『桑港(1936)』とは
1936年のMGMによるミュージカル映画。
1906年に起きたサンフランシスコ大地震の前後を描いた作品。
アカデミー賞録音賞を受賞している。
監督はW・S・ヴァン・ダイク。
あらすじ
1905年の大晦日、歌手志望のメリーは火事で部屋を失ってしまい、途方に暮れて酒場「パラダイス」に仕事を求めてやってくる。
「パラダイス」の店主ブラッキーは、メリーに仕事と生活する部屋を与える。
メリーは酒場で歌うようになり、その歌声は評判になり、ある日地主であるジャックがやってきた際、彼は彼女の歌声に惚れ込み、チボリ歌劇場で歌えるように取り計らおうとかってでる。
チボリ歌劇場で歌うことはメリーの夢であり、彼女は喜ぶが、ブラッキーはメリーと交わした2年契約を引き合いに出し、ジャックは引き下がる。
メリーはブラッキーの頼みで、彼の幼なじみであるマリン神父の教会で聖歌隊の歌唱を手伝う中で、かつてブラッキーが教会のために高価なオルガンを寄付したことを知る。
ブラッキーは地元の建物改革委員に推薦され、立候補することになるが、ジャックの手下がそれを妨害しようとし、ブラッキーは手を上げてしまう。
ブラッキーとメリーは互いに愛し合うようになっていたが、チキンボールというコンテストで優勝することばかり考え、メリーに露出度の高いドレスを着せて歌わせようとするブラッキーに怒ったマリン神父を、ブラッキーは殴り、メリーはその場から去り、ジャックの元に行ってしまう。
チキンボールの前日、ジャックの手回しにより「パラダイス」に一斉捜査が入り、踊り子たちは留置所でしばらく過ごすハメとなり、コンテストに出場できなくなってしまう。
チキンボール当日、会場に行ったメリーは「パラダイス」が出場できなくなった真の理由を知り、ジャックを見捨てて、自ら「パラダイス」の代表として十八番の「サンフランシスコ」を披露し優勝する。
そんな折、サンフランシスコ大地震が起き・・・
キャスト
メリー ジャネット・マクドナルド
マリン神父 スペンサー・トレイシー
ジャック ジャック・ホルト
ジャックの母 ジェシー・ラルフ
感想
ミュージカル映画としてはジャネット・マクドナルドの歌を存分に楽しめる一作となっていますが、ミュージカルというジャンルに限らず、映画として一見の価値のある名作として知られています。
▼trailerです。
『桑港(1936)』San Francisco @PrimeVideo MGMによるミュージカル映画。1906年サンフランシスコ大地震の前後のお話。歌手志望のメリーと酒場を経営するブラッキー。歌謡曲からオペラまで歌いこなすジャネット・マクドナルドの美しさ。荒っぽいが根は善人という役を演じるクラーク・ゲーブルの色気。 pic.twitter.com/RZgIWz4VdG
— るん / Lune (@nyny1121) 2021年9月11日
それまでは自分中心だったブラッキーが大地震を契機に改心する姿が尊い。メリーの歌うタイトルナンバーは太陽のようにこの作品を照らしていて、何度聴いても飽きたらない。久々にいい映画をみさせてもらった。
— るん / Lune (@nyny1121) 2021年9月11日
Jeanette MacDonald sings 'San Francisco' https://t.co/Y4iOJJ5EMs @YouTubeより
蛇足ながら、「桑港」をサンフランシスコと読むのはなぜ?と思い調べてみたら、元々「桑方西斯哥港(読みはソーホーシスコ)」という漢字を当てていたのを略して「桑港」となったらしい。興味深い。
— るん / Lune (@nyny1121) 2021年9月11日
▼ジャネット・マクドナルドによる「サンフランシスコ」、劇中で何度もリプライズされる。
ジャネット・マクドナルドの歌声は確かにオペラ歌手としては線が細いですが、的確なピッチと豊かな表現力を持っていて、オペラから歌謡曲まで幅広く歌いこなすのは見事だと思います。
その上、華のある外見が伴って、何作もこの時代の映画界で主演を務めました。
対して、クラーク・ゲーブルといえば、『踊る不夜城(1937)』でジュディ・ガーランドが彼に向けて歌ったシーンが思い出されますが、『風とともに去りぬ』で見せた色気や哀愁で本作でも存分に魅せています。
「悪い人に見せて実はいい人」「少し荒っぽいけれど実は色々考えている」というのがたまらなく魅力的だと思います。
終盤の地震や、その後の建物の爆破のシーンなど、迫力のある画を楽しむことができました。
自然の猛威の前には人は無力なもので、そのような天災に遭った時、内省して身近にある大切な存在に気づくものなのではないでしょうか。
グロリア聖歌を歌いながら震災後のサンフランシスコの街を丘の上から見下ろす人々を見ながら、これから建物改革委員として復興に邁進するブラッキーの姿を想像しました。
85年という年月を経てもなお、色褪せない魅力がこの作品にはあり、多くの方に観てもらいたいです。