ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『ドロウジー・シャペロン~よっぱらいの花嫁介添人』 2009年1月 ★★★★☆

  ミュージカルファンの、ミュージカルファンによる、ミュージカルファンのためのミュージカル


ここ数日、成人式やら何やらがドタバタあって、ようやく更新できました(^^;

 

亜門さん演出の『ドロウジー・シャペロン日本初演版を観に、日生劇場まで行ってきました。
英語読みだと、『ドラウズィー・シャーペロ~ン』っていう感じになります。
亜門さん演出の舞台を観るのは、今回がはじめて。
というわけで、初亜門でした(笑)。

 

シャペロンって、もともとヨーロッパの貴族の女性が社交界デビューする時に、付き添う女中みたいな人のことを指していたらしいです。
分子生物学の‘分子シャペロン’という物質も、これと同じ語源ですね。


イメージ 1


この作品を観ようと思ったのは、
まず、演出が亜門さんだったから。
そして、この作品が、カナダ人のミューオタさん方によってつくられたミュージカルだから。
です。

 

なんと、ナレーター・狂言回しの役が、ミュージカルおたく、なんですね。
それも、古き良きブロードウェイ・ミュージカルをこよなく愛するミューオタさん、なんです。
そして、直感しました。
「あ、これ、私じゃん!(笑) これは絶対に面白い!」
こうして、高額なS席を購入するに至りました。
それにしても、S席高すぎます・・・(+_+;


イメージ 2


【ストーリー】
舞台は、マンハッタンのとあるアパートの一室。
その住人で、ミュージカルオタク・椅子の男は、さえない中年男性。
今宵もひとり、お気に入りのミュージカルのLPレコードをかける。
そのレコードは、1928年初演の『ドロウジー・シャペロン』を全幕収録したものだった。
レコードをかけ始めると、部屋は一変し、華やかなミュージカルの世界に。
椅子の男の解説を交えながら、ショーは展開していく。。。


↓これから観劇予定の方は、この先は読まない方が良いかと思われます。。。


【演出・舞台装置】
進行役・椅子の男は、舞台下手側の手前に。
その後ろにキッチンがあったり、中央奥に冷蔵庫があったりしました。
電話は、上手側手前に。
ショーが始まると、壁からベッドが飛び出たり、階段が出てきたり。。。



【全体を通して】★★★★☆

 

ミュージカルやブロードウェイの歴史にまつわるネタが数多く出てきて、私はかなり楽しめました。
もし、そういったことを知らなくても、古き良きブロードウェイの香り漂う音楽と、タップまじりのダンスシーンで、十分に楽しめると思います。

 

今回の出演者の方々については、多種多様!
ミュージカルでなければ、まずありえない顔合わせですよね。
こういったキャスティングができるなんて、亜門さんはミュージカル界だけでなく、様々なアートの分野に目を向けて、可能性を模索していらっしゃるんだな、と感じました。
ブロードウェイでも、短期ですが、有名なシットコムフルハウス』のダニー役でおなじみのボブ・サゲットが、椅子の男役で出演していたりするんです。

 

ヒロインであるジャネット役を、ブロードウェイでは、私の好きなサットン・フォスターが演じていたんですが、この役を、ミュージカル経験の全くない藤原紀香さんにできるのか、正直心配でした。
実際観た感想ですが、歌・ダンス・演技、特にそつなくこなされていました。
マスコミで話題となっていた、例の開脚も、無事に達成。
(サットンにはとても敵わないけれど・・・)

 

一番印象に残った曲は、フィナーレ間際に登場する、りんこさん演じる女性飛行士の歌です。
やっぱり歌唱力は、りんこさんが一番で、最後この曲を聴いて、非常にすっきりしました。

 


 

このミュージカルは、ミュージカルおたく、というか、観客の目線で描かれている作品なので、今までのミュージカルとは、一味違った面白みがありました。
まさに、「ミュージカルファンの、ミュージカルファンによる、ミュージカルファンのためのミュージカル」という感じでしょうか。

 

冒頭から、小堺さん演じる椅子の男が話す言葉ひとつひとつに、私は前傾姿勢になりながら、
「わかるわかる、その気持ち!」と、うなずきっぱなしでした。

 

椅子の男の言葉のなかに、
「つらい現実から束の間の逃避をしたくて劇場に行っているのに、どうして悲劇を観なければならないのでしょう?心温まるお話と、ちょっと耳に残る音楽があれば、それで十分なのに。」
というようなものがありました。
この言葉には、大きくうなずいてしまいました。

 

私は、ウエストエンド発の『レミゼ』『ミス・サイゴン』といったような、ミュージカル・トラジェディも、もちろん好きなのですが、
やはり、どちらかと言うと、洒落た音楽で、何も考えなくても楽しめるブロードウェイのミュージカル・コメディの方が好きなんです。
だから、彼の言わんとしていることが、よくわかりました。

 

最後には、彼が独り身のミュージカル大好き人間になった理由がわかるんですけれど、
そこでは、思いがけず泣きそうになりました。


最後に、ブログラム↓
たいてい、ミュージカルのプログラムって、値段の割に、内容が貧弱なものが多いんですが、
今回のは、劇中に出てくるミュージカルネタの解説がついているので、私は結構満足しています。
特に、安倍寧さんの文章が興味深いです。
プログラムを買って満足したのは、久々のことです。
イメージ 3



【主なキャスト】
ジャネット・ヴァン・デ・グラーフ(ブロードウェイのスター、まさかの寿退職?!)…藤原紀香
ドロウジー・シャペロン(お酒大好きな花嫁介添人)…木の実ナナ
ジョージ(花婿介添人)…川平慈英
ロバート(花婿)…なだぎ武
アルドルフォ(ラテンのジゴロ)…梅垣義明
トリックス・ジ・アビアトリックス(レズの女性飛行士)…浦嶋りんこ
キティ(プロデューサーの愛人、悪声の役)…瀬戸カトリーヌ
菓子職人(ギャングの二人組)…テツandトモ
執事アンダーリング(トッテンデール夫人にお仕えしている)…小松政夫
フェルドジーグ(プロデューサー、巨星ジーグフェルドをもじっているのは一目瞭然ww)…尾藤イサオ
トッテンデール夫人(結婚式の主催者、もう可愛すぎます♡ )…中村メイコ
椅子の男…小堺一機


【基本データ】
会場…日生劇場
観劇料…12600円(S席)
上演時間…約1時間45分(休憩なし)


演出…宮本亜門