ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『How to Dance in Ohio』2023.11.28.20:00 @Belasco Theatre

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『How to Dance in Ohio』とは

2022年にシラキュースで初演され、2023年11月にブロードウェイで初演されたミュージカル。

2015年に公開されたAlexander Shiva監督の同名のドキュメンタリー映画をもとにしている。

作曲はJacob Yandura、作詞・脚本はRebekah Greer Melocik。

振付はMayte Natallio。演出はSammi Cannold。

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あらすじ

オハイオ州コロンバスにある、アミーゴ医師が営むクリニックでは、自閉症スペクトラム障害を持つティーンエイジャーが集い、日々の出来事や日常生活で向き合った「課題(challenge)」を報告し合う会が開かれている。アミーゴ医師の娘アシュリーはケガのためバレエを休み、実家でクリニックを手伝っている。

ドリューは大学に合格したものの実家を出て一人で暮らすことができるか不安な様子。

レミーSNSに自撮りの動画を投稿するのが生きがい。

キャロリンはボーイフレンドと順調だが、その他の男性との会話が思うようにいかない。

トミーはヒーローに憧れている。

キャロリンと仲良しのジェシカはトミーに憧れている。

既に働いているメルは、かつて仲良しだったアシュリーとの距離に戸惑っている。

様々な個性を持つ患者たちは、ミーティングで互いに励まし合い、日々成長している。

そんなミーティングに、部屋で引きこもりがちなマリデスが父に説得され参加することになる。

マリデスは百科事典に書かれているような事柄を覚えるのが得意な一方、大人数と同時に話すなど苦手なこともある。

アミーゴ医師はミーティングの仲間内で、ダンスパーティーを開催することを提案する。

人との距離感をとるのが得意でない患者たちにとって、ダンスは挑戦だった。

患者の親たちも、これまでにない経験をする子どもたちの変化に感動も一入。

噂を聞きつけた記者やブロガーがクリニックに取材を申し込み、アミーゴ医師はダンスパーティーが終わってから記事を出すことを条件に取材を承諾する。

しかし、ブロガーが開催日前に記事を勝手に出してしまい、クリニックには大勢のメディアが押しかけてしまう事態になる。


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キャスト

Remy    Desmond Luis Edwards

Caroline    Amelia Fei

Marideth    Madison Kopec

Drew    Lian Pearce

Mel    Imani Russell

Tommy    Conor Tague

Jessica    Ashley Wool

Terry    Haven Burton

Johanna    Darlesia Cearcy 『Once On This Island』

Kurt/Rick/Hawkins    Carlos L. Encinias

Michael/Derrick    Nick Gaswirth

Amy/Shauna    Melina Kalomas

Dr. Emilio Amigo    Caesar Samayoa 『Dear World』『Come from Away』

Ashley Amigo    Cristina Sastre

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感想

『How to Dance in Ohio』は、実話をもとにした新作ミュージカル。

自閉症スペクトラム障害を持つ7人のティーンエイジャーの役を、実際に同疾患を持つ役者たちが演じています。

患者アドヴォカシーの観点からも重要ですし、観ていて温かい気持ちになる作品なので、ぜひ多くの方々にご覧いただきたいです。

開演前に、観劇の途中で退席したい場合のsafe spaceについてアナウンスされており、自閉症スペクトラム障害を持つ観客に向けた配慮もなされていました。

▼footage


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確かに7人が主人公ではあるのですが、その中心となるアミーゴ医師の親子関係、恋愛(アミーゴ医師の勘違い)のストーリーも多く盛り込まれています。

そのアミーゴ医師も完璧な人間ではなく、失敗をしつつも反省する人間味のあるキャラクターとして描かれ、微笑ましかったです。

ブロードウェイ公演でアミーゴ医師を演じるのはCaesar Samayoaですが、シラキュース公演では『Rent』のオリジナルキャストであるWilson Jermaine Herediaが演じました。

七者七様の個性があるのですが、冒頭の「Today Is」で人物相関図がわかりやすくまとまって提示されていたので、その後のストーリーも追いやすかったです。

▼「Today Is」


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ネオンサインが印象的な照明デザイン。

▼開演前


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ダンスパーティーを前にして、7人はパートナー探し、失恋、過去の友情など、様々な経験をしますが、その過程は時にコミカルに笑いを交えながら描かれていきます。

中でも目覚ましい変化を遂げるのがマリデス。部屋に引きこもりがちで、外出の際はヘッドホンが欠かせなかった彼女がミーティングに参加して徐々に変化し、ドリューとともにダンスパーティーに出かけるまでになったのはとても感動的でした。

▼「Unlikely Animals」


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▼「Drift」


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冒頭の「Today Is」の他「So Much In Common」など複数人でパートに分かれて合唱するナンバーの際は回り舞台が有効に使われていました。

▼「So Much In Common」


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自閉症スペクトラム障害を持つ方々は日々の生活の中でdifficultiesではなくchallengesに立ち向かい、うまく対応する術をここで学ぶのだ」というアミーゴ医師の台詞があるのですが、challengeという言葉に含まれる前向きな姿勢がミーティングのメンバーそれぞれから感じられて良かったです。

自閉症スペクトラム障害の当事者や専門家など、様々な意見に耳を傾けようというクリエイティヴの意気込みを随所で感じました。

▼「Building Momentum」


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▼カーテンコール


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