『Merrily We Roll Along』とは
1981年にブロードウェイで初演されたミュージカル。
1934年のGeorge S. Kaufmanによる同名のプレイを基にしている。
作詞・作曲はStephen Sondheim。脚本はGeorge Furth。
今回のプロダクションは2012年にロンドンのメニエール・チョコレート・ファクトリーでプレミア公演された後、ウエストエンドで上演され、2021年6月には同じマリア・フリードマンの演出で、日本人キャストにより新国立劇場で上演され、2022年11月からオフブロードウェイのニューヨーク・シアター・ワークショップで上演され、2023年9月ブロードウェイにトランスファーした。
この記事は2023年からのブロードウェイ公演について書く。
オフ・ブロードウェイ公演については別記事に書いた。
演出はMaria Friedman。
あらすじ
成功した作曲家でプロデューサーのフランクの主催するパーティーに、古くからの友人であるメアリーが訪れる。酔っ払ったメアリーはフランクのことを悪く言い、場の雰囲気を台無しにする。
物語は時を遡ってゆく。
親友だったチャーリーとフランクの決裂、フランクの離婚、ショーの成功と主演女優との浮気、小劇場での上演、フランクの結婚で打ち砕かれたメアリーの片思い。
最後にはフランク、チャーリー、メアリーの3人の出会いの場面で締めくくられる。それは希望に満ち溢れた、もう2度と戻ることのできない日々である。
キャスト
Franklin Shepard Jonathan Groff
Charley Kringas Daniel Radcliffe
Mary Flynn Lindsay Mendez
Gussie Carnegie Krystal Joy Brown
Joe Josephson Reg Rogers
Beth Shepard Katie Rose Clarke
Frank Jr. Max Rackenberg
Scotty / Mrs. Spencer / Auditionee #1 Sherz Aletaha
Mimi from Paramount / Make-Up Artist Maya Boyd
Claudia / Newscaster / Auditionee #2 Leana Rae Concepcion
Tyler Corey Mach
Meg Kincaid Talia Simone Robinson
Dory / Evelyn / Pianist Jamila Sabares-Klemm
Bunker / Newscaster / Photographer Brian Sears
Greg from Paramount Evan Alexander Smith
Ru / Reverend Christian Strange
Jerome Vishal Vaidya
KT Amanda Rose
Terry / Mr. Spencer Jacob Keith Watson
感想
2021年の日本公演、2022年のオフ・ブロードウェイ公演と観てきて、今回2024年にブロードウェイ公演を観るという幸運に恵まれました。箱の大きさとしては「オフ<日本<オン」という順でしたが、舞台装置は驚くくらいほぼ同じでした。オフからオンに移行して変更された点としては、Gussieのショーシーンの照明がやや豪華になったのと、背景の窓の向こうの景色が変わるようになったことくらいかなと思います。
オーケストラが舞台下手上部にある小部屋内にいて、下手に階段、背景に窓、上手と2階に緑がある構造はずっと同じでした。
▼開演前
▼PR
▼CBSでの特集
このプロダクションは演出の妙というよりも、役者の魅力で持っているというのが個人的な感想です。特にマリア・フリードマンの演出が良くないと言っているわけではないのですが、この演出だからこそ付与された新たな作品の魅力というのははっきりしないです。やはり主演の3人、特にFranklin役のジョナサン・グロフの好演が大きなキャッチとなっています。
ジョナサン・グロフは『Spring Awakening』『Hamilton』に続いてのブロードウェイ出演。今回は、天才的な作曲家でキャリアの上では大成功を収めながらも私生活は荒んでいくキャラクターを演じていますが、完全に天狗になっている冒頭から、時系列を遡るに従って徐々に純粋に芸術を志す輝きを放っていく様子は見事でした。(個人的にはこの役でジョナサンにトニーを獲ってほしいと願っています。)
ダニエル・ラドクリフがブロードウェイでミュージカルに出演するのは『How to Suceed in Businees Without Really Trying』再演に引き続きですが、今回はフランクと友情を育む脚本家を演じていますが、見どころは「Franklin Shepard, Inc.」。怒りを込めながら早口でフランクへの思いを暴露するナンバーですが、彼のrenditionはoriginalよりやや遅めのテンポで、個人的にはこのテンポで歌うことで歌詞が確実に観客に届くため良いと思いました。
そして、リンゼイ・メンデスはトニー賞を受賞した『Carousel』での演技のほか、『Wicked』のElphaba役などで有名ですが、今回はフランクに実らない片思いをしながらも友人として彼を健気に支えるライターを演じています。今回も彼女が1幕終盤で歌う「Now You Know」からのsequenceは鳥肌が止まりませんでした。冒頭では酒浸りで荒れに荒れていて、初見の時は「この人、大丈夫かしら」と心配しながら見始めましたが、2幕で初めて彼女のフランクへの想いを知り「Not a Day Goes By」で涙するわけです。時系列を遡っていく様子を表すためか、スカートが徐々に短くなっていく仕様になっていました。
繰り返しこの作品を観ていると、新たな発見が数々あり、ますます魅力にはまっていきました。例えば、冒頭のシーンでフランクが駆け出しのアーティストに「どうしたらあなたのように成功できますか(大意)」のように質問した時のフランクの返答内容(失念)は、物語終盤でチャーリーがフランクに言った言葉そのままだったと判明するなど。
予想通りチケットは高額で一時は800ドル近くまで高騰していましたが、今回はドレスサークル(2階)の4列目くらいのセンターの席で、ボックスオフィスで購入したので手数料なしで200+αで抑えることができました。
▼カーテンコール