『Kiss Me Kate』とは
1948年ブロードウェイ初演のミュージカル。
作曲はコール・ポーター。脚本はサミュエル・スペワックとベラ・スペワックによる。
初演時はトニー賞5部門を受賞した。
今回は2019年のRoundabout groupによるrevival公演について書く。
演出はスコット・エリス。振付はウォレン・カーライル。
あらすじ
次の演目は、シェイクスピアの『じゃじゃ馬ならし』を元にしたミュージカル『キス・ミー・ケイト』。
その公演に、フレッド、フレッドの元妻のリリー、若手女優のロイスらが出演することとなる。
公演初日、フレッドは若手女優ロイスに向けて花束を贈るが、誤ってリリーの元にその花束が届いてしまう。
リリーは花束を受け取って上機嫌だったが、1幕の途中でロイス宛だったことがわかってしまう。
怒ったリリーは幕間で帰ってしまう。
一方、ダンサーのビルと恋仲にあるロイスは、ビルのギャンブル癖に頭を悩ませていた。
果たしてショーは無事に最後まで上演できるのだろうか。
キャスト
Lili Vanessi/Katherine Kelli O'hara
Fred Graham/Petruchio Will Chase
Bill Halhoun/Lucentio Corbin Bleu
First Man John Pankow
Harrison Howell Terrence Archie
Louis Lane/Bianca Stephanie Styles
Hattie Adrienne Walker
感想
今年初のブロードウェイ遠征に行ってまいりました。
到着日に観劇した、こちらの作品からレビューしていきます。
この作品はコール・ポーターの代表作であり、主演のケリー・オハラの歌声を楽しみたいということから選びました。
メザニン最後列センターでしたが、時差ボケも吹き飛ぶ迫力のあるダンスシークエンス、美声、演技を楽しめました。
▼本公演のtrailer
Kiss Me, Kate - Montage - Roundabout Theatre Company
作品は映画にもなっており、日本でも最近では松平健さんと一路真輝さん主演で公演されているので、ご存知の方も多いでしょう。
劇中劇としてシェイクスピアの「じゃじゃ馬ならし」が演じられている舞台の表と裏で、元夫婦や恋人たちの悲喜こもごも描いたミュージカルです。
このプロダクションは2019年のトニー賞で、リバイバル作品賞、主演女優賞(Kelli O'hara)、振付賞(Warren Carlyle)でノミネートされています。
▼観劇後の感想です。
『Kiss Me Kate』観劇後。前回revivalよりは控えめのorchestration。Kelly O’Haraの美声が響き渡っていた。やはり優等生的でI Hate Menも優雅。でもオペラ的歌唱は抜群。Too Darn Hotなど半ばのダンスの盛り上がりがすごくて、ややショーが中断したほど。タップ好きな私にとってはたまらなかった!
— るん / Lune (@nyny1121) 2019年5月2日
今まで『Light in the Piazza』や『South Pacific』『The King and I』などで正統派ヒロインを数多く演じてきたケリー・オハラですが、本作では元夫と共演することとなったベテラン女優役を演じています。
劇中劇の役どころは男嫌いでやや乱暴な女性で、全くケリー・オハラの清楚なイメージには合わないのですが、なんとか頑張って演じていらっしゃいました。
でもやはり、ケリーが「I Hate Men」を歌っても、歌がうますぎるが故に、優雅な響きに聞こえてしまい、いまいちキャサリン(「じゃじゃ馬ならし」の中の役名)らしくないのですよね。
難しい役どころです。
一方、ケリーの歌う美しい「So In Love」は持ち前のdivaっぷりを存分に発揮しており、私は思わずうっとりと聴き惚れてしまい、自然と涙が流れてきました。
▼Kelli O'haraの歌う「So In Love」
Kelli O'Hara Sings 'So in Love' from KISS ME, KATE
キャストは他に、ハイスクールミュージカルシリーズでおなじみのコービン・ブルーがダンスの腕前を披露しています。
私はコービンと気付かずに観劇していて、ステージドアでも目の前でサインをもらったにも関わらず、トレードマークのアフロヘアーではなかったので全く気付かずじまいで、宿に帰ってから気づきたいそう後悔したのでした。
Kiss Me Kateにハイスクールミュージカルシリーズでおなじみのコービン・ブルーCorbin Bleuが、ビル(ルーセンシオ)役で出演していると全く気づかず、SDでサインをもらった時に「ダンス素晴らしかったです」とシレッとコメントした私を誰かひっぱたいてください。宣材写真にHSM時代の面影がなくて… pic.twitter.com/F1M32psVdg
— るん / Lune (@nyny1121) 2019年5月2日
また、そのコービンの相手役として、本作でブロードウェイデビューを飾ったステファニー・スタイルズは新人ながら「Tom, Dick or Harry」や「Always True To You (In My Fashion)」などの名ナンバーを全うしていました。
残念ながらトニーにノミネートはされませんでしたが、今後に期待大の若手です。
蛇足ですが、ちなみにこちらの役は、元々『Mean Girls』のGretchen役でトニー賞助演女優賞にノミネートされたAshley Parkが演じると報道されていましたが、彼女はおそらく映像系の仕事の方を取ったのでしょう。
それにしても、「Tom, Dick or Harry」で「Dick Dick」のところを腰を振る振り付けにしていて、会場から爆笑が沸き起こっていたのですが、これは「Dick=男性器の隠語」を強調していたからで、私もさすがに失笑してしまいました。
少々下品ではありますが、コール・ポーターも天国で笑っていてくれることを願います。
Warren Carlyleによる振付の最たるものは「Too Darn Hot」で観ることができます。
実際に観劇した際には、「Too Darn Hot」のパフォーマンス後、約1分間くらい拍手が鳴り止まなかったほどの盛り上がりでした。
▼本公演キャストによる「Too Darn Hot」、振付はWarren Carlyleによる。
‘Kiss Me Kate’ cast perform ‘Too Darn Hot’ live
また、私の回ではなかったのですが、別の回では手話を使った上演もされていたようです。
ブロードウェイでも様々な形でバリアフリーが進んでいます。
kiss me kateでつぶやき忘れてましたが
— asayake-dive (@asayake_dive) 2019年5月7日
手話通訳付の上演だった。
手話通訳の方に温かい色のサスライトが当たってて。
人数分が多い会話の時は3人でそれぞれ演じてて。
皆さんの芝居心がまた素晴らしく。
おそらく。セリフなどは確実に暗記してるんだろうなーと。
貴重な体験だった。
改めて、時代によらない、コール・ポーターの音楽性の普遍性に気づかされるとともに、ブロードウェイの魅力がたっぷり詰まった作品であると感じました。
終演後はステージドアへ移動し、ケリーやコービン、ステファニーらキャストさんたちとお話しすることができました。
SDでKelly O’Haraさんとお話できて幸せだった。7月日本での公演を観に行きますって言ったら、「本当に?ありがとう。今日の公演誰が観にきていたと思う?Ken Watanabeよ。」と。映画の宣伝で来ていたのかな?
— るん / Lune (@nyny1121) 2019年5月2日
他の観客の方に聞いたのですが、渡辺謙さんは映画の宣伝で渡米されていたようですね。
いつも遠くから見つめているだけで、お話できたのは今回初めてでしたが、ケリーさんはとても気さくで素敵な方でした。
お疲れのところ、ありがとうございました。
公式サイト:
▼今回の劇場はStudio 54でした。