『ニューオーリンズ(1947)』とは
ビリー・ホリデイが出演し歌唱している数少ない映画の一つであり、"サッチモ"ことルイ・アームストロングと共演している。
彼らのほか、バンドメンバーの多くは本人役として出演している。
監督はアーサー・ルービン。
あらすじ
カジノを経営するニックは黒人ミュージシャンたちに慕われており、いつも店は黒人音楽で溢れていた。
ある日、ニックはオペラ歌手を志すミラリーに偶然出会い、たちまち2人は恋に落ちる。
クラシック音楽に囲まれて生きてきたミラリーは、メイドのエンディーに頼み、人目を忍んでニックの店に通い、ブルースやラグタイムに魅了されていった。
しかし、ミラリーの母親、スミス夫人は賭博に関わっているニックを快く思っておらず、さらにクラシック音楽至上主義であることからニックの店を嫌っていた。
ニックをミラリーから引き離すため、手練手管でニックをニューオーリンズから追い出そうと画策する。
そこで、ニックはミラリーと対等に渡り合うため、賭博から足を洗い、音楽業に専念することを決意するのだった。
キャスト
ニック アーテュロ・デ・コルドヴァ
ミラリー・スミス ドロシー・パトリック
グレース マジョリー・ロード
スミス夫人 アイリーン・リッチ
マッカードル大佐 ジョン・アレクサンダー
ヘンリー・ファーバー リチャード・ヘイジマン
ビフ・ルイス ジャック・ランバート
エンディー ビリー・ホリデイ
ウッディ・ハーマン
ズッティ・シングルトン(ドラム)
バーニー・ビガード(クラリネット)
キッド・オリー(トロンボーン)
バッド・スコット(ギター)
レッド・カレンダー(ベース)
ミード・ルクス・ルイス(ピアノ)
マット・カーリー(トランペット)
ホルムブライト嬢 シェリー・ウィンタース(クレジットなし)
感想
初めてこの作品を知った時、サッチモとビリー・ホリデイを同時に堪能できるなんて、なんてお得で素晴らしい作品なんだろうと思いました。
私は彼ら2人しか知りませんでしたが、きっとジャズレコードを集めている方は他のバンドメンバーをご存知の方もいるのかもしれません。
plotは上記の通りで、サッチモやビリー・ホリデイの音楽は主人公2人の恋愛のバックグラウンドミュージックのようになっていて、あくまで脇役です。
しかし、ビリー・ホリデイの切ない歌声やサッチモの天性の陽気さは十分に伝わってきました。
"サッチモ"がSatchel Mouth(カバンの口)からきた言葉だったとは、この作品を見るまで知りませんでした。
Preview Clip: New Orleans (1947, Louis Armstrong, Billie Holiday, Arturo de Córdova)
主人公2人の恋愛は、「ヨーロッパからやってきたクラシック音楽」VS「アメリカで独自の発展を遂げたブラックミュージック」という対立を背景に盛り上がりを見せます。
最終的にはヨーロッパでクラシック音楽のコンサート中にブラックミュージックを演奏し、満場一致ではないけれど拍手喝采、という「アメリカ音楽万歳」のラスト。
今の音楽、特にポップスにはブラックミュージックは不可欠ですが、過去、アメリカでここまでブルースやラグタイムが敬遠されていたというのはあまり知りませんでした。
唯一記憶にあるのは『ヘアスプレー』の中で、ペニーのお母さんが黒人音楽に対して嫌悪感を示していたことくらいでしょうか。
本作には、ブラックミュージックへの敬愛の念が込められているように感じました。
この周辺の音楽の歴史も、ダンスの歴史と合わせて、いつか文献を調べてみたいです。