『ホフマン物語(1951)』とは
イギリスで製作されたコミック・オペラ映画。
1881年初演のジャック・オッフェンバックによる同名のオペラを、バレエを交えて映画化したもの。
映画『赤い靴(1948)』の製作陣が集って製作した。
あらすじ
詩人のホフマンはバレリーナのプリマンドンナ、ステラの舞台を観ていた。
ステラはホフマンに宛てて「閉幕後に会いましょう」という手紙を書くが、密かにステラを想っているリンドーフによってその手紙はホフマンの手には渡らなかった。
ホフマンは幕間に、仲間たちに過去の3つの恋愛について語りながら酒を飲んだ。
まるで生きているかのように踊る自動人形のオランピア。
不治の病に冒されたソプラノ歌手アントニア。
それぞれ異なるタイプの女性たちとの恋だったが、いずれもホフマンにとっては愛しい存在だった。
気づいた時にはバレエは終演し、ステラはホフマンを探すが、その時にはホフマンは泥酔しステラが誰か分からなくなっていた。
キャスト(演者/歌手)
ホフマン ロバート・ラウンスヴィル(演者、歌手)
ステラ/オランピア モイラ・シアラー/ドロシー・ボンド(オランピア)
アントニア アン・アイアーズ(演者、歌手)
ジュリエッタ ルドミア・トケリーナ/マーガレッタ・グランディ
リンドーフ/コッペリウス/ダパートゥット/医師ミラクル ロバート・ヘルプマン/ブルース・ダーガベル
ニックラウス パメラ・ブラウン/モニカ・シンクレア
スパランザーニ/フランツ レオニード・マシーン/グラハム・クリフォード
クラインザッハ/コヘンニール フレデリック・アシュトン/マレイ・ディッキー
感想
新型コロナウイルス感染症の流行に伴う自粛期間中、私の心の支えはメトロポリタン歌劇場(Met)が毎日更新していたnight streamingでした。
これは過去にMetで上演した作品の映像を配信するという試みです。
しかも、ドネーションを促してはいますが、基本的に視聴は無料。
この配信で『ホフマン物語』を観て、作品について調べた時に、この映画について知りました。
▼trailerです
The Tales of Hoffmann official HD trailer
この映画はオペラ作品の映画化というより、オペラで用いられている楽曲を使い、さらにバレエを取り入れて、原作のオペラにさらに動きをつけた映画作品という印象でした。
特に自動人形のオランピアのシーンなどは、バレエがよく似合っていて素晴らしかったです。
そのため、演者はバレエ出身者が多く、ホフマンとアントニア以外は歌が吹き替えとなっています。
プロットは原作を尊重したものになっていましたが、大きく違ったのはオランピア→ジュリエッタ→アントニアの順になっていたこと。
印象として、オランピアは幼児性や処女性、アントニアは母性や病的な美しさ、ジュリエッタは妖艶さをそれぞれ象徴していると感じました。
▼有名な「ホフマンの舟歌」として知られているメロディー
The Tales of Hoffmann (1951) - The Tale of Giulietta
バレエを抜きにしても、衣装、セット、舞台を意識した照明、カメラワークなど、随所にデザイン性の高さをうかがわせる雰囲気があり、芸術映画として極めて優れている作品だと思いました。