『20世紀号に乗って』とは
1978年にブロードウェイで初演されたミュージカル。
原作は1930年代の戯曲であり、1934年に映画化されている(ミュージカル映画ではない)。
作曲は『シティ・オブ・エンジェルス』などで知られるCy Colemanによるもの。
最近では2015年にクリスティン・チェノウェスとピーター・ギャラガー主演で再演された。
あらすじ
世界恐慌を脱し、人々が再び活力を取り戻し始めた1930年代初頭のアメリカ。
ブロードウェイの劇場街にも活気がみなぎり、そのネオンは人々を惹きつけている。
一方、バックステージでは、一攫千金を夢見る興行師たちが権謀術数の限りを尽くし、しのぎを削りあっていた。
舞台演出家兼プロデューサーのオスカー・ジャフィもその一人。
華麗で非情、そして誇大妄想気味の彼は、かつてはブロードウェイの花形だったが、今ではヒット作に恵まれず、破産の憂き目にあっている。
シカゴでの公演も失敗に終わり、借金取りに追われるオスカーは、雲隠れするほか手立てがなかった。
そんなオスカーは腹心の部下、オリバーとオーエンに突如指令を出す。
“特急20世紀号の特別室Aを取れ!”。
シカゴとニューヨークを16時間で結ぶ20世紀号は、世界一と謳われる豪華客室を備えたアメリカが誇る特急列車である。
オリバーとオーエンはどうにか先客を追い出し、特別室Aを確保。
3人を乗せた20世紀号はニューヨークを目指して走り出す。
やがて、隣の特別室Bにハリウッドを代表する女優リリー・ガーランドが、恋人のブルース・グラニットを伴って乗り込んでくる。
偶然を装うオスカーだが、実は全て、彼女がこの汽車に乗るという情報を掴んだオスカーの目論見通りだった。
オスカーがその才能を見出して育て上げ、今や銀幕の大スターとなったリリー。
かつての恋人でもある彼女を再び自らの舞台に立たせることが、オスカーに残された、不運な今の状況を打破する唯一の道だった。
オスカーは執拗にリリーを口説くが、彼女が説得に応じることはなかった。絶望の淵に立たされるオスカー。
そこに朗報が舞い込む。
なんと乗客の老婦人レティシア・プリムローズがオスカーの芝居のスポンサーに名乗り出たのだ。
あとは計画を遂行するのみ。
はたして彼は、20世紀号がニューヨーク、グランド・セントラル駅へ到着するまでに、リリーに出演を承諾させることができるのか。
そして、オスカーとリリー、2人の恋の行方は。
キャスト
オスカー・ジャフィ 望海風斗
リリー・ガーランド 真彩希帆
ブルース・グラニット 彩風咲奈
フラナガン 彩凪翔
オーエン・オマリー 朝美絢
ドクター・ジョンソン 久城あす
アグネス 千風カレン
イメルダ・ソーントン 沙月愛奈
グローバー・ロックウッド 透真かずき
オリバー・ウェッブ 真那春人
マックス・ジェイコブス 縣千
レティシア・プリムローズ 京三紗
ヒラリー 朝月希加
感想
先日、おそらく約10年ぶりに宝塚歌劇団の公演を観劇してきました。
前回観たのは瀬奈じゅんさんがトップの時の『グレートギャツビー』だったので、多分そのくらい経ちますよね。
私は四季の会会員ではあるのですが、宝塚の友の会には入会していないので、宝塚の公演はなかなかチケットを取ることができなかったり、時期を逃していたんです。
今回は、去年観劇した『シティ・オブ・エンジェルス』(この時の演出はひどかったけれど作品自体は好き)の作曲家Cy Colemanの手がけた別作品ということで、「何としても全幕通してscoreを聴きたい!」と思い観劇に至りました。
本作は、シカゴからニューヨークまでの列車の中で次から次へと繰り広げられるコメディ。
終始笑いが止まりませんでした。
早速、この作品のオリジナルキャストによるパフォーマンスの動画です。
▼オリジナルのブロードウェイキャストによるトニー賞授賞式でのパフォーマンス
On the Twentieth Century 1978 Tony Awards
