『マイ・シスター・アイリーン(1955)』とは
1955年のミュージカル映画。
1940年の同名のブロードウェイの舞台(ストレートプレイ)を基にしたミュージカル映画。
同じ舞台は1942年に映画化されているが、本作はミュージカル映画として改めてリメイクされている。
舞台はルース・マッケニーの自伝的小説を基にしている。
リチャード・クワイン監督。
あらすじ
ルースとアイリーンのシャーウッド姉妹は、オハイオからはるばるニューヨークに、夢を持ってやってきた。
妹のアイリーンは女優志望で、通り過ぎる誰もが振り返る美人。
一方、姉のルースは小説家志望で、アイリーンの陰に隠れて地味で、てんで男運がない。
2人は道すがら出会ったアポポラスの紹介で、グリニッジヴィレッジにあるワケありの格安ベースメントに暮らすことになる。
アイリーンはオーディションに落ちた帰りに立ち寄ったカフェで、店員のフランクに出会う。
アイリーンに一目惚れしたフランクは、アイリーンに仕事の口利きをしようと申し出るが、同じくアイリーンに好意を寄せるチックに先を越されそうになる。
しかし、その仕事はストリップであることがわかり、アイリーンは激怒する。
ルースは出版社に、事前に送った自身の小説の評価を尋ねるが、編集長は休暇中とそっけなくあしらわれる。
帰りしなに、休暇に出かける編集長のベイカーにたまたま出会い、ルースは一目惚れしてしまう。
ベイカーはルースには才能があるが、題材をもっと身近なものにしろと助言する。
そこでルースは、どんな男も魅了する美女「アイリーン」を主人公にした小説を書いてみると、ベイカーに絶賛される。
「アイリーン」は実在する女性だろうと、ベイカーに図星を突かれると、好きなベイカーの手前、ルースは「アイリーン」は自分自身だと嘘をついてしまうのだった。
キャスト
アイリーン・シャーウッド ジャネット・リー
ルース・シャーウッド ベティ・ギャレット
フランク・リピンコット ボブ・フォッシー
アポポラス("パパ") カート・カズナー
レック・ルーミス ディック・ヨーク
チック・クラーク トミー・ロール
感想
モテる妹と地味な姉という対照的な姉妹を主人公にした、ミュージカルコメディです。
タイトルになっているアイリーンを演じるジャネット・リーの純粋な美しさはもちろんなのですが、本作での白眉はやはりベティ・ギャレットのコメディエンヌ精神にあると思います。
▼trailerです。
My Sister Eileen (1955) ORIGINAL TRAILER [HD 1080p]
実際、ギャレットは美人なのですが、それを敢えて演技によって行き遅れ女性を表現しているという点が流石だなと思うのです。
確かにルースという女性は、自虐的に「男はアイリーンばっかりに夢中で、私になんて寄り付かないのよ」と発言していますが、だからと言って卑屈になっているわけではなく、実に人生に前向きで姉妹仲も良好です。
そのため、特に暗い気持ちになることはありませんでした。
好きな男性の前で意地を張ってしまう可愛らしさや、それがバレてしまった時の取り乱し様など、ギャレットの演技に終始見とれてしまいました。
多くのミュージカル映画に出演しているだけあり、ミュージカルシーンでもボブ・フォッシーと共にキャストを率いています。
▼「Give Me a Band And My Baby」
ジャネット・リーは『バイ・バイ・バーディ』の黒髪のイメージが強いですが(これはオリジナルキャストのチタ・リヴェラを意識したものだと思われます)、本作では自髪のブロンドで出演しており、無意識のコケティッシュさがたまりません。
また、本作はあのボブ・フォッシーが、アイリーンに首ったけのフランク役を演じています。
この役はクワイン監督が元々舞台版で演じていた役でもあります。
今回も彼のダンスシーンは非常に見応えがあり、一見の価値ありです。
ダンスだけでなく、アイリーンに一途になっている演技も非常にチャーミングです。
▼見事なボブ・フォッシーとトミー・ロールによるダンス競演
そして、初めて観た時は「なぜここに?」という印象だったのですが、シリアスな作品に出演することが多いジャック・レモンのミュージカルシーンも意外性がありました。
ルースに迫る、男性らしいナンバーを熱演しています。
さて、作品全体についてですが、ニューヨークのグリニッジヴィレッジと言えば、現在では高級住宅地で映画スターなどがこぞってマンションを買っていますが、一昔前には芸術家たちが多く住む場所として知られていました。
本作とは年代が違いますが、ミュージカル『レント』はこの周辺のお話ですし、同じ芸術家の卵たちを描いた作品です。
ただ、本作は基本的にミュージカルコメディで、徹頭徹尾笑いながら楽しめる作品になっていました。
ミュージカル映画としては、元々はストレートプレイの舞台をミュージカル映画化したということもあり、そこまで曲数は多くないのですが、一つ一つのミュージカルシーンの完成度が非常に高いので、結果的に満足度が高かったです。
それは、ボブ・フォッシーのカリスマ性、ベティ・ギャレットのコメディセンス、スタッフの優秀さによるのかなと思いました。