『コール・ミー・マダム(1953)』とは
1950年にブロードウェイで初演された舞台ミュージカルを映画化したもの。
「ブロードウェイの女王」といわれたエセル・マーマンの映画復帰作としても知られる。
「ホワイト・クリスマス」などを手がけたアーヴィング・バーリンが作詞・作曲を務めた。
監督はウォルター・ラング。
あらすじ
社交界で名をはせるサリー・アダムスは、政界にも通じており、政治の経験はないにも関わらずリヒテンシュタインに外交官として赴任する。
若いジャーナリスト、ケネスもサリーの助役としてお供することに。
リヒテンシュタインの外務大臣、コズモに、サリーは惹かれるようになる。
一方、ケネスはリヒテンシュタインの王女マリアに惹かれる。
リヒテンシュタインが財政的に苦境にいることを知ったサリーは、コズモがサリーに親しくするのは助成金が欲しいからではないかと勘ぐり、コズモから距離を置くようになるが。
キャスト
サリー・アダムス エセル・マーマン
マリア王女 ヴェラ・エレン(歌:キャロル・リチャード)
ペンバートン・マクスウェル ビリー・ド・ウルフ
ヒューゴ王子 ヘルマット・ダンティン
オーガスト・タンティニン ウォルター・スレザック
セバスチャン総理大臣 スティーヴン・ゲレー
感想
エセル・マーマンやドナルド・オコナーが出演しているということで、観てみました。
ブロードウェイキャスト盤で耳にすることの多いエセル・マーマンですが、彼女の映画出演作は少なく、実際に日本で市販されているものはさらに少ない状況です。
本作は歌い踊るマーマンを観られるミュージカル映画である上に、ドナルド・オコナーが後年、自身の最高のパフォーマンスと評したほどの素晴らしいダンスシークエンスを含んでいます。
それらがアーヴィング・バーリンの粋なナンバーに彩られている、奇跡的な良作ミュージカル映画といえるでしょう。
▼trailerです。
▼ドナルド・オコナーの素晴らしいパフォーマンス
Donald O'Connor in Call Me Madam
ナンバーとしては、マーマンとオコナーの2人による掛け合いが楽しいデュエット曲「You're Just In Love」が特に印象的でした。
マーマンの張りのある声は素晴らしいのですが、良くも悪くもどんな歌を歌っても「エセル・マーマン」なのですよね。
特に『アニーよ銃をとれ』の「Falling in Love is Wonderful」などのセンチメンタルな歌は彼女の歌声には不向きだなと感じます。
一方、本作にあるような陽気で粋な歌やラグタイムは彼女向きで、その天性の才能を存分に発揮しています。
ドナルド・オコナーは『雨に唄えば』の「Make ’em Laugh」が有名ですが、本作ではコミカルな道化の顔に加え、ヴェラ・エレンとのしっとりとした見事なダンスデュエットも披露しています。
ヴェラ・エレンとのダンスは中庭で行われ、池の飛び石の上を越えて縦横無尽に繰り広げられますが、この時のヴェラ・エレンのドレスの丈が絶妙で、まるで池の上を飛びながら駆け回っているようにも見える、実に優美なシーンとなっていました。
ヨーロッパの雰囲気あふれる中で、キャリアウーマンのマーマンが恋人との言葉の壁を感じながら、誤解を乗り越えていく様子は、まだ女性の地位が今ほどではなかった時代のミュージカル作品としては、かなり珍しいのではないかと思います。