2015年の再演は、残念ながら観られなかったのですが、言うまでもなく『ウィキッド』のオリジナルのグリンダとして知られるチェノウェスのどハマり役でしたね。
あぁ、返す返すも観たかったです。
▼2015年のブロードウェイリバイバルキャストによるパフォーマンス。リリー・ガーランドを演じたクリスティン・チェノウェスの名演が光る。
ON THE TWENTIETH CENTURY (Broadway) - "Veronique" [FULL PERFORMANCE]
続いて、観劇直後の感想です。
『20世紀号にのって』宝塚雪組公演。Veroniqueはリリーの変貌ぶりと相まってとても魅力的なナンバー。久々の宝塚で、混声と違い低音は薄い印象を受けたけど、役者各々のcomicalな演技が光り3時間と長丁場だったのに楽しめた。OBCRは何度も聴いていたけど、今回やっと本筋を理解できてすっきりした。
— るん / Lune (@nyny1121) 2019年3月23日
望海風斗さんの二枚目兼三枚目、そしてダンディズム、素晴らしかった。 それにも増して真彩希帆さんの可愛らしいリリーはshowmanship を発揮しがいのある役だけれど好演していた。タップの群舞もあり満足。宝塚沼にハマる方のお気持ちを少し理解できた気がする。
— るん / Lune (@nyny1121) 2019年3月23日
そしてこれからお友達とチェコ料理。
これが楽しかったんですよ。
キャストの皆さん、ましてやトップのお2人でさえ、私は何も存じ上げない状態で観劇したのですが、いやぁ、素晴らしかったです。
正直、こういったコメディってアメリカ人の特質というか、なかなか日本人には出せない部分が多いのではないかなと思い込んでいたのですが、いい意味で予想を裏切ってくださいました。
上述の通り、個々のキャストのキャラクターが際立っていたので、長丁場でも胃もたれせずに最後まで観ることができました。
リリーが芋っぽいところから花形スターに変貌を遂げる「ヴェロニク」は見応えがありました。
女声のみなので合唱の壮大さは混声に劣りますが、演技や群舞で見せ場が多く、非常に満足感のある観劇となりました。
ラストは宝塚ならではなのか、劇中曲を編曲したエピローグを聴きながら、ミュージカルの余韻に浸ることができ、幸せでした。
リリー・ガーランドってジュディ・ガーランドが連想されるけれど、この作品は何か暗にハリウッドを皮肉っているのかしら。もう一度作品背景について調べてみたいな。
— るん / Lune (@nyny1121) 2019年3月23日
列車の走行路は、Chicago →Englewood →Toledo →Cleveland →Syracuse →Albany →New York だった。何時間かかるのかな。
主にMGMの作品に出演し、ミュージカル映画黄金期を支えた大女優ジュディ・ガーランド(このブログのトップ画像にもなっている方です。)のことを言っているのかなと思ったのですが、まだよく調べられていません。
そして、一夜明けても興奮は冷めやらなかったのでした。
一夜が明けたけれど、昨日の望海さんと真彩さんが残した感動がいまだに消えない。というかますます強くなっている。
— るん / Lune (@nyny1121) 2019年3月24日
基本代役なしでほぼ毎日あれをこなすって、やっぱり特にトップの方は偉大だわ。自己管理能力。
音楽もliveだったし良かった。
本公演は、特急20世紀号という具体的な乗り物が提示されて、観客は登場人物とともに列車の旅をしながら終点(終幕)まで辿ることになりますが、概して観劇とは、考え方によっては、10000円前後のチケットを購入し、物理的には移動をしないけれど、精神的に移動をし、現実世界では体験できないファンタジーに身を委ねる旅に出ているようなものだなと思いました。