『思い出を売る男』とは
加藤道夫による1幕もののプレイ。
1953年に文学座で初演され、劇団四季では1992年から断続的に上演されている。
演出は浅利慶太。
あらすじ
どこか不思議な雰囲気の漂う薄暗い裏街。
一人の男が古ぼけたサクソフォンを吹いている。
思い出を売ります。美しい音楽に蘇る幸福の夢。公代、思い出に生き給え。思い出は狩の角笛。
彼の奏でる音楽に惹きつけられるように様々な人が現れる。
まだ思い出を持つことがない、無邪気で幼い花売娘。
世間をたくましく、したたかに生きている広告屋。
そして重く暗い影をひきずる街の女。
その女は「巴里の屋根の下」に涙し、サクソフォン吹きの恋人との幸福な思い出を蘇らせる。
男は女に詩を書いてやる。
その後も、故郷に愛しい少女を残してきたG.I.の青年、陽気な乞食も訪れる。
突然、街がざわめきだす。
この界隈の親分、黒マスクのジョオが人を殺し、ピストルを持ったまま逃走しているというのだ。
男の目の前に現れたジョオは、警官の目から逃れるため、男にピストルを突きつけ、上着と帽子を奪い、さらに男のサクソフォンを吹き始める。
そのメロディーは街の女が恋人との思い出の曲だと言って涙を流したあの「巴里の屋根の下」だった。
キャスト
思い出を売る男 近藤真行
花売娘 林香純
街の女 野村玲子
G.I.の青年 佐久間仁
恋人ジェニイ 山本紗衣
乞食 山口嘉三
黒マスクのジョオ 宮川智之
アンサンブル 大島宇三郎、劉毅、東泰久、田邊祐真
シルエットの女 佐田遥香
感想
年末に拝見しました。
劇団四季作品も数多く観てきましたが、こちらは初見でした。
▼trailer
▼観劇後の感想です。
『思い出を売る男』半世紀以上、四季で上演されている演目。美しかった。記憶や感情を呼び起こす音楽。上を見上げると電線が張られ、役者は客席からの登場が多いので、immersive感が強かった。浅利慶太追悼公演ラストということで、終演後に坂本里咲さんがロビーにいらっしゃった。里咲さん素敵♡ pic.twitter.com/zt6BYqt2tS
— るん / Lune (@nyny1121) 2019年12月28日
全く予備知識もないまま観劇しましたが、ラストまでその世界に没入して観ることができました。
客席の頭上には電柱から伸びるライトがかかり、自由劇場がある街角に。
様々な人物がサックス吹きの前に現れ、思い出に浸るのですが、奏でられる音楽はオリジナル曲からアメリカ民謡まで様々。
舞台はシンプルですが、中央に影絵を映し出す装置があり、人々の思い出や懐かしい記憶が浮かび上がるようになっていました。
黒マスクの男の運命を考えながら、戦争で引き裂かれた人々、戦争の無情さに思いを馳せました。