ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『Next to Normal』 2009年11月 ★★★★★

今日は、『Next to Normal』。
この作品は、ずいぶん前から、絶対に観たいと強く思っていた作品です。
特に、トニー賞主演女優賞を受賞したAlice Ripleyの迫真の演技を今回、間近で見られたことは、本当に幸運だったなぁと思います。


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まず、作品について。
この『Next to Normal』(ネット上ではN2Nと呼ばれている)は、もともとNYMF(ニューヨーク・ミュージカル・フェスティバル)に出品された作品の一つでした。
その後、オフへ進出し、話題を集めてオンへ上がった作品なんです。
登場人物は、8人と、かなり少人数のミュージカル。
演出は『RENT』と同じ人が担当しているため、どことなく雰囲気は『RENT』っぽかったです。
音楽ジャンル的にも、舞台装置に関しても。
この前のトニーでは、11部門ノミネート3部門受賞でした。
Billy Elliotの独り勝ちのイメージが強いですが、最優秀スコアはこちらが受賞しています。


ストーリーは、息子を亡くしたショックで精神病(双極性障害)を患う母親と、彼女を支える家族たちの物語です。
とても、とても…シリアスです。
題材がシリアスすぎて、ミュージカルに特徴的なコメディ要素がまるでない作品なんです。
なので、実際に生で舞台を観るまで、こういったお話をどうやってミュージカル化するのか予想できない分、楽しみだったんです。
興味を持つきっかけとなったのは、やはりトニー賞授賞式でのパフォーマンスで、歌詞がすごくグサグサ心に刺さってきて、印象に残るものだったこともあって。
これがトニーでのパフォーマンス↓

Next to Normal - Tony Awards 2009

 

朝、助けがなければ起き上がれないほどのことがある?
新聞の死亡記事欄を読んで、故人に嫉妬することがある?
いつ飛び降りるか分からないで絶壁の上で暮らしているようなものよ。
生きながら死んでいるのがどんなものか、あなたにわかるの?

 

…この歌詞を聞いた時、心がすごく痛くなりました。
こんな現実のダークサイドをあえて取り上げて、真っ向から直視するようなミュージカルに、短い観劇史上、私は出会ったことはありませんでした。
そして、実際に舞台を観たいという思いがさらに強くなったのです。


この日は、最初に『ウェスト・サイド・ストーリー』の抽選会に参加して、いつも通りハズれ、少し劇場街を散策してから帰ろうとしていたところでした。
たまたまこの抽選会に遭遇し、締め切りギリギリに参加して、あっけなく最前列席を入手してしまったのです。
劇場は、Booth Theater。Lion King、Junior'sというレストラン、その隣にある劇場でした。


舞台上には、三階建てのセット。
最前列席だと、二階や三階での状況が見づらかったです。
そのことは事前にネットで調べて知っていたのですが、やっぱり舞台全体を観るには最後列の30ドル台の席の方が良かったかな、とも思いました。
赤と青、それらが混ざって紫の鮮やかな照明が印象的でした。


母親役のAlice Ripleyの演技の迫力がすさまじかったです!!!
もう、すさまじい、としか言いようがないんですけど…圧倒されました。
精神を病む母親役を、たとえ演技とはいえ毎日こなすのは、かなり精神的にも疲れるだろうなぁと、俳優さんの体調を心配をしてしまうほど。
彼女の迫真の演技を観るだけでも、お金を払っても観る価値がある作品だと思いました。


最後の最後まで、現実的なお話でした。
病に冒されている母親・妻について気持ちの整理がつかない家族が、様々な葛藤・苦悩がありながらも、徐々に彼女の病を受け入れていく過程。
そして、最終的に見つけた選択。
観終わった後、それぞれの登場人物の気持ちを色々考えてしまいました。
もちろん架空の人物たちですけど、他人ごととは思えなかったので。
家族って、なんだかんだ言って、一番身近なコミュニティで、一番の理解者。
良い時も悪い時も家族で乗り越えていくことの大切さを、改めて感じました。


観劇後、出待ち。
出演者ほぼ全員からサインをもらうことができました(^^)
娘役のJenniferは、『春のめざめ』出身。

 

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亡き息子役のAeronは、来シーズンの『Catch Me, If You Can』に主演することが決まっているとあって、楽屋口から出てきた時のフラッシュがすごかったです。

 

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Alice Ripleyに話しかけることができたことは良い思い出になりました。(but,理解されたかどうかは不明ですが)
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