『鴛鴦歌合戦(1939)』とは
1939の日本の時代劇ミュージカル映画。
ドイツのミュージカル映画『ガソリン・ボーイ三人組(1930)』を基にしている。
作詞は島田磬也、作曲は大久保徳二郎。
監督はマキノ正博。
あらすじ
浪人・浅井禮三郎と傘屋の娘・お春は互いに思い合っていたが、素直になることができずにいる。
そこに、浅井をめぐり、街で人気のお富や、浅井との古くからの許嫁である藤尾が現れ、お春は嫉妬しながらも浅井に惹かれていく。
そんなある日、街でお春を見染めた峯澤丹羽守がなんとかしてお春を妾にしようと、骨董品好きの父親に取り入ろうと策略する。
キャスト
浅井禮三郎 片岡千恵蔵
お春 市川春代
香川屋宗七(おとみの父) 香川良介
志村狂斎(お春の父) 志村喬
遠山満右衛門 遠山満
道具屋六兵衛 尾上華丈
おとみ 服部富子
峯澤丹羽守 ディック・ミネ
藤尾 深水藤子
三吉 小林三夫
感想
プライムビデオで配信されているものを観ました。
以前から邦画のミュージカル映画として名前が挙がることが多かったので気になっていましたが、ようやく観られました。
冒頭から軽快な音楽とともに幕が上がります。
ダンスはほぼなく、歌で会話するスタイルで、タイトル通りまさに歌合戦。
そのためオペレッタ映画と呼ばれている場合もあります。
主演の片岡さんは美しいお顔立ちな上にお声も朗々としていて素敵です。
お春さんの市川さんは愛らしく、歌はやや幼児性を感じさせるような辿々しさもあり、それが不思議な魅力となっていました。
その恋敵であるお富さんの服部さんは割と歌が多めの役柄でしたが、宝塚歌劇団出身というだけあり、歌がお上手でした。
ミュージカルシーンではありませんが、お春さんの父親役を演じた志村さんの憎めない演技が素晴らしいと思いました。
お金に糸目をつけず骨董品を買い漁ってしまうのですが、だらしない父親という印象ではなく、ユーモラスでどうしても憎めないんですよね。
構成や音楽、コメディックな演技など、この年代にしてミュージカルコメディとして非常にレベルの高い映画だと思いました。
ところで、このあらすじに覚えはありませんか。
「傘屋の娘が恋人と金持ちの求婚者との間で思い悩む」
そうです、『シェルブールの雨傘(1964)』です。
実はこの作品と同じく、『シェルブールの雨傘(1964)』も『ガソリン・ボーイ三人組(1930)』を基にして作られているんです。
同じ作品を基にしているのに、製作された年代が違うだけでなく、結末や作風も全く異なるのは非常に興味深いと思いました。
両者は異なるストーリー展開ではありますが、それぞれが和製ミュージカル映画とフランスミュージカル映画の代表作として世に知られており、この脚本のもつ普遍性に驚かされました。
『鴛鴦歌合戦(1939)』Singing Lovebirds @PrimeVideo 傘屋の娘・お春と浪人・礼三郎にまつわる日本のオペレッタ映画。軽快な音楽。音楽多め。骨董品に浪費する父親役の役者さんの憎めない演技が素晴らしい。恋敵に妬いているお春さんがいちいち可愛い。中弛みなく最後まで楽しく観られた。 pic.twitter.com/dXUnMzlwq7
— るん / Lune (@nyny1121) 2021年9月14日
傘屋が登場するミュージカルというと『シェルブールの雨傘(1964)』が連想される。傘屋の娘が好きな相手と金持ちの求婚者との間で思い悩むところは同じ。結末や作風は全く違うけれども。ふと、思っただけ。
— るん / Lune (@nyny1121) 2021年9月14日
R.I.P. Nino Castelnuovo(1936-2021) pic.twitter.com/Gm4o8QjhvY
調べてみると『鴛鴦歌合戦(1939)』と『シェルブールの雨傘(1964)』は、どちらもドイツのミュージカル映画『ガソリン・ボーイ三人組(1930)』をもとにしていることがわかった。どうりで似ているわけだ。
— るん / Lune (@nyny1121) 2021年9月15日
こんなマニアックなこと、誰も興味ないと思うけれど、いま私の心は静かに燃えています😌❤️🔥🔥 pic.twitter.com/R8NcvkhEsL