ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『南太平洋(1958)』South Pacific

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『南太平洋(1958)』とは

1958年のアメリカのミュージカル映画

ジェームズ・ミッチェナーによる1947年の小説「南太平洋物語」を原作にした、1949年の舞台ミュージカル『南太平洋』を映画化したもの。

作曲はリチャード・ロジャース、作詞はオスカー・ハマースタイン2世

監督はジョシュア・ローガン。

あらすじ

舞台は太平洋大戦の最中にある1943年、南太平洋にある島国。

この島の周囲でアメリカ軍は日本軍との攻防を繰り広げていた。

島の土産物売りのブラッディ・メリーは米軍兵から親しまれ、商売上手として知られていた。

従軍看護師のネリーは、島に住むフランス人エミールと恋に落ちる。

エミールは祖国で殺人を犯した過去があると告白するが、それでもネリーの彼への気持ちは変わらなかった。

しかし、エミールがポリネシア人の前妻がいた事実に耐えられず、彼の元を去ってしまう。

一方、海兵隊のケーブル中尉が島に赴任し、ブラッディ・メリーの娘リアットと恋に落ちるが、彼は彼女とは結婚することはできないと告げる。

そんな中、落胆したエミールはケーブル中尉とともに、日本軍の潜む島に命懸けの偵察に向かうことになる。

キャスト(歌唱部分の吹き替え)

エミール   ロッサノ・ブラッツィ(ジョージオ・トッツィ)

ネリー   ミッツィ・ゲイナー

ケーブル中尉   ジョン・カー(ビル・リー)

ルーサー   レイ・ウォルストン

ブラッディ・メリー   ファニア・ホール(ミュリエル・スミス)

リアット   フランス・ニュイエン

ブラケット大尉   ラス・ブラウン

教授   ジャック・ムラニ

感想

ロジャース&ハマースタイン2世による美しい音楽に彩られたミュージカル作品を映画化したものです。

個人的に音楽的な観点でいうとロジャース&ハマースタイン2世の作品の中で最高傑作だと思っています。

▼trailerです


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脚本や構成は元の舞台版にほぼ忠実につくられています。

ミッツィ・ゲイナーの演じる若くて活発なネリーと、ロッサノ・ブラッツィの演じる円熟味を帯びたエミールの相性はとても良く、2人のシーンはとてもロマンティックです。

ミッツィ・ゲイナーにとってこの作品は彼女のキャリアのピークではないかと思います。

彼女は黄金期にミュージカル映画を中心に出演しましたが、他の作品では端役だったり、作品自体が残念な結果に終わってしまったり(彼女個人のパフォーマンスは素晴らしいのに)と、あまり目立たない存在でした。

「I'm in Love with a Wonderful Guy」や「Honey Bun」などの快活さと、エミールとの関係に思い悩む様子と、さまざまなネリーの顔を見事に表現していて、まさにネリーそのものでした。

ブラッディ・メリーを演じたファニタ・ホールは、ブロードウェイ版の同作品でも同役を演じており、そのパフォーマンスに対してトニー賞助演女優賞を受賞しています。

この時、彼女はアフリカ系アメリカ人として初めてのトニー賞受賞者となりました。

ちなみに同じロジャース&ハマースタイン2世による『フラワー・ドラム・ソング』でもブロードウェイ版と映画版ともに出演していて、ロジャース&ハマースタイン2世から直々にオファーされるほどの実力だったということです。

残念ながら本作に出演する頃には年齢に伴う声質の変化のためロジャースから歌唱部分の吹き替えを指示されてしまいましたが、舞台上がりの実力派として脇を固めています。

ラストの家族の画からカメラが引いていって南太平洋の遠景が映し出されるシーンがとても美しく大好きです。

続いてネガティブな点。

このタイトルということもあり、屋外のロケーションでのミュージカルシーンは見事ですが、当時演出として用いられたカラーフィルターのためおかしな印象になってしまっているのは残念です。

このカラーフィルターは原画に後から色付けしたのではなく、カメラのレンズに直接取り付けられていたため、後でフィルター効果を除くというようなことができなかったようなんですね。

現代であればFinal Cut Proで簡単に映像処理できてしまうのでしょうけれども。

また、歌唱部分の吹替がやや不自然なのも残念な点です。

エミール役のロッサノ・ブラッツィの円熟したかっこよさは魅力的なのですが、彼はわりと自然な英語を話しているにも関わらず、歌唱部分の吹替をしたショージオさんはフランス人らしいアクセントを強調した歌い方をしているんです。

エミールという役が母国語がフランス語のため、英語はその影響を受けてフランス訛りがあるはずですが、ロッサノさんはあまりそれを強調していなかったです。

そのため、取ってつけたような歌唱になってしまっていて、そちらに気を取られてせっかくの名曲を楽しみづらいかもしれません。