオフ・ブロードウェイで上演されることになり、文字通り飛んで行きました。
これがとてもとても素晴らしかったので、記事を書いていきたいと思います。
▼sneak peak
▼first look
これまでミュージカルで描かれてきたWomen Loving Women: WLWは、『Fun Home』以外の作品においてはサブキャラクターであることが多かったと思います。例えば『Rent』のMaureenとJoanne、『Falsettos』のCharlotteとCordeliaなど。それも作品数としては男性同士の恋愛と比較して非常に少なかったのです。そんな中、このWLWを主人公にし、女性同士の恋愛をメインで描いたミュージカルが上演されました。
ロサンゼルス公演では2幕構成でしたが、オフ・ブロードウェイでは1幕構成に変更されていました。
通常の座席に加えて、物語の中でバンドがライヴをしている店のテーブル席を模したステージ席が設置されました。今回、私は思い切ってステージ席を選んで座ってみました。

舞台の下手側にバンドが演奏するステージがあり、上手側にバーカウンターやステージ席、さらに上手側は2階建てで2階にライラが暮らすケンタッキー州の自宅のセットが置かれていました。

ステージ席の客は物語の中ではバンドのライヴを観に来ている客、という設定ということもあり、開演前にDylan役のDamon Daunnoがやってきて「皆さんがノッてくれる(get loose)と会場のお客さんも一緒になってノリやすいからよろしく頼むよ」と言われたので、そういうのは苦手なのですが、バンドが演奏している間は軽く前後に揺れてみました。
そういったimmersiveな空間で間近に役者さんを感じて、彼らと同じ目線で物語を追うことができ良かったです。
バンドのボーカルであるライラ役のLauren Pattenのシャウトがとても良く、ただただ圧倒されました。彼女は、アラニス・モリセットの楽曲を使ったジュークボックス・ミュージカル『Jagged LIttle Pill』でもWLWを演じトニー賞を個人で受賞した役者さんです。彼女自身、バイセクシャルであることを公にしています。
▼「God of Nowhere」
ライラが普段暮らしているのがニューヨークではなくケンタッキーというのもとても重要で、地方都市で生きるクィアの孤独や閉塞感が見事に表現されていました。ライラもきっと上京してLGBTQ+が多く暮らすニューヨークやサンフランシスコといった大都市で生活したいはずですが、兄を放っておけないという責任感から鬱屈した気持ちで地元を離れられずにいて、その気持ちをロックを歌うことで昇華しているのだろうと観ていて思いました。日本も同様ですが、LGBTQ+に対する理解というのは、アメリカでは特に地域差が大きいです。
そこにエイミーがやってきて自分たちの音楽を認めてくれて、ツアー公演に誘ってくれるという夢のような話が持ち上がり、ライラの喜びも一入だったわけです。
Lauren演じるライラとTaylor演じるエイミーの2人の関係性にはケミストリーが感じられ、お似合いだったので個人的に観ていてニヤニヤが止まらなかったです。(ステージ席だったので頑張ってニヤつきは抑えました。)彼女たちのデュエットも素晴らしく、音楽的な相性も最高でした。
Taylor Iman Jones引っ張りだこの役者さんですが、過去に『Head Over Heels』でWLWを演じたことがあります。今回も持ち前の抜群の歌唱力を披露していました。
Zoe Sarnakは数少ない女性ミュージカル作曲家のひとりですが、彼女はレズビアンであることを公にしていて、Lauren Pattenと交際していた時期もあります。特に当事者が書かなければいけないということではないですが、これからもまだまだ少ないWLWを描くミュージカルをつくっていってほしいと願っています。
とにかくハッピーエンドで安心しました。百合作品は何故か悲劇が多いので。
