『The Hours』とは
2022年3月にフィラデルフィアでコンサート版がプレミア上演され、2022年11月メトロポリタン歌劇場で初演されたオペラ。
原作はマイケル・カニンガムによる小説『めぐりあう時間たち』とそれをもとにしたパラマウントによる映画。
作曲はケヴィン・プッツ Kevin Puts。作詞はグレッグ・ピアース Greg Pierce。
演出はPhelim McDermott。
二幕構成。
あらすじ
1923年のイングランド、リッチモンドに生きるヴァージニア・ウルフ、1949年のロサンゼルスに生きるローラ・ブラウン、20世紀末のニューヨークに生きるクラリッサ・ヴォーンという3人の女性の、ある1日を描く。
ヴァージニアは『ダロウェイ夫人』の冒頭の一節を考えているが、なかなかうまくいかない。
クラリッサは、親友のリチャードの受賞を祝うパーティーの準備をしているが、パートナーのサリーをはじめとした周囲の人々は、AIDSを患い体調のよくないリチャードが出席できないのではないかと心配している。
花を買いに出かけたクラリッサは、花屋のバーバラと会い、束の間、彼女との恋愛を想像し、リチャードを異様に心配するサリーは自分にとって最高のパートナーと言えるのか考える。
ローラは自宅のベッドで『ダロウェイ夫人』の一節を読んでいる。
ローラは夫のダンや息子のリッチーが心配しないように普段通りを装っているが、内心では不安や恐怖で苦しんでいる。
時代も環境も異なる状況に身を置く3人の女性たちが、ここではないどこかに逃れたい願望や自身の中にある恐怖を感じながら物語は進んでいく。
キャスト
Clarissa Vaughan Renée Fleming
Virginia Woolf Joyce DiDonato
Laura Brown Kelli O'Hara
Richard Kyle Ketelsen
Sally Denyce Graves
Julian Atticus Ware
Man Under the Arch/Hotel Clerk John Holiday
Quentin Patrick Scott McDermott
Walter Tony Stevenson
Angelica Lena Josephine Marano
Nelly Eve Gigliotti
Leonard Woolf Sean Panikkar
Kitty/Vanessa Sylvia D'Eramo
Barbara/Mrs. Latch Kathleen Kim
Louis William Burden
Dan Brown Brandon Cedel
Richie Kai Edgar
感想
月曜日に何を観ようかと考えあぐねていたのですが、お友達が強く勧めてくれたことと、ケリー・オハラが出演するというのと、原作の映画に惹かれたことから、こちらのオペラを観ることにしました。
しばらくオンラインで空席状況を観察していたのですが、批評が良かったこともあってか、初日の後から急速に残席が少なくなり始め、前々日くらいに急いでファミリーサークルのチケットを購入しました。
▼trailerです。
客席に入ると、現在時間を示す大きな時計が幕に映し出されていました。
▼一幕前
▼二幕前
私が事前に観ていたのは映画版のみだったのですが、映画だと3人のシーンが交互に出てきて、交差するのは僅かですが、この公演では時代や場所を超えて2人あるいは3人の思いが重なった様子を歌でデュエットや三重唱で表されているのが印象的でした。
3人のディーヴァの共演ということで話題ですが、他に無数のアンサンブルが出演していて、ある時は舞台装置のような役割を果たしていました。
映画を観た時と同じ、閉塞感や陰鬱な感じが音楽で表現されているように感じました。
ローラが出演するシーンでは、背景の音楽は陽気なジャズ調なのにローラ自身が歌うナンバーは全く明るさはなくて陰鬱な感じであり、周りの世界とローラの内面の対比がはっきりと描かれているようでした。
特にローラやクラリッサのシーンは舞台道具が細かく作り込まれていて、最上階からもそれを確認することができました。
映画を観た時と同じで、このオペラを観た後は茫然自失として、少し気持ちが落ち込んでしまったので、精神的に安定している時に
2023年2月、日本でもこちらの公演の映像を日本語字幕付きで映画館で観ることができるようです。