ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『Back to the Future: The Musical』2023.12.1.20:00 @Winter Garden Theater

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『Back to the Future』とは

2020年にマンチェスターでプレミア上演され、2021年にウエストエンド、2023年にブロードウェイで初演されたミュージカル。

1985年の同名映画をもとにしている。

作詞・作曲はAlan SilvestriとGlen Ballard、脚本はBob Galeと、いずれも原作映画を手がけた製作陣が担当した。

原作映画に使われた楽曲が一部使われている。(Alan Silvestriによるテーマ曲や、ヒューイ・ルイスによる「The Power of Love」「Back in Time」、その他に「Earth Angel」「Johnny B. Goode」)

今回はブロードウェイ公演を観劇した。

照明デザインはTim Lutkin、Hugh Vanstone、映像デザインはFinn Ross、イリュージョンデザインはChris Fisher。

演出はJohn Rando。

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あらすじ

1985年カリフォルニア州ヒル・ヴァレー。

高校生のマーティはロックスターになるのを夢見て学校のバンドのオーディションを受けるが、落選してしまい、ガールフレンドのジェニファーに励まされる。

家に帰ると、マーティは父ジョージが上司のビフにいじめられているのを目の当たりにする。

真夜中、マーティは友人で科学者のドクと約束していた通り、モールの駐車場に行くと、タイムマシーンとなったデロリアンが完成したと知らされる。

しかし放射線を被曝したことによる障害で、ドクは死にそうになる。

マーティはドクに危険を知らせるため、デロリアンに乗って過去に戻ることを決意する。

1955年にタイムスリップしたマーティは、ドクを探し出し、危険を知らせようとするがドクは聞く耳を持とうとしない。

さらに、この時代ではタイムマシーンの駆動力が手に入らないため、大きな雷のエネルギーを使う必要があるとわかる。

そうしているうちに、父ジョージと母ロレインが出会うきっかけをマーティが偶然奪ってしまう。

雷が落ちるその日までに、ロレインとジョージが恋に落ちてプロムに一緒に行くことができるよう、マーティは奮闘する。

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キャスト

Marty McFly    Casey Likes

"Doc" Brown    Roger Bart

George McFly    Hugh Coles

Loorraine Baines-McFly    Liana Hunt

Goldie WIlson/Marvin Berry    Jelani Remy

Biff Tannen    Nathaniel Hackmann

Jennifer Parker    Hannah Kevitt

Principal Stickland/Mayor Red Thomas    Merritt David Janes

Dave McFly/Slick    Daryl Tofa 『The Outsiders』

Linda McFly    Amber Ardolino

3D    Will Branner

Clock Tower Woman/Spoleswoman    Jonalyn Saxer


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感想(ネタバレあり)

今回の遠征で最後を飾る演目として華やかなこちらの作品を選びました。

映画の面白さをそのままに、客席までせり出した電飾や舞台装置で3Dの迫力も持ち合わせた一大エンターテイメントに仕上がっていました。

▼trailer

Back to the Future - Now Playing on Broadway! - YouTube

▼開演前

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映画で使われたロゴも複数の代表曲も使われているので、やはり原作映画のイメージを強く残す舞台ミュージカルでした。映画版と大きく違っていた点としては、物語の冒頭でドクがタイムマシーンが完成したと報告する時に、映画ではリビアの過激派にドクが攻撃されるのに対し、舞台ミュージカル版では被曝で命を落としそうになる点。(最終的に放射線防護服を着てことなきを得ます。)今日の考え方では変更されて当然だと思います。

そもそもヒット映画シリーズだけあり、ミュージカルとしてどう転んだとしても、原作映画にも関わった製作陣による脚本が仕上がっているから面白いのは間違いありません。

ミュージカルという観点で、この作品で特に良かったと思うのは、時代による音楽の違いを明らかにしていたところ。このお話のひとつの面白みとして、ジェネレーションギャップによる食い違いがあると思います。物語の終盤でマーティがエレキでロックを弾いて会場が引いてしまう場面もあるように、特に音楽はそのギャップが表れやすいので、それぞれの時代で曲調を変えていたのは上手いと思いました。ただ、すでに1985年も遠い過去となっている2023年の観客にとっては、どちらも懐かしい、あるいは歴史がある、と感じてしまうわけですが。

