『屋根の上のヴァイオリン弾き』とは
1964年ブロードウェイ初演のミュージカル。
ロシア領ウクライナのシュテットルに生きるユダヤ教徒の生活を描いている。
タイトルは「屋根の上のヴァイオリン弾きのように、不安定な生活を送りながらも陽気な旋律を奏でるように生活する」様子を表しており、主人公は牛乳屋である。
今回は、日本初演50周年記念公演。
市村正親演じるテヴィエは、過去に森繁久彌、西田敏行らが演じている。
あらすじ
1905年、帝政ロシアの時代、アナテフスカという寒村で酪農を営むテヴィエは信心深くて、楽天家で、25年連れ添っている妻のゴールデには頭が上がらないが、5人の娘たちを可愛がり、貧しいながらも幸せな日々を送っていた。
長女のツァイテル、次女のホーデル、三女のチャヴァ、年頃の娘たちの今の最大の関心事は自分たちの結婚について。
ユダヤの厳格な戒律としきたりにならい、両親の祝福がなければ結婚は許されない。
娘たちの連れてくる結婚相手は、親たちの理想通りにはなかなか行かない。
そんな中、時代の波はユダヤ教徒に厳しくなりつつあった。
キャスト
テヴィエ 市村正親
ゴールデ 鳳蘭
ツァイテル 実咲凜音
ホーデル 神田沙也加
チャヴァ 唯月ふうか
ラザール 今井清隆
モーテル 入野自由
パーチック 広瀬友祐
フョートカ 神田恭兵
感想
開演間際ぎりぎりの到着でしたが、久しぶりの日生劇場に行ってきました。
この作品の舞台版を観るのは初めてです。
今まで何かと予定が入り行けなかったこの作品、やっと観られて幸せでした。
この作品は本当によくユダヤの文化や習慣を丁寧に描いていますね。
玄関のドアの近くにメズーザーが置かれていて、出たり入ったりする時に手を当ててお祈りしていたり。
オープニングの「しきたり〜(Tradition〜)」にあるように、伝統や習慣を大切にするユダヤ教徒たち。
しかし、娘たちはそんな父親を尊敬しながらも、自分たちの愛する相手と人生を共にする選択をします。
最初は反対しながらも最後には娘の幸せを優先するテヴィエに、切なくなりました。
結婚パーティーで男女混合のダンスをしたり、親の選ぶ結婚相手を受け入れなかったり、「時代は変わっているのよ」という娘たち。
子どもは大人の思うようには育ちませんね、いつの時代も。
最後には生まれ故郷を追い立てられてしまうテヴィエですが、お嫁に行っても、どんなに離れても、家族は一つであるというエンディングを迎えられ、切ないながらも希望を持ちながら劇場を去りました。
役者さんはみなさん適役でしたね。
市村さんも久しぶりでしたが、相変わらず芸達者でしたし、鳳蘭さんも肝っ玉母さんでしたし。
娘たちの「マッチメイカー」も可愛らしいながらもしっかりと歌われていました。
ラザールの今井さんもいい味出されていましたが、テヴィエ役も適任かもしれないとお声を聴いて思ってしまいました。
ヴァイオリン弾きさんはfakeでしたが、クラリネット吹きさんは実際に舞台上で演奏されて、いい音色を響かせていました。
オケピはなく、舞台上の丘の下の部分にオケがいました。
派手さはないですが、哀愁漂うメロディアスな旋律とお父さんの悲哀が合い、なんとも言えない余韻を残す作品でした。