ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『McNeal』2024.9.13.20:00 @Vivian Beaumont Theatre

f:id:urara1989:20241014160736j:image

 

『McNeal』とは

2024年ブロードウェイで初演されたAyad Akhtarによるプレイ。

一幕構成。

演出はBartlett Sher。

f:id:urara1989:20241014160747j:image

あらすじ

舞台は、そう遠くない未来。

アメリカの著名な小説家Jacob McNealは、末期の肝不全であることを知らされたその日に、自身がノーベル文学賞を受賞したと知らされる。

しかし、Jacobがartificial intelligence: A.I.に異常に執着し、古典作品に準えて小説を書くなどしていることが明かされていく。

また、疎遠な関係性にある息子から、無断で幼少期のエピソードを小説に使ったことについて詰問される。

空想の中で自殺した妻も登場し、彼女のエピソードを勝手に使ったことについても問い詰められる。

ノーベル賞への憧憬や名作を書き続けなければならないというプレッシャーの間で、A.I.への執着心や盗用を許容する傾向を捨てられなかったJacobが描かれる。

f:id:urara1989:20241014160758j:image

キャスト

Jacob McNeal    Robert Downey Jr.

Sahra Grewal    Ruthie Ann Miles

Stephie Banic    Andrea Martin

Dipti    Saisha Talwar

Harlan McNeal    Rafi Gavron

Natasha Brathwaite    Brittany Bellizeare

Francine Blake    Melora Hardin

f:id:urara1989:20241014160817j:image

感想

2024/2025シーズンのブロードウェイ、最初の観劇はリンカーンセンター40周年記念公演の一環で上演された新作のプレイです。ロバート・ダウニー・Jr.は本作でブロードウェイ・デビューを飾り、制作発表時から話題を呼んでいました。

▼footage


www.youtube.com

舞台の時代設定は「The very near future.」とされていますが、まだiPhoneが使われており、会話内容からも、2024年現在からかけ離れた、魔法のような技術だらけの世界ではないと推測でき、実生活から地続きの出来事として捉えることができました。果たしてノーベル賞を受賞できるのか、小説をヒットさせられるのか、不安に苛まれてA.I.に依存していく著名な小説家Jacob McNealが主人公でした。冒頭からiPhoneで「ノーベル文学賞を受賞しそうなのは誰か」とA.I.に尋ねてしまうJacob。ちなみに、この時のA.I.の回答の中に、マーガレット・アトウッドと並んで、村上春樹の名前がありましたが、Jacobの名前は入っておらず、彼は落ち込んでしまいます。

続いて、病院の診察室で末期の肝臓病であることを告知されるJacobですが、同じ時にスウェーデンから国際電話が入り、自身のノーベル文学賞受賞を知らされます。この辺りはコメディタッチで面白かったのですが、物語の後半になるに従って、前半とは対照的に彼の暗部が明かされていきます。

ロバート・ダウニー・Jr .は映像系で有名なスター俳優ということですが(私は彼の映像作品を観たことがないので今度観てみたいです)、舞台経験はあまりないそうで、周りをAndrea MartinやRuthie Ann Milesといった舞台畑で活躍している役者に囲まれていると、発声の仕方からして明らかに違うと感じました。ロバートの発声でも聞き取ることはできたのですが、舞台畑の方々の方が聞き取りやすく、声に演技がより乗っていました。ただ私が観劇したのはプレビュー期間なので、初日には彼の演技がもう少し変わっているのかと思います。

▼作者や演出家、キャストへのインタビュー


www.youtube.com

特に印象深かったのはスタイリッシュな舞台装置。舞台中央にロック画面のiPhoneが置かれ、ライティングが近未来的な雰囲気を醸していました。途中、背景が両サイドに分かれるなど、セット転換も圧巻でした。

f:id:urara1989:20241014160827j:image