『ザ・プロム(2020)』とは
2020年に公開されたネットフリックスによるミュージカル映画。
2018年にブロードウェイで初演された舞台ミュージカルを映画化したもの。
脚本はBob MartinとChad Beguelin、作曲はMatthew Skylar、作詞はChad Beguelin。
振付は舞台版で演出・振付を担当したCasey Nicholaw。
監督はライアン・マーフィー。
あらすじ
インディアナ州の高校生エマは、ガールフレンドをプロム(ダンスパーティー)に連れて行きたいと願っているが、PTAが同性のパートナーとのプロムへの出席を許さないため、プロムが中止になってしまった。
このニュースを聞きつけた落ちこぼれのブロードウェイスターたちが、名誉挽回のためエマを助けようとインディアナにやってくる。
キャスト
ディー・ディー・アレン メリル・ストリープ
バリー・グリックマン ジェームズ・コーデン
エマ・ノーラン ジョー・エレン・ペルマン
アリッサ・グリーン アリアナ・デボーズ
トム・ホーキンス キーガン=マイケル・キー
トレント・オリバー アンドリュー・ランネルズ
グリーン夫人 ケリー・ワシントン
感想
2020年12月10日からNetflixで配信が開始されたので、記事をアップしてみようと思います。
日本では12月3日頃から映画館で上映されていたので、私も6回映画館で観ましたが、何度観ても号泣してしまうシーンばかりのミュージカル映画でした。
都内ではまだ上映されている映画館があるようなので、お近くの方はぜひ映画館で観ていただきたい作品です!!
2018年にブロードウェイで初演されましたが、original broadway cast recordingを何度も聴いていて、2019年5月にブロードウェイで観劇した時も最前列で真ん中(指揮者のすぐ後ろ)の席で、大感激して、ずっとこの作品のファンでした。
なので映画化の話が出た時からとても楽しみにしていました。
▼trailerです。
The Prom | Official Trailer | Netflix
個人的に良かったのは最終的なプロムでジェンダー問わず様々なカップルが登場した点。これはBW版の意志を引き継いでいると感じた。映像作品として広い空間を使った演出としてはLove Thy Neighborが一番好みだった。Andrew RannellsがBWの空気をまとっていた唯一のメインだったからかもしれないが。
— るん / Lune (@nyny1121) 2020年12月5日
舞台版で使用された楽曲全てが使われていて一部アレンジが加わっていて良かった。次のシーンへの移行をスムーズにするためかYou HappenedとTonight Belongs to Youの最後がカットされ、元曲を知っている身とすると、もどかしい。Unruly Heartのラストでは上がらず、OBCRとは違った。上がる方が好き。
— るん / Lune (@nyny1121) 2020年12月5日
この他にも「Dance With You」や「Acceptance Song」など一部カットされていたナンバーはありましたが、舞台版のナンバーが全て使用されており、舞台版への敬意を感じさせる構成になっていると個人的には感じました。
「You Happened」は特に好きなナンバーなので、なんとも言えない気持ちになりましたが。
▼original broadway castによる「You Happened」
Broadway Musical "The Prom" Cast Performs "You Happened | The View
▼元の舞台との違いなどはこちらの記事に詳しく書かれています。
10代で家出して以来、母に会っていなかったバリーが過去と向き合い母に会うシーンは舞台版にはなかったと思う。彼の暗い部分を描くことでBarry Is Going to Promという陽気なナンバーがより際立った気がした。ジェームズ・コーデンはミュージカル好きなんだろうけど、彼は司会者が一番似合うと思うよ。
— るん / Lune (@nyny1121) 2020年12月5日
映画版で追加されたバリーが絶縁状態だった母親と再会するシーンは、この物語の中では終始母親と疎遠であるエマが、いつになるかはわからないけれど、いつの日かきっと母親と和解できる日が来るという希望を示唆していると思った。バリーとエマの友情、素敵だな🤍pic.twitter.com/HgeKmqe1aJ
— るん / Lune (@nyny1121) 2020年12月9日
舞台版でほぼ描かれなかったバリーの人となりが映画版では描かれたことで、作品の深みが増したように思いました。
