『ソング・オブ・ノルウェー(1970)』とは
ノルウェーの作曲家グリーグの生涯を描いた、1944年初演の同名オペレッタを映画化したものだが、脚本や音楽は異なっている部分も多い。
オペレッタ同様、グリーグの楽曲に歌詞をつけたナンバーが散りばめられている。
監督はアンドリュー・L・ストーン。
あらすじ
エドヴァルド・グリーグは同じ音楽学校で学んでいたテレース・バーグと付き合っていたが、テレースの父親は無名のグリーグを快く思っていなかった。
エドヴァルドの才能を信じるテレースは、音楽界に顔の通る父親に頼んでエドヴァルドのコンサートを開いたり、著名人に紹介してもらったりと奔走するが、その代わりに二度とエドヴァルドに会ってはならないと約束させられる。
そのおかげでエドヴァルドは知己リカードを得るが、テレースと音信不通になったことを不思議に思う。
リカードは常々、ドイツ音楽に圧倒されている現状を変え、ノルウェー独自の音楽を生み出したいと考えており、エドヴァルドを鼓舞する。
作曲した曲を歌ってもらうため、エドヴァルドとリカードはいとこのニーナの元を訪れ、3人はすっかり仲良くなる。
ニーナは以前から密かにエドヴァルドのことを思っていたが、エドヴァルドはテレースへの思いを断ち切れずにいたものの、最終的にニーナの存在の大きさに気づき結婚を決意する。
そんな折、テレースからこれまでの経緯と旅費を出すのでローマに来てほしいという手紙を受け取るが、エドヴァルドの決意は揺るがなかった。
しかし、仕事はうまくいかず、ピアノ教師をしながら作曲を続けるも、ピアノも買えないほど生活は困窮していた。
ニーナは父親から譲り受けた生家を売り払ったお金でピアノを買い、サプライズプレゼントをしようと考えていた。
エドヴァルドはたまたま出会ったテレースを家に招き、ピアノを持っていないことを知ったてレースはすぐにグランドピアノをプレゼントした。
テレースはエドヴァルドに未練があると感じ取ったニーナだったが、それは妄想に過ぎないとエドヴァルドはあしらう。
その後、ニーナの思いを知ったエドヴァルドとテレースは・・・
キャスト
エドヴァルド・グリーグ トラルフ・モースタッド
ニーナ・グリーグ フローレンス・ヘンダーソン
テレース・バーグ クリスティーナ・ショーリン
リカード・ノードラーク フランク・ポレッタ
エングストランド オスカー・ホモルカ
バーグ氏 ロバート・モーレイ
クロッグスタッド エドワード・G・ロビンソン
ビョルンスティエルネ・ビョルンソン ハリー・スィーコム
感想
『ペール・ギュント』などで知られる作曲家グリーグの生涯を描いた伝記オペレッタ映画です。
ノルウェーの自然溢れる画が印象的で美しく、グリーグの音楽に歌詞がのり、新たな魅力が引き出されているように感じました。
お話は主に同級の裕福なテレース、いとこで旧友のニーナ、音楽の理解者で親友であるリカルドとエドヴァルド・グリーグの関係性を描いています。
▼ニーナ、リカルド、エドヴァルドの3人が親しくなる様子を描いた「Hill of Dreams」
父親の反対でエドヴァルドと交友を断ちながらもずっと思い続け陰ながら支援を続けるテレース。
ずっと憧れていたエドヴァルドと結婚し形見である生家を手放してピアノを買うニーナ。
いずれも切なくなりました。
グリーグの音楽を「ノルウェーの音楽」という視点で聴いたことはなかったのですが、確かに寒々とした厳しい自然に似合う音楽だと感じました。
本作で欠点を敢えて挙げるなら、あまりに自然や風景のカットを挟みすぎていること。
歌詞と関係のある映像を挟んでいるのですが、歌詞の内容そのままを画として見せられると連想する楽しみがなくなってしまうんですよね。
印象的なオープニングはもろに『サウンド・オブ・ミュージック』の影響を受けているのでしょう。
オープニングまではいいのですが、その後も自然のカットを挟み過ぎていると感じました。
キャストでいうとフローレンス・ヘンダーソンの美しさが神々しいです。
あとは、ピアノ演奏のシーンで、一般的には手元を隠したり、手元だけ別人というカットが多いものですが、本作ではおそらく演奏は別撮りでしょうが、手元もある程度は正確に役者が弾いているように見えるので、その点は素晴らしいと感じました。
ノルウェーらしさを感じたのは、「乾杯」が「スコール」だったことと、船上のダンスでしょうか。