『ドクターTの5000本の指(1953)』とは
脚本・作詞を絵本作家として有名なドクター・スースが手掛けており、彼が参加した唯一の長編映画作品である。
作曲はフリードリッヒ・ホランダー。
監督はロイ・ローランド。
あらすじ
母子家庭で育つ少年バートは、ピアノ教師ターウィリカー先生についてピアノを学んでいる。
ターウィリカー先生は非常に厳しく、バートはピアノの練習が嫌になってしまう。
そんなバートに母親のエロイーズは先生の指導をよく聞くようにと注意し、バートは母親がターウィリカー先生の催眠術にかかっているのではないかと思ってしまう。
バートは家に来た配管工のザブラドウスキーに助けを求めるが、かえって母親を怒らせてしまう。
退屈なピアノの練習を続けているうちに、バートはシュールな夢の世界に迷い込む。
そこではバートは大きなピアノを前にし、ターウィリカー先生によって練習を強制され、ピアノ以外を演奏する音楽家たちは地下牢に閉じ込められていた。
ターウィリカー先生によって催眠術にかけられたエロイーズは彼の秘書となり、恋人のような雰囲気だった。
母親を救い出したいと願いながら逃げ惑うバートはザブラドウスキーと出会い、束の間の安らぎを得るが、ザブラドウスキーもターウィリカー先生の魔術にかかってしまう。
キャスト
バート・コリンズ トミー・レティグ(歌唱吹き替えはトニー・ブラータ)
エロイーズ・コリンズ メアリー・ヒーリー
ターウィリカー先生 ハンス・コンリード
オーガスト・ザブラドウスキー ピーター・リンド・ヘイズ
感想
ずっと観たかったミュージカル映画で、日本ではDVD化されていないため、米盤DVDを購入して観ました。
ハンス・コンリードが怖いピアノの先生を好演していて、シュールな夢の世界を表した美術デザインが秀逸でした。
▼trailerです。
絵本作家のドクター・スースの影響を受けているのか、美術デザインが漫画的な面白さがありながら幾何学的でシュールさもあり、とても楽しかったです。
主人公の少年は可愛らしく、ピアノが嫌いな演技や憂いを帯びた表情が素晴らしかったです。
彼の歌声は後にレターメンとして活動したトニー・ブラータが演じました。
500人の子どもたち(そのため全員の手の指を合わせると5000本)が巨大なピアノで演奏するシーンは壮観でした。
▼「Get Together Weather」T先生の魔術にかかったエロイーズとザブラドウスキーが一緒に歌い踊るシーン
音楽はアカデミー賞にノミネートされるなど評価されているだけあり、コメディックで興味深かったです。
先生とザブラドウスキーが催眠を掛け合うシーンはサンバ風のメロディーで思わず笑ってしまいました。
あと、地下牢に閉じ込められているピアノ以外の演奏家たちが演奏しながら踊るシーンは圧巻でした。
子ども用のピアノ練習曲のような曲から、聖歌風、クラシック、サンバ、バラードなど、様々なナンバーがあり、サントラも楽しめます。
子どもの頃に観ていたら、あまりにシュールすぎてトラウマになっていたのではないだろうかというようなシーンがたくさんありました。
現代観てもそう感じるのですから、1953年当時の人々の目にはどれだけ斬新に映ったのだろうかと思いました。
実際に、あまりに怖すぎるという理由でプレビューが終わった段階でカットになったシーンもあるのだとか。
▼トラウマになりそうなシーン
アメリカでは評価がとても高いので、日本でもぜひディスク化をご検討いただきたい作品の一つです。