『ジーグフェルド・フォリーズ(1945)』とは
1945年のMGMによるミュージカル映画。
MGMの名作を彩ってきた名優たちを象徴する短編のシーンを寄せ集めた、オムニバス作品となっている。
監督は複数おり、ヴィンセント・ミネリをはじめとする、MGMのミュージカル映画を手がけてきた監督たちがシーンごとに担当している。
実際にジーグフェルド・フォリーズに所属していた経験があるのは、出演者の中でファニー・ブライスのみ。
1947年に開催された第2回カンヌ国際映画祭で最優秀ミュージカルコメディ作品賞を受賞している。
『ジーグフェルド・フォーリーズ』とも。
あらすじ
天国にいるフローレンツ・ジーグフェルドが、生前を懐かしみながら、様々なシーンの構想を練っている。
構想の中で、MGMの代表するスター達による競演が始まる。
キャスト
ルシル・ブレマー
ファニー・ブライス
リナ・ホーン
ジェイムズ・メルトン
ヴィクター・ムーア
レッド・スケルトン
感想
MGMによる映画を彩ってきたスター達のパフォーマンスのアソートメントであり、記念碑的なミュージカル映画です。
それぞれのシーンは各俳優達の長所が前面に出るように構成されています。
MGMといえば黄金期のミュージカル映画が有名ですが、ファニー・ブライスらのコメディも見ものです。
後半のジュディ・ガーランドのシーン、そしてフレッド・アステアとジーン・ケリーの唯一の共演シーンは何度も見てしまいます。
▼trailerです。
本作中のフレッド・アステアのダンスの相手役はジンジャー・ロジャースではなく、ルシル・ブレマーで、2人で踊るパートは2曲ほどあります。
アステア&ロジャースは非常にiconicですが、ブレマーとのダンスも息のあった素晴らしいものになっています。
チャイナタウンの恋模様を描いた「Limehouse Blues」はアステアとブレマーが東洋人風メイクをしていて、現代撮影したら確実に問題視されるシーンになっています。
このアステアの顔は不気味で、このシーンはとても苦手です。
続いて、ジュディ・ガーランドのソロシーン。
本作のジュディはどことなくdreamy eyesをしていて、やや薬物中毒の影も見えはじめているようにも感じますが、まだその魅力は健在です。
ヴィンセント・ミネリ監督とちょうど結婚した頃ですから、レンズを通じてミネリ監督も熱視線を送っていたのでしょうか。
ジュディは今後の出演作に悩む大女優役という設定で、まさに彼女自身と役柄が重なります。
やや演技じみた台詞に始まり、取り巻きの手拍子がspotaneousに起こる、アカペラの独白シーンは見事としかいえません。
▼ジュディ・ガーランド「A Great Lady Has "An Interview"」
Judy Garlard - A great Lady gives 'An Interview' by Vincente Minnelli
そして、本作で最も引用されるシーンとして、アステアとケリーの唯一の共演シーン。
アステアの娘さんが後年語っているのを聞いたことがありますが、「このシーンのアステアはケリーと仲良く踊るというよりは、踊りを競い合っているようにも見えた」ということです。
表には出さずともお互いライバル意識があったのかもしれません。
このシーンのように天国でも2人で踊っているのかもしれませんね。
▼フレッド・アステアとジーン・ケリーの唯一の共演シーン「The Babbitt and the Bromide」
Fred Astaire and Gene Kelly - The Babbitt and the Bromide
映画としては興行成績は良かったのですが、製作費が膨れ上がり、最終的には赤字に終わっています。
キャスト出演費用ももちろんですが、それぞれのシーンごとに衣装、セットなどが必要だったわけですから、当然の結果ともいえます。
本作からは、映画として収益を上げたいという気持ち以上に、それ上回るMGMの意地、底力、エンターテイメントへの愛を感じました。