『Saw the Musical: The Unauthorized Parody』とは
2022年にフィラデルフィアでプレミア上演され、2023年オフ・ブロードウェイで初演されたミュージカル。
ホラー映画『ソウ(2004)』の(非公式)パロディーだが、ホラー要素は少なくコメディタッチになっている。
作詞・作曲はAnthony De AngelisとPatrick Spencer。脚本はZoe Ann Jordan。
演出・振付はStephanie Rosenberg。製作はCooper Jordan。
あらすじ
ゴードンとアダムは気づくと、見知らぬバスルームで片足を鎖で繋がれた状態で閉じ込められていた。
ゴードンは犯人から「制限時間内にアダムを殺さなければ妻子を殺す」と告げられるが、2人とも身動きが取れない。
何とか鎖を外そうとしているうちに、2人は互いに密かに好意を寄せるようになり、ゴードンはアダムを殺して家族のもとに戻るよりも、アダムとともに過ごす未来を妄想するようになる。
キャスト
Gordon / Zepp Danny Durr
Adam / Diana Adam Parbhoo
Amanda /Jigsaw / Alison Morgan Traud
▼開演前
感想
私はホラー全般が大の苦手でして、当然、映画『ソウ』シリーズを観たことはなかったので、おっかなびっくり劇場に向かったのですが、予想とは裏腹、存分に楽しむことができました(にっこり)。
万人向きではありませんが、『Avenue Q』が好きな人は受け入れられる類の作品だと思います。完全にR-18、大人向けです。
実際、公式で発表している通り、『Avenue Q』や『Little Shop of Horrors』へのオマージュを随所で感じました。
▼trailer
原作のあらすじを軽く確認した限りではゴードンとアダムが惹かれ合うことはなさそうなので、本作は二次創作、シッピングなのだろうと思いますが、この2人のツンデレがとても可愛らしく、互いに好きなのに、恋愛している場合じゃないという危機的状況…というコメディに仕上がっていました。
人形や豚の着ぐるみなどの小道具の作りは明らかに雑で、それがかえってこの作品に合っていました。
ゴードンが妄想の中でアダムのことを想う「Filthy Things」は『Avenue Q』の「Fantasies Come True」へのオマージュを感じました。
鍵を見つけるために便器内を手探りするアダムを見ながら、ゴードンは妄想を膨らませてしまうわけですが…(苦笑)
内容はくだらなくて面白すぎるのにメロディーがキャッチーで妙に感動的で忘れられず、困りました。
▼「FIlthy Things」
これ以外にも、アダムがゴードンに向けて「いつか一緒にアップル・ビーに行こう」と歌うナンバーは、『Little Shop of Horrors』の「Somewhere That's Green」を想起させます。
また、腫瘍専門医であるゴードンが身の上を歌うナンバーは曲調の展開が『Little Shop of Horrors』の「Dentist!」を彷彿とさせます。
▼「Onco-la-la-la-logist」
そう、こんな感じでブラックジョークを織り交ぜながら、ラブドールと一緒に明るく踊り出すので、もう笑うしかありません。
以上のとおり、ホラー映画のパロディ、二次創作というだけでなく、ホラー・ミュージカルやクィアの報われない愛を描いたミュージカルへのオマージュも込められた作品になっています。
土曜日23時の回であればソワレ後に行くことができるのでおすすめです。