ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『Porgy and Bess』2019.9.27.20:00 @The Metropolitan Opera House

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『Porgy and Bess』とは

1935年に初演されたオペラ。

作曲はジョージ・ガーシュウィン

原作は、1925年に発表されたエドワード・デュボーズ・ヘイワードによる小説「ポーギー」。

 本来は3幕構成だが、今回観劇したものは2幕構成になっていた。


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あらすじ

海に近いアフリカ系アメリカ人居住区である「なまず横丁」が舞台。

足が不自由で杖をついて歩くポーギーは、密かにベスに想いを寄せている。

ベスの内縁の夫クラウンは殺人事件を起こし逃亡するが、これを機にポーギーはベスとともに暮らすことになる。

暴力的だったクラウンとは対照的なポーギーの優しさにベスは少しずつ心を開く。

ある日、ピクニックに出かけた先でクラウンと再会してしまったベスは、帰宅してすぐに熱を出して寝込んでしまう。

献身的に看病を続けるポーギーに、ベスは愛を誓う。

嫉妬したクラウンはベスのいない間にポーギーの家に忍び込み、ポーギーはクラウンとの取っ組み合いの喧嘩の末に、クラウンを殺してしまう。

取調べを行った警察にはポーギーが犯人とはわからなかったが、調査のため1週間拘留されることになる。

疑いが晴れてポーギーが自宅に戻ってみると、そこにはベスの姿はなかった。

ポーギーのいない間に麻薬の売人であるスポーティン・ライフがベスを唆し、2人でニューヨークに旅立ってしまったのだ。

ポーギーは不自由な足で、はるか遠いニューヨークに向けて、ベスを追っていくのだった。
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キャスト

Porgy    Eric Owens

Bess    Angel Blue

Crown    Alfred Walker

Robbins / Crab Man    Chauncey Packer

Clara    Golds Schultz

Jake    Ryan Speedo Green

Sportin’ Life    Frederick Ballentine

A Detective    Grant Neale

Mingo    Erin Duane Brooks

Lily    Tichina Vaughn

A Policeman    Bobby Mittelstadt

An Undertaker    Damien Geter

Serena    Latonia Moore

Annie    Chanáe Curtis

"Lawyer" Frazier    Arthur Woodley

Jim    Reginald Smith, Jr.

Nelson    Jonathan Tuzo

Peter    Jamez McCorkle

Strawberry Woman    Leah Hawkins

Maria    Denyce Graves

A Coroner    Michael Lewis

Scipio    Neo Randall


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感想

久しぶりのオペラです。

私の初オペラはメットでしたし、メットのオペラは留学時代に学生料金でよく観ていました。

今はあるのかわからないのですが、当時は学生向けに20ドルとか25ドル程度のチケットを出していたんです。

もちろんオーケストラ席にオシャレして行くのも乙ですが、バルコニー席はカジュアルな服装で気軽に行けるので、仕事帰りのサラリーマンだったり若者だったり常連さんだったりで溢れていて、気負わずにオペラを楽しめます。

さて、この作品はガーシュウィン兄弟の手がけたオペラ作品として有名で、きっと一度は作品名を耳にしたことがある人が多いでしょう。

特に作品中の楽曲はスタンダードナンバー化したものが多いです。

例えば「Summertime」や「My Man's Gone Now」など。

▼本公演での「Summertime」


Porgy and Bess: “Summertime”

▼本公演での「My Man's Gone Now」


Porgy and Bess: “My man’s gone now”

これらはアーティストに歌われたり、編曲されて吹奏楽やオーケストラでも演奏されています。

この実にアメリカ的な作品は、もちろんアメリカ人は大好きな作品ですが、なんとメットで上演されるのは約35年ぶりなのだそうです。

▼trailerです。


James Robinson, Eric Owens, and Angel Blue on Porgy and Bess

▼観劇後の感想です。


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素晴らしかったです。

やはりオペラですと、ブロードウェイ作品よりもキャストが非常に多く、木組みの舞台装置も精緻で大掛かりな印象を受けました。

なまず横丁に生きる人々の息遣いが聞こえてくるかのような、非常に細かい演技、演出。

1階部分で魚を売りさばいているかと思えば、2階では赤ん坊をあやす婦人がいて、多種多様な人々の生活が根付いていることが見て取れました。

小さい頃から何度もオーケストラ編曲版を聴いてきたので、耳馴染みのある音楽が次から次へと出てきて、もう没頭して聴き入りました。

本作は英語での上演だったので、字幕はありませんでした。

ドイツ語やイタリア語のオペラですと英語字幕が表示されるので、なんとなくわかるのですが、英語は英語でもオペラ歌唱による英語の発音はなかなか聞き取ることは難しく、キャストの動きで物語の進行を想像して観ていました。

特に印象に残っているのがポーギーを演じた方でした。

朴訥として真摯にベスを思い続けるポーギーを熱演していて、途中で胸が締め付けられて苦しくなってしまったほど。
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小学生の頃に、このオペラの音楽に出会い、あらすじを読んだ時に「なぜベスは、とても親切で一度は好きになったポーギーを捨ててしまうの?」と全く納得できなかった記憶があります。

今でも納得できない面はありますが、それでも少しはわかるようになりました。

このお話はとても悲しいですが、女の弱さを描いているように思います。

ポーギーの優しさに惹かれるのも女だし、クラウンのような圧倒的な男性的パワーに惹かれるのも女なのです。

また、スポーティン・ライフの甘い言葉に負けてしまう、一種の愚かさも女は持っているのです。

夫ジェイクを亡くしたクララはむせび泣くように「My Man's Gone Now」を歌いますが、これも女性の悲しさを象徴的に表している場面です。

このようにはっきり書くと女性蔑視などと言われそうですが、すみません。

そして、そんな女を守るために男は強くありたいと思うわけですが、その中でもポーギーのベスに対する無償の愛は想像をはるかに超えたもので、圧倒されました。