『カモメに飛ぶことを教えた猫』とは
2019年4月初演の劇団四季によるオリジナルのファミリーミュージカル。
チリの小説家、ルイス・セブルベダによる同名小説を基にしている。
演出は山下純輝。
作曲は宮﨑誠。脚本・作詞は劇団四季企画開発室。
あらすじ
ドイツのハンブルグの港町に暮らすゾルバは、ある夏の日、汚れた波にのまれて行き絶え絶えに横たわるカモメのケンガーに出会う。
「私の卵を食べないで」「ヒナがかえるまで面倒をみて」「ヒナに飛ぶことを教えて」。
ゾルバにそうお願いすると、そのまま息絶えてしまったケンガー。
ゾルバは戸惑いながらも、ケンガーに亡き母の姿を重ね、約束を果たそうと決意する。
“猫がカモメに飛ぶことを教える”。
無謀なことだとみんなが言う中、猫のまとめ役の大佐は「しっぽの契約」を提案する。
それは街中の猫に協力してもらう代わりに、約束を果たせなければしっぽを切られて街を追放されるというもの。
厳しい決まりだが、ケンガーのため、彼女から託された卵のため、ゾルバは誓いを立てる。
仲間の協力を得たゾルバは、早速卵をかえすための方法を探すうちに、長い間卵を体で温めればいいのだと知る。
途中、彼らを憎むチンパンジーのマチアスとネズミたちに邪魔されながらも、なんとか卵を温め続けるゾルバ。
やがて、卵からヒナが生まれる。
ヒナは、幸せになるようにという願いを込めて、"フォルトゥナータ"と名付けられる。
ゾルバたちの愛情を一身に受け、すくすくと成長するフォルトゥナータ。
しかし、困ったことに、自分を猫だと思い込んでしまった彼女はなかなか飛ぼうとしない。
冬が来る前に南に向けて飛び立たなければ、この街の寒さに耐えきれず、フォルトゥナータは死んでしまうだろうと知ったゾルバ。
そこへ、マチアスが現れ、ゾルバのしっぽと交換に飛び方を教えると告げるのだった。
キャスト
フォルトゥナータ 横田栞乃
大佐 志村要
秘書 三宅克典
博士 奥田直樹
ブブリーナ 辻茜
マチアス 町田兼一
ケンガー 光川愛
感想
劇団四季の新作ファミリーミュージカル『カモメに飛ぶことを教えた猫』初日に行ってきました。
観劇早々ですが、レビューを書きたいと思います。
本作はチリの小説家によるドイツのハンブルグを舞台にしたファミリー向けのミュージカルです。
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こころの劇場:カモメに飛ぶことを教えた猫:プロモーションVTR
▼観劇直後の感想です。
『カモメに飛ぶことを教えた猫』観劇終わり。油断してハンカチを用意していなかったら、1幕から涙が止まらず大変なことに。フォルトゥナータが可愛かった。「マーマー」「僕はママじゃないったら」「マーマー」「いやせめてパパ」はさすがに笑う。志村さん以外、知らない若い方だった。
— るん / Lune (@nyny1121) 2019年4月20日
親子愛、仲間愛を描いた心温まるファミリーミュージカル
通りすがりの瀕死のカモメ・ケンガーの願いを受け、卵を守るゾルバと、生まれてきたフォルトゥナータの関係性は、異種でありながら親子というもの。
このことは離婚や再婚、死別など様々な家族形態のある現代を反映したテーマのように感じました。
母カモメであるケンガーが石油で汚染された海に晒され飛べなくなってしまうという、環境問題を提起する内容も含まれており、未来を生きる子どもたちへのメッセージが内包されています。
開演早々、瀕死のケンガーが必死の思いでゾルバに卵を守るように訴えるシーンでは、会場中にすすり泣く声が響きました。
母親の愛は強いです。
ゾルバたち猫の衣装は、『キャッツ』のようなタイツの上からシャツやハーフパンツを着るという形で擬人化していました。
フォルトゥナータが生まれ出るシーンはとても可愛く、会場が歓声や笑い声に包まれました。
フォルトゥナータの発する純粋な言葉、例えば「ママみたいな猫になりたい」とか、そういった言葉が胸に響いて、また涙が。
演出の工夫が見られたのはフォルトゥナータの誕生シーンでしょうか。
どうするのかなと気になっていたのですが、暗転し、影として登場してから、卵をかたどった幕から前転して孵化を表現していました。
また、フォルトゥナータの飛翔シーンも気になっていましたが、結局高台に登り「ママ飛んだよ」の言葉で飛翔を表現していました。
この辺りは、全国公演のため移動の多いカンパニーとして、具体的なフライングシーンは難しいのかなと思いました。
四季のファミリーミュージカルお馴染みの、ラストの「皆さんご一緒に歌いましょう」は今回ありませんでしたが、プログラムにメイン曲の楽譜が付いていたので、今後SIng-Alongもあるかもしれません。
公式サイト: