ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『レント(2005)』Rent

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『レント』とは

1996年オフブロードウェイ初演の同名ミュージカルを映画化したもの。

元々の舞台は、プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』を元に、パリからニューヨークに設定を変え、若い芸術家たちの群像劇を描いている。

ジョナサン・ラーソンという一人のミュージカル作家により、構想立案、作詞、作曲まで行われた。

彼はブロードウェイプレビュー公演初日に35歳の若さで急逝している。

映画版では、ミミ(妊娠のため辞退)とジョアン(年齢のため辞退)以外、オリジナルキャストが演じている。

あらすじ

1989年12月24日から1年間のニューヨーク・イーストヴィレッジが舞台。元ロックミュージシャンのロジャーとルームメイトで自称映像作家のマークは、スクウォッターハウス化した倉庫ビルを占拠してボヘミアン的な生活を送っているが、ビルのオーナーのベニーから滞納している家賃(rent)を払うか退去するよう求められる。彼らを中心に、ゴーゴーダンサーのミミ、ニューヨーク大学講師でハッカーのコリンズ、ストリートドラマーでドラッグクイーンのエンジェル、アングラパフォーマーのモーリーン、ハーバード大卒の弁護士ジョアンらが、貧困と病魔に苛まれる日々の中に愛と生きることの喜びを見出していく。

キャスト

マーク(straight) アンソニー・ラップ

ロジャー(HIV+,straight) アダム・パスカル

コリンズ(HIV+,gay) ジェシー・L・マーティン

エンジェル(HIV+,gay) ウィルソン・ジャーメイン・ヘレディア

ミミ(HIV+,straight) ロザリオ・ドーソン

ベニー(straight) テイ・ディグス

ジョアン(lesbian) トレイシー・トムズ

モーリーン(bisexual) イディナ・メンゼル

感想

大好きな作品で、呆れるほど何回も見ています。

舞台版はセリフがほとんどなく、全て歌という、オペレッタ形式ですが、映画ではVoice Mailをはじめ、部分的に歌なしでセリフのみにしています。

また、冒頭に作品のテーマ的な代表曲「Seasons of Love」が歌われますが、舞台では二幕の冒頭に歌われるなどの違いがあります。

「Seasons of Love」は、ホリデーシーズンに街中でもよくかかるようになりましたね。

さあ、あなたは一年をどのように数えますか。


Seasons of Love (HD)

芸術家の肖像、ニューヨークで夢を追うこと、友情、異性愛、同性愛、両性愛、貧困、不治の病、仲間割れ、友人の死、日々を大切に生きること・・・

『レント』にはそういった多くのテーマがあり、何度見ても、その時その時の悩みを抱えている心に響きます。

また、ラーソンによる歌詞は韻を踏んでいたり、一つ一つ味わい深いです。

rentとは、家賃の意味ですが、元々はrendの過去形・過去分詞形です。

タイトル曲の最後の「Because everything is rent」は「すべては借りられたもの」つまり「すべては神様のもの(神様からの借り物)」と理解できます。

エンジェルが、ベニーの飼っているエビータという秋田犬を始末するエピソードも、非常に興味深いです。

Akita, Evitaと韻を踏んでいるだけではないのです。

1990年当時のブロードウェイ界隈は、アンドリュー・ロイドウェバーの『エビータ』をはじめとしたロンドンのウェストエンドの作品が劇場街を占め、ブロードウェイオリジナルの作品は下火でした。

ラーソンはそういった状況を憂い、ブロードウェイのかつての活気を取り戻して欲しいと思い、「エビータを始末した」のです。

余談ですが、秋田犬は当時のニューヨークで高級犬として扱われており、拝金主義のベニーを象徴していたのですね。

キャストはほぼ舞台版のキャストが担当しているため、それぞれ演じ込まれており、個性が際立っています。

言うことなしですね。

モーリーン役で一躍注目を浴びたイディナ・メンゼルは、『ウィキッド』エルファバ役でトニー賞受賞、『アナと雪の女王』エルサ役などを演じていますが、本作のモーリーンのステージパフォーマンスは決してオーバーではなく、89年当時まさにあのような前衛的なパフォーマーがニューヨークに多くいたそうです。


Rent (2005) - Trailer

それぞれが傷を抱えながらも、自分の愛に忠実に生きていこうともがいている姿に、いつしか自分を重ねているのです。