『シンデレラ(1976)』とは
1976年公開のイギリスのミュージカル映画。
音楽は『メリー・ポピンズ』などを手がけたシャーマン兄弟による。
シャーマン兄弟は本作の音楽でアカデミー賞やゴールデングローブ賞などにノミネートされた。
本作を基にした舞台ミュージカルは1984年にウルヴァーハンプトンで初演され、以来イギリスを中心に上演されている。
あらすじ
シンデレラは両親亡き後、継母に引き取られ、召使いとしてつかわれるようになる。
そのつかわれ方はひどく、シンデレラは泣きながら暮らしていた。
ある日、悲しみに暮れているシンデレラの元に、長旅で疲れた旅人が休憩場所を求めにやってくる。
シンデレラは暖炉のそばまで案内するが、実はその旅人は魔法の妖精だった。
継母に呼び出され席を外したシンデレラが戻ってくると、すでに料理の準備は終わっており、妖精はいなくなっていた。
一方、国際情勢のため王子が政略結婚をするよう願う国王は、盛大な舞踏会を城で開く。
しかし、恋愛結婚を望む王子は聞く耳を持たない。
自由な恋愛を許されない身の上を嘆く王子に対して、友人でもある召使いのジョンは女王の側近のキャロラインと恋仲にあったが、身分の違いから結婚は叶わない願いであると悩みを打ち明けるのだった。
王子はそんなジョンにナイトの称号を与え、自分の分までキャロラインと幸せになるよう命じるのだった。
舞踏会には皇女だけではなく近隣の貴族も招かれており、シンデレラの義理の姉たちもその中に含まれていた。
義理の姉たちのためにドレスを繕うのに途方に暮れていたシンデレラのところに、魔法の妖精が再び訪れる。
姉たちのドレスを仕立て上げ、彼らが舞踏会へ発った後、妖精の魔法でシンデレラはたちまち変身するのだった。
キャスト
シンデレラ ジェマ・クレイヴン
エドワード王子 リチャード・チェンバレン
シンデレラの継母 マーガレット・ロックウッド
国王 マイケル・ホーダーン
王妃 ラリー・バウワーズ
国王の母 エディス・エヴァンス
魔法の妖精 アネット・クロスビー
ジョン(王子の召使い) クリストファー・ゲーブル
王子のいとこ ジュリアン・オーチャード
イゾベラ ロザリンド・エアリス
パラティン シェリー・ヒューソン
感想
童話「シンデレラ」を基にした作品といえば、やはりディズニーによるアニメ映画が世間では広く知られていますし、ミュージカルではリチャード・ロジャースとオスカー・ハマースタインⅡ世が音楽を手がけた舞台もあります。
後者はテレビ放送向けに映像化され、その際はジュリー・アンドリュースが主演しました。(日本ではDVD未発売)
本作はそのいずれとも異なり、音楽はシャーマン兄弟がこの映画のために新たに書き下ろしたものとなっています。
実際にオーストリアの城を使って撮影しており、豪華絢爛な雰囲気を楽しめるので、個人的にはBlurayの画質で鑑賞されることを強くお勧めします。
↓trailerです。
本作とそれまでの作品の大きな違いとしては、シンデレラだけでなく、王子や魔法の妖精の視線にも立って描かれていること。
特に王子が王家のしがらみに縛られる苦しさや平民の暮らしへの憧れを自ら吐露する場面は新鮮でした。
見方によっては、「王子の結婚物語」とでもネーミングしたくなるようなplotでした。
また、ネタバレになってしまうのですが。
ラストでガラスの靴がぴったり合ってハッピーエンド、というように本作は簡単には終わりません。
シンデレラと王子は再び出会い永遠を誓いますが、戦争を恐れた国王は王子に政略結婚を望んでおり、なんとシンデレラと王子はまた引き裂かれてしまうのです。
この場面でシンデレラが歌う「Tell Him Anything (But Not That I Love Him)」は泣かせる一曲です。
キャストは明らかに歌唱力では選ばれていないので、舞台ミュージカル的歌唱を期待されない方がいいかと思います。
主演のジェマの声はやはり可憐でか弱いのですが、それがかえって幸薄い雰囲気を醸しており、役柄には合っていたのかなと私は感じました。
ただ、王子の愛を勝ち得て継母の前に現れた時の「ザマアミロ」とでもいうようなあからさまな表情には正直白けてしまいました。
やっぱりシンデレラには小公女のような純粋無垢さを期待してしまうものですから。
↓舞踏会に向かうシンデレラが歌う「Suddenly」
また、「Position and Positioning」は群舞が見事で、何度も見たくなるミュージカルシーンでした。
liveの舞台で観たら失敗しやしないかとヒヤヒヤする、このようなアクロバティックなダンスシーンも、映画だと安心して観られます(笑。
最後に、カーテンコールのようなラストも粋で、舞台を見終わったような気持ちになりました。