『オール・ザット・ジャズ(1979)』とは
1979年のミュージカル映画。
監督を務めたボブ・フォッシーの半生が反映されており、彼が実際に映画『Lenny』とブロードウェイミュージカル『シカゴ』を同時期に手がけていた事実が基になっている。
あらすじ
舞台演出家であり振付家のジョー・ギデオンは、ブロードウェイミュージカルの振付を手がけるのと同時並行で、ハリウッド作品の編集も進めていた。
そのワーカホリックな仕事ぶりの裏側で、ヘヴィースモーカーの上にセックスやドラッグ漬けの毎日を送っていた。
別れた妻との間の愛娘ミシェルとの約束もすっぽかす始末。
そんな不摂生な生活のため、体調を崩し、心臓の手術を受けることになる。
生死の狭間で、ギデオンは黄泉の国の天使との対話を通し、自身の人生を振り返っていく。
キャスト
ジョー・ギデオン ロイ・シャイダー
黄泉の国の天使 ジェシカ・ラング
ケイト・ジャガー アン・ラインキング
オードリー・パリス リランド・パーマー
デイビス・ニューマン クリフ・ゴーマン
オコナー・フロッド ヴェン・ファリーン
ミシェル・ギデオン エリザベート・フォルディ
ジョシュア・ペン マックス・ライト
ルーカス ジョン・リスゴー
感想
晩年間近のボブ・フォッシーが、その身を削って製作した遺言のようなミュージカル映画です。
ミュージカルというと舞台関係のテーマを扱った作品が多いですが、本作はその中でも異彩を放っています。
死期が迫るギデオンの夢や想像の世界と現実の世界が織り交ぜられていて、最初状況をつかむのに少し時間がかかりました。
どこからともなく黄泉の国の天使が登場したり、映画編集作業中も、スタンダップコメディアンの語るキュブラー・ロスの「死への四段階」のシーンが何度も登場したりといったシーンは、内心、死への恐れに揺れるギデオンを象徴しています。
「死」とは対照的に、入院中のギデオンはナースにちょっかいを出すなど、相変わらず血気盛んな様子がユーモラスに明るく描かれていて、どうしてもこのギデオンという男を嫌いになれないのです。
また、そのようなシーンがあるかと思えば、シリアスな数字だらけのショービズの姿も描かれています。
▼trailerです。
音楽は既存の音楽が用いられていますが、一つ一つにショービジネスへの賛辞を感じます。
アン・ラインキングは、実生活でもボブ・フォッシーと愛人関係にあった女優です。
元妻のオードリーはおそらくグウェン・ヴァードンのことなのでしょう。
グウェン・ヴァードンは最終的には離婚しましたが、離婚後もフォッシーの最期に付き添っていたことで知られます。
ギデオンは再婚しない理由について、「もうこれ以上、結婚をして周りの人を傷つけたくない」と語っています。
これはグウェン・ヴァードンに対する申し訳なさ、感謝、愛なのかなと思いました。
この作品を観ると、いつも号泣してしまうのが、エセル・マーマンの歌う「ショウほど素敵な商売はない」が流れるエンドロールです。
このラストを観てこそ「ああ、フォッシーは本当にショービズを愛していたんだなぁと、そしてショービズに愛された人だったなぁ」と心にジンと感じ入るのです。