『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』とは
1997年初演のオフ・ブロードウェイ・ミュージカル。
脚本はジョン・キャメロン・ミッチェル。作詞・作曲はスティーヴン・トラスク。
演出は福山桜子。
あらすじ
全米各地を旅するロック歌手のヘドウィグは、共産主義体制下の東ドイツで生まれた。
アメリカ軍人ルーサーに出会い恋に落ちるまで、ヘドウィグはハンセルという名の男性だった。
母親はルーサーと結婚しアメリカに渡れるよう、彼に自分の名前とパスポートを与え、性別適合手術を受けさせた。
だが手術は失敗し、股間には「怒りの1インチ(アングリー・インチ)」が残された。
2人はアメリカへ渡ったが、ルーサーは最初の結婚記念日の日ヘドウィグのもとを去っていってしまう。
それはベルリンの壁崩壊の日だった。
絶望に暮れるヘドウィグは、昔抱いたロック歌手になる夢を思い起こし、韓国軍兵の妻たちを引連れバンドを結成する。
アルバイトをしながら身を繋いでいたある日、同じくロックスターに憧れる17歳の少年トミーと出会う。
ヘドウィグは彼を誰よりも愛しロックの全てを注ぎ込んだが、とうとう手術痕がばれて別れてしまう。
彼は作った曲をすべて盗んだ挙句ヒットを飛ばし、いまや人気絶頂のロックスターに登りつめていた。
ヘドウィグは自分のバンド「アングリー・インチ」を引きつれトミーの全米コンサートを追いかけながら巡業し、愛を捜し求めていく。
キャスト
ヘドウィグ 浦井健治
イツァーク アヴちゃん(女王蜂)
感想
この作品自体は大好きで、DVDが擦り切れるほど何度も映画版を繰り返し観ていた時期もありました。
今までにも山本耕史さんや森山未來さんらがヘドウィグを演じていたことは知っていましたが、何となく日本人キャストによる公演を避けてきました。
理由は特にありませんが、私の中のヘドウィグ像はジョン・キャメロン・ミッチェルで固定化されており、それ以外は受け入れられないと思ったのです。
2年前のことですが、そのジョン・キャメロン・ミッチェルが来日し、彼(彼女)によるヘドウィグを観ることができ、何か心の中の許容範囲が広がり、他の人のヘドウィグも受け入れられるかなと思い、今回の観劇に至りました。
▼本公演のゲネプロの様子
『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』公開ゲネプロ(浦井健治、女王蜂アヴちゃん)丨エンタステージ
▼観劇直後の感想です。
悪くはないけれど、最高ではなかった。そして、歌詞はやはり原語に限る。こう思ってしまうのは、私のヘドウィグ愛が強すぎるせいかもしれない。ごめんね浦井さん。
— るん / Lune (@nyny1121) 2019年8月31日
みなさんどう思われたのかわかりませんが、私の期待にはかないませんでした。
今年春、『笑う男』で心に傷を負った主人公を熱演していた浦井さん。
だからこそ、もう少し行きすぎなくらいの痛々しさを伴ったヘドウィグを観たかったのです。
イツァークの方は全く存じ上げませんが、ミュージカルをやる気あるのかしらという歌唱でした。
「これはロックミュージカルだからオレ流でいく!」なんてものは通用しませんよ。
初日明けたばかりということもあり、これから深まっていくのかもしれませんが。
脚本には舞台設定は変更可能となっているそうで、今回は初日で閉幕してしまったブロードウェイミュージカル『棺桶ロック』の劇場を借りて、ヘドウィグ一行がコンサートしているという設定になっていました。
舞台上には最初から車が置かれていて、「『ミス・サイゴン』か?」と思わず突っ込みたくなってしまいました。