『The Little Big Thing』とは
2023年ロンドンで初演された、Henry Fraserによる自伝をもとにしたミュージカル。
作曲はNick Butcher、作詞はNick ButcherとTom Ling、脚本はJoe White。
演出はLuke Sheppard。
あらすじ
ヘンリーはラグビーに青春を捧げる青年だったが、不慮の事故で脊髄損傷を患い、車椅子での生活を余儀なくされる。
ヘンリーとその家族、友人たちや医療従事者との関係を描く。
キャスト
Henry Fraser Jonny Amies
Dom Fraser Jordan Benjamin
Surgeon Rebecca Bowden
Tom Fraser Jamie Chatterton
Andrew Fraser Alasdair Harvey
Fran Fraser Linzi Hateley
Henry Fraser Ed Larkin
Katie Gracie McGonigal
Marco Tom Oliver
Dr Graham Malinda Parris
Will Fraser Cleve September
Agnes Amy Trigg
感想
十数年ぶりに訪れたロンドンで最初に観たのはこちらの新作ミュージカル。
脊髄損傷で四肢麻痺となり、現在は画家としても活動しているヘンリー・フレイザーの実体験をもとにした作品です。
▼trailer
▼recording風景
sohoplaceは最近では『Brokeback Mountain』が上演され話題になっていました。
2022年10月に柿落としされたばかりの新しい劇場で、アリーナ型で舞台面積は小さい一方、客席は3階まであるため、縦方向に長い劇場となっています。
この縦方向にひらけた空間を利用したフライングや舞台中央部分のせりあがり、舞台面を使ったプロジェクションが印象的でした。
車椅子を使ったフライングを観たのは初めてだったので少し驚きました。
舞台の四隅からキャストが入退場できるよう、四隅はバリアフリーになっていました。
▼footage
ひたすら悲劇的な物語として描くのではなく、ユーモラスな医療従事者や思春期の男子学生ならではの性の悩みなど笑いも交えながら話が進むため、重くなりすぎず観ることができました。
障害を負い落ち込むヘンリーが、車椅子を自走してリハビリスタッフに勇気づけられるシーンがあったり、ヘンリーの恋の相手であるケイティをはじめ、身体障害を持った役者が出演していたりといった様子も見られました。
上のキャスト一覧にもありますが、主人公のヘンリーは2人1役で演じられます。
脊髄損傷を患う前と後で、ヘンリーを演じる役者は分けられており、後者は次に進みたいと思いつつ、ラグビーが大好きで何もかも思い通りにいっていた頃を引きずり、現状をなかなか受け入れられない複雑な心境を演じます。
ネタバレになってしまうかもしれませんが、ラストで現状を受け入れ、過去の自分と手を取り合い前に進んでいくヘンリーに非常に感動しました。
音楽は本作で初めてミュージカルを手がけた方によるものということですが、どことなくPasek & Paulを感じさせる爽やかでupliftingなナンバーが多く、やはり最近の方だなぁという印象。わるくはなかったです。
タイトル曲なんか、帰り道にみんな口ずさんでいましたし。
ただ率直に書くと、少し長くて中盤だれるので、部分的にカットしてもいいかも、とは思いました。
人気のため公演期間が延長されましたが、この劇場の特性に頼っているところが大きいですし（フライングや舞台へのプロジェクション）、このままブロードウェイにトランスファーするかどうか問われると難しいかと思われます。
でも題材は多くの人の目に触れてほしいものだから、ぜひ頑張ってもらいたいものです。
