『ヴィナスの接吻(1948)』とは
1948年に公開されたユニバーサル・ピクチャーズによるミュージカル映画。
エフ・アンスティによる1885年の小説『The Tinted Venus』を基にした、1943年にブロードウェイで初演された舞台ミュージカルを映画化したもの。
作曲はクルト・ヴァイル、作詞はオグデン・ナッシュ。脚本はS・J・ペレルマンとオグデン・ナッシュ。
監督はウィリアム・A・セイター。
あらすじ
デパートの経営者であるホイットフィールドは、20万ドルもするヴィナスの彫像を購入し、デパートで披露しようとしている。
そのデパートの店員であるエディーは、彫像を飾られた舞台の幕を調整するよう、ホイットフィールドに指示される。
エディが思いつきで彫像にキスすると、彫像は生命を得て動き出す。
驚くエディに、ヴィナスはエディの運命の人は自分であると語りかけ、エディを追いかける。
彫像がなくなってしまったことに怒ったホイットフィールドは、エディに容疑をかける。
自宅に戻ったエディは、ヴィナスと一緒にいることをガールフレンドのグロリアに気づかれてしまう。
キャスト
エディー ロバート・ウォーカー
ヴィナス アヴァ・ガードナー(歌の吹き替えはアイリーン・ウィルソン)
ジョー ディック・ヘイムズ
モリー イヴ・アーデン
グロリア オルガ・サン・ファン
ホイットフィールド トム・コンウェイ
ケリガン ジェイムズ・フラヴィン
感想
ミュージカルナンバーは数曲のみで、ミュージカル映画とは名ばかりのファンタジー映画。
『三文オペラ』などを手がけたクルト・ヴァイルが舞台ミュージカルのために書いた楽曲はほとんど使われておらず、様々なアーティストによってカヴァーされスタンダードナンバー化した「Speak Low」が憂いを帯びた響きを持って、切ない恋心を表すために印象的に使われています。
▼チェット・ベイカーによる「Speak Low」のカヴァー
アヴァ・ガードナーの美しさはモノクロでも非常に映えて、実際にヴィナスの彫像の化身と見紛うほど。
同時期のバックステージものやシンプルなボーイ・ミーツ・ガールもののミュージカル映画とは一線を画す題材で、どことなく『ザナドゥ(1980)』のもととなった『地上に降りた女神(1947)』に類似しています。
ただそのユニークなテーマをミュージカル映画に落とし込めておらず、かといって単なるファンタジー映画ともいえず、中途半端に終わってしまった感は否めません。