
『Life And Trust』とは
2024年にニューヨークで開幕したイマーシヴ・シアター作品。
『Sleep No More』の製作陣が多く関わっている。
脚本はJohn Ronson。
演出はTeddy Bergmanら。


あらすじ
コンウェル氏は金融業で名前が知られる存在だったが、株価の暴落で資産を失う。
その後、製薬業で財を成し、作った薬で病気がちの妹を救おうとするが、妹は自殺する。
その時、彼は現れた悪魔と、過去に戻って人生を楽しめる代わりに翌朝には魂を失うという内容の契約を交わす。



感想
昨夏から始まっていた新作のイマーシヴ・シアター作品に、ついに行くことができました。チェルシーにある古いホテルを使った『Sleep No More』と同じ製作陣が手がけたということで期待していました。今回は昔、銀行として使われていたファイナンシャル・ディストリクトにある建物を使い、金融業界を描くプレイを上演するとのこと。しかも、ゲーテの『ファウスト』、オスカー・ワイルドの『ドリアングレイの肖像』、E・L・ドクトロウの『ラグタイム』がベースとなっているという前情報から、お話の想像が全くつかず興味をそそられました。
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夜のファイナンシャル・ディストリクトに行ったのは初めてかもしれません。19時頃、すでに暗い中、かつて銀行だった趣のある建物に入るだけでドキドキしてしまいました。最初、入り口が分からず、しばらく建物周辺をうろちょろしていました。というのも『Life And Trust』という看板やEntranceという目印も何もなかったからです。Googleマップで「ここしかない」と何度も確認し、なんの変哲もない扉の前にいるガードマンの元に近づいていくと、「『Life And Trust』?」と聞かれ、パスポートを確認され、無事入場することができました。曜日によっては同じ建物内のカフェで優雅に休憩してから入れるようです。私は日曜に行ったので、カフェはお休みでした。
▼入り口

『Sleep No More』と同じく、入場時に手荷物をクロークに預け、iPhoneも鍵付きのポシェットにしまい、内部の撮影は不可でした。
最初にバーに通され、そこで水などをいただきながら待ちます。(ここのバーのスタッフたちは信じられないくらい愛想が良くなかったです。それもこの世界観を保つための演技なのか、と思ったほど。)その辺りに置かれている新聞を読むと登場人物について少しわかるかもしれません。私は新聞を事前に少し読みましたが「コンウェルという輩がいるのだな」くらいにしか理解していませんでした。新聞を持ち帰って読み直すと、あれはこういうことだったのかと合点がいくこともありました。
なるべく早く入って物語に浸りたいと思っていた(多分SNMと同じく何度か物語がループすると想定していた)ので、案内人に呼ばれるのを待たずに案内されていく人たちの後を追って、入場。
SNMでは嘴がついたような白マスクでしたが、今回は鹿さんの角みたいなのがついた黒マスクを渡され、装着するように指示されます。SNM同様に普段メガネの方はコンタクトレンズにした方がこのマスクを装着しやすいです。
▼ヘラジカさんみたいなマスク

プレシアターの説明中に案内人が突然、実は自身は悪魔の手下であることを告白し、ちょっと緊迫したムードになり、本入場。
SNMの時よりさらに規模が拡大し、今回は6階建ての建物内を上ったり下りたりします。場合によっては猛ダッシュするキャストについていく必要があるため、履き慣れた運動靴で行くことを強くお勧めします。
最初に通された階ではスクリーンに投影される男性を恋しげに見つめる女性がおり、その後、彼女はレントゲン撮影に成功します。なので、キュリー夫人だったのかなと推測。その後、ダンサー風の女性(おそらくイヴリン・ネスビット)など何人も登場し、それぞれ悪魔と契約を交わし亡くなる、というのを繰り返していたと記憶しています。
SNMと同じく、お話はよく分からなかったけれど、なんかすごいもの観た、という漠然とした感想が残りました。ベースの話も、『ファウスト』と『ラグタイム』はなんとなく分かったけれど、今回は『ドリアングレイの肖像』に関するプロットは全く分からなかったです。おそらく何度か体験することでようやく全ての物語を結びつけて理解できるのかもしれません。
個人的には途中で役者さん(占い師役だったのかな)に手を引かれ、手相を見られて手を握りしめられながら、折り紙で蝶を折ってもらい、それをプレゼントしてもらったことが嬉しかったです。
▼ドル札(偽)を折ってもらった蝶

また、その役者さんが女性同士の恋愛シーンを演じていたのも印象的でした。(しかも既婚女性と知りながらも互いに惹かれていって、、、という百合展開に内心、狂喜乱舞していました。)
3時間駆け回った後、マスクを外したら前髪がお風呂上がりみたいになっていました。ちょっとしたワークアウトをした感じですね。運動不足だったので、ちょうど良かったです。
様々なキャラクターが登場して詳細なあらすじは理解できなかったものの、思い通りにならなかった人々の後悔や強い願望、嫉妬に溢れていて、見ていて少し苦しくなりました。それらは実際に銀行として使われていた建物の壁や天井に染み付いた故人たちの魂の具現を見ているかのようでした。