『努力しないで出世する方法(1967)』とは
シェファード・メッドによる1952年の同名本を舞台化した、1961年ブロードウェイ初演の同名のミュージカルを基にしている。
作詞・作曲は『ガイズ&ドールズ』(『野郎どもと女たち』)なども手掛けたフランク・レッサー。
基となった舞台ミュージカルは7部門のトニー賞、ピューリッツァー賞戯曲部門を受賞している。
主演のロバート・モースとルディ・ヴァリーは舞台版でも同役のオリジナルキャストとして出演し、ミシェル・リーもオリジナルキャストではないが同役で出演していた。
振付は舞台版でも手掛けたボブ・フォッシー。
監督はデイヴィッド・スウィフト。
あらすじ
ある日、窓拭き掃除人のフィンチは「How to Succeed in Business(出世する方法)」という本を見つけ、その本に書かれている通りにしてみることに。
フィンチは「World-Wide Wicket Company」に入社し、文書室で働き始めるが、本に書かれている通りにしてみるとあっという間に広告部の副部長になる。
そのうち、フィンチは社内で秘書として働くローズマリーに恋をする。
ローズマリーも彼とのデートを期待するが、仕事優先のフィンチは彼女をなかなかデートに誘い出せない。
社長であるビグリーは愛人であるヘディ・ラルーを優遇して秘書に採用する。
フィンチはビグリーの個人情報を探り、彼に好かれるように立ちふるまう。
一方、ビグリーの甥であるバッドはフィンチのことを気に食わず、ことあるごとにフィンチを陥れようとするが、あの本があるフィンチはその都度危機を乗り越えていく。
キャスト
J・ピエールポント・フィンチ(ポンティ) ロバート・モース
ローズマリー・ピルキントン ミシェル・リー
J・B・ビグリー ルディ・ヴァリー
ヘディ・ラルー モーリーン・アーサー
バート・O・ブラット ジョン・マイヤーズ
ルシル・クラムホルツ キャロル・ウォーシントン
ミス・ジョーンズ ルース・コバート
感想
こちらのミュージカル映画もずっと観たかった作品です。
日本盤は未発売なので輸入盤を購入し、観ることにしました。
▼trailer
How to Succeed in Business Official Trailer #1 - John Myhers Movie (1967) HD
ある本との出会いから、いっかいの窓拭き掃除人から大企業の管理職へと出世していく男の話です。
なんともアメリカ的なサクセスストーリー。
trailerのラストの一言「See it before your boss does!(上司が観る前に観てね!)」が面白いですね。
ブロードウェイミュージカルを映画化したものですが、ミュージカルナンバーの多くがカットされているなど舞台版とは異なる点もいくつかあります。
削除された曲は「Happy to Keep His Dinner Warm」「Love From a Heart of Gold」「Cinderella Darling」「Paris Original」「Coffee Break」です。
特にローズマリーのソロは全カットで、よりフィンチにスポットライトが当てられていた印象でした。
それでは、本作に登場するミュージカルナンバーをいくつか見ていきましょう。
まず、社風を歌った小気味いいナンバー。
▼「Company Way」
How to Succeed in Business Without Really Trying (1967) - The Company Way Scene (2/10) | Movieclips
続いて、ローズマリーとフィンチの心のうちを描いたナンバー「Been a Long Day」。
心の中では色々な考えが巡っているけれど、とりあえず「1日お疲れさま」と言ってしまう恋する2人を表す微笑ましい一曲です。
こちらの曲は後で別のキャストによってリプライズされます。
▼「Been a Long Day」
How to Succeed in Business Without Really Trying (1967) - Been a Long Day Scene (6/10) | Movieclips
本作の大団円ともいえるシーンで歌われるナンバー「Brotherhood of Man」。
これは盛り上がります!!!
スーツ姿のおじさん達に混じって紅一点、それまで歌ってこなかったミス・ジョーンズが高らかに歌い上げるシーンはシビれます。
▼「Brotherhood of Man」
How to Succeed in Business Without Really Trying (1967) - Brotherhood of Man Scene (10/10)
もしかすると、ロバート・モースの演技について「エッジが効きすぎている」と感じられる方がいらっしゃるかもしれません。
おそらく彼は舞台版の雰囲気を大切にしたかったのではないかと思います。
舞台版の初演から映画版主演まで、彼はこの役を全うしたと言っていいのではないでしょうか。
フィンチ役は実はディック・ヴァン・ダイクにも白羽の矢が刺さっていましたが、年齢を理由に自ら辞退したそうです。
確かに彼もこの役が似合いそうな役者ではありますね。
社内の全体的なパステルカラーの可愛い色調やボブ・フォッシーによる独特な振付、ツッコミどころ満載の女性社員など、様々な観点で楽しめる映画でした。
冒頭はあまりにうまくいきすぎて現実味がないと感じましたが、後半では仕事での成功に集中するあまり恋愛が疎かになったり、クビを怖れて自分のミスを隠そうとしたりと、徐々に人間味が出てきたように思いました。
この本が指南しているのは要するに、「出世したければ自分のためでなく会社のためになることをしろ」「どんな役職の人にも(お世辞を交えつつ)意思疎通を図れ」「会社のためであれば自分のクビも惜しまない人物であれ」そんなことではないかと受け取りました。
実は、私はブロードウェイでリバイバルされた舞台版を観ています。
その時、フィンチを演じたのはダニエル・ラドクリフでした。
他にもマシュー・ブロデリックやダレン・クリスらもこの役をブロードウェイで演じています。
▼ダニエル・ラドクリフがフィンチ役を演じた、トニー賞授賞式でのパフォーマンス
How to Succeed in Business Tony Performance
この動画の冒頭で紹介しているのが、この映画の主演でオリジナルキャストのロバート・モースと、1995リバイバル版で主演したマシュー・ブロデリックです。