バリーはエマのことを過去の自分のことのように思っていて、彼が母親と再会したことでエマのまだ見ぬ将来への希望が描かれていて腑に落ちました。
気づいたのは、アンジーがエマにフォッシーの振付を交えながら緊張への向き合い方を教えるZazzのシーンでの部屋の配置が、フォッシー監督の映画『All That Jazz(1979)』でEverything Old Is New Againを踊るシーンと同じだということ。もう、一目見た瞬間にビビッときてしまった。#TheProm pic.twitter.com/98y8mgXeLf
— るん / Lune (@nyny1121) 2020年12月5日
▼それがこのシーンです。「Zazz」
Nicole Kidman - ZAZZ Full Performance feat. Jo Ellen Pellman | The Prom
「We Look to You」は、ホーキンス校長がミュージカルオタクの気持ちを代弁してくれるナンバー。この歌詞こそ、私の気持ちそのもの。この校長先生と出会えたらミュージカル談義に花が咲いて、きっと自然に友だちになれると思う。
— るん / Lune (@nyny1121) 2020年12月7日
ブロードウェイ界隈とLGBTQコミュニティは切って離せないほど、演者やファンにはゲイが多いです。
そのため、ディー・ディーはストレートのホーキンス校長が自身のファンだと言ったことに驚いたわけですが、この校長先生のソロナンバーがまさに私のようなミューオタの心を代弁してくれています。
プロムを開くのに経済的に厳しいというシーンの台詞"It’s Mickey and Judy’s time."はミッキー・ルーニーとジュディ・ガーランドが共演したミュージカル映画のように「皆で力を合わせて何かを自前で作り上げよう」ということ。ジュディ・ガーランドはLGBTQのiconでもある🌈 #TheProm pic.twitter.com/BTONoK8sWG
— るん / Lune (@nyny1121) 2020年12月10日
劇場の外に飾られたMerylさんのポスターは映画の内容がわからない仕様になっていたけれど…
— るん / Lune (@nyny1121) 2020年12月5日
観るきっかけがどうであろうと、この映画を観て自身のidentityに悩んでいる人たちのunruly heartが少しでも勇気づけられたら、その時こそこの作品の意義はあると思うので…映像化ありがとう🤍@promnetflix pic.twitter.com/B2GfrYz9Wh
この話はひと昔前のことではなく、2020年の今も起こっていることです。
InstagramやTwitterなどの言葉を使っているのは、このことを強調するためだと思います。
この作品がNetflixを通じて世界中に配信されることで、このミュージカルのメッセージがより多くの人に届くことはとても素晴らしいことだと思います。
ここで書いておきたいのは、インディアナ州に近いアトランタで2016年にプレミア公演され、readingやworkshopの期間も合わせると5年以上の期間を費やし、ようやく2018年にブロードウェイに辿り着いた作品です。
原作の小説を持たない本作をここまで育て上げてきたのは、workshopの段階から関わっていた多くのoriginal broadway castたちやスタッフたちであることを忘れてほしくないと思います。
これから映像として広まるのはこの作品なのでしょう。
でも、やはり私の中でのエマはCaitlin Kinnunenだし、アリッサはIsabelle McCallaなのだと思います、ずっと。
ブロードウェイ公演は映像として公にならないですが、ブロードウェイで観た感動は褪せることはないですし、これからもoriginal broadway castへの感謝を胸に、映画版を観ていきたいと私は思います。
▼ブロードウェイで舞台版を鑑賞した時の記事
▼映画版でエマを演じたジョー・エレン・ペルマンへのインタビュー(11:50〜)
Broadway.com Live! with THE PROM's Jo Ellen Pellman
▼アリッサ役を演じたアリアナ・デボーズへのインタビュー
Show People with Paul Wontorek: Ariana DeBose on THE PROM, WEST SIDE STORY & More
▼舞台版を小説化した本
The prom movie notebook: 110 white lined pages 6 x 9 inches - matte finish
- 作者:Art, Frostmoon
- 発売日: 2020/11/26
- メディア: ペーパーバック