ミュージカルとしてのマイナス点を上げるなら、原作映画の音楽が強烈すぎて、結局ミュージカルのために書かれたオリジナルのナンバーは耳に残りづらかったということ。冒頭に主人公の意思表明的なナンバーである「It's Only a Matter of Time」も原作映画のテーマ曲のメロディーの挿入があり、やはり原作頼りという感じが否めません。(でも、マーティとジェニファーが愛を確かめ合う「Wherever We're Going」やジョージが歌う「My Myopia」は好き。)

Wherever We're Going

Wherever We're Going

  • Olly Dobson & Courtney-Mae Briggs
  • サウンドトラック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

▼「It's Only Matter of Time」


www.youtube.com

舞台装置、照明、映像と最新技術を駆使している一方で、プロムの場面ではシャボン玉が降ってくるなど古典的な(でも壮大な規模)手法が使われていました。

一番圧倒されたのは、やはりデロリアンが時空を超える場面。あのテーマ曲を背景に、実物大のデロリアン、映像、最後はフラッシュで消える様子には鳥肌が立ちました。あれは、照明と映像のデザイナーなどクリエイティヴたちの連携プレイだなと思いましたし、あっぱれです。

最後はマーティとドクを乗せたデロリアンは客席の上まで飛んできて一回転します。凄すぎて少し笑ってしまいました。

ドクの実験室も細部まで作り込まれていました。ドクが発明していることは2023年の時点でも実現していないことばかりなので、それを舞台上で見せるためにイリュージョンが使われていたようです。この作品のイリュージョン・デザイナーのChris Fisherは『Harry Potter and the Cursed Child』にも携わっていたようです。ハリポタほどではありませんが、色々なギミックが使われるのを見るのも興味深かったです。

キャストに関しては、個人的にはロジャー・バート*1を生で観ることができて感無量でした。彼は映画版のドク役であるクリストファー・ロイドとは異なるドク像ではありましたが、彼ならではのshowmanshipで楽しませてくれました。

『Almost Famous』に引き続きブロードウェイで主演を務めたCasey Likesは、期待通りの仕事をしてくれていましたし、ジョージ役のHugh Colesはオタクっぽい雰囲気やニョロニョロしたユニークな身のこなしが面白かったです。

ブロードウェイでは数少ないファミリー・フレンドリーな作品で、家族連れで訪れる方々もいました。今後も子どもとブロードウェイ観劇に行く時、ディズニー作品『The Lion King』と『Aladdin』以外の大きな選択肢となっていくでしょう。

総じて、原作への愛を強く感じる舞台ミュージカル化なので原作ファンにとっては朗報ですし、最近のハリウッド大作の舞台ミュージカル化の流れの中ではうまくまとめている方だと思いました。個人的にはそこまで熱狂したかと言われると……ですが、それは好みの問題なので、気にしないでください。

▼カーテンコール

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▼終演後 「MAKE LIKE A TREE AND GET OUTTA HERE(=さっさとここから消えうせろ)」と緞帳に書かれている(笑)。

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TKTSでオーケストラ後方センターを90+αドルで購入しました。

劇場内にもグッズを売る店はありますがほんの数点しか置かれていなかったので、劇場入り口の向かって右側にある専用の売店の方が豊富な品揃えのようです。ただし、終演後は長蛇の列ができるほど混み合っていたので、時間をずらして行った方が良さそうです。

*1:ロジャー・バートは、映画関係では、ミュージカル映画プロデューサーズ』のカルメン役やディズニー映画『ヘラクレス』のタイトルロールの声優で知られます。