ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『カッスル夫妻(1939)』The Story of Vernon and Irene Castle

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『カッスル夫妻(1939)』とは

実在の人物、ヴァーノン・カッスルとアイリーン・カッスルをモチーフにした伝記的ミュージカル映画

RKOでアステアとロジャースが共演した最後の作品。

監督はH・C・ポッター。

あらすじ

ヴァーノン・カッスルはニューヨークで舞台に出演しているが、本当はダンスが得意であるにも関わらず、スプラスティック・コメディばかり任されていた。

ある日、海辺で出会ったアイリーンと親しくなる。

ヴァーノンが俳優であり、ダンスが得意だと知ったアイリーンは、彼の舞台を観に行くが、ダンスとは関係のないコメディに失望する。

アイリーンにダンスをするべきと言われたヴァーノンは、アイリーンを相手に踊るようになる。

オーディションはなかなかうまくいかなかったが、マギーの計らいがあり、パリのカフェでのダンスが大成功を収める。

その後、アメリカ全国ツアーも成功を収め、人気を得た2人だったが、そんな彼らのもとにも徐々に戦争の影が迫ってくる。

キャスト

ヴァーノン・カッスル フレッド・アステア

アイリーン・カッスル ジンジャー・ロジャース

マギー・サットン エドナ・メイ・オリヴァー

ウォルター・アッシュ ウォルター・ブレナン

感想

フレッド・アステアジンジャー・ロジャースが主演するミュージカル映画の一作ですが、こちらの作品が彼らがコンビを解消するきっかけとなってしまいました。

彼らが共演で主演したのは10作品ありますが、本作は9作目。

実話をもとにしているため、他作品と違って悲劇に終わることから、観客動員数は伸び悩んだようです。

でも、本作でもいつものアステア&ロジャースのダンスを楽しむことができます。

フレッド・アステアのタップダンス


Fred Astaire - The Story of Vernon and Irene Castle - first dance

▼iconicなフレッド・アステアジンジャー・ロジャースのダンスシーン 


Too Much Mustard – Fred & Ginger in The Story of Vernon and Irene Castle 1939

ジンジャー・ロジャースは、ダンサーに憧れる箱入り娘アイリーンが偶然出会った俳優に憧れて、最終的には人生のパートナーになるまでを見事に演じています。

ラストで、帰らぬ夫と庭でダンスするシーンは悲しくも美しかったです。

本作の後、アステアは相手役をリタ・ヘイワースエレノア・パウエルジュディ・ガーランドなど次々と変えましたが、ロジャースほど長続きするダンスパートナーは現れませんでした。

『Girl from the North Country』2020.2.24.20:00 @Belasco Theatre

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『Girl from the North Country』とは

2017年7月にロンドンでプレミア公演され、同年12月にウェストエンドに移った後、2018年9月にオフブロードウェイ、2020年3月にブロードウェイで初演されたミュージカル。

ボブ・ディランの楽曲を使ったジュークボックス・ミュージカル。

脚本・演出はConor McPherson。

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あらすじ

時は1934年冬、世界大恐慌の最中、ミネソタ州ダルース。

レイン家のかかりつけ医ドクター・ウォーカーが語り始める。

ニック・レインはこの街でゲストハウスを営んでいたが、不況に喘ぎ、借金の取立てから家族を守るのに必死だった。

妻のエリザベス・レインは認知症を患っており、時折感情が爆発するのを抑えることができない。

レイン夫妻には20代前半の息子ジーンと、19歳の養女マリアンがいる。

ジーンは小説家になりたいと夢見ながら思い通りにいかない現実に悩み、酒浸りの日々を送っている。

そんな折、恋人のキャサリンが別の男性と結婚する知らせを聞き、さらに塞ぎ込む。

マリアンは未婚で妊娠しており、彼女は頑なに父親を明かそうとしない。

ニックはマリアンの将来を案じて、無理やり縁談を取り付けようとするが、マリアンは拒絶する。

そんな中、ニックはゲストハウスに出入りする未亡人ニールセン夫人と関係を持つようになる。

また、ゲストハウスに滞在しているバーク一家は失業中であり、息子のイライアスは学習障害があり、家族は対応に悩んでいる。

ある晩遅くに訪れたある人物たちにより、状況は急激に変わっていく。

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キャスト

Marianne Lane    Kimber Elayne Sprawl

Dr. Walker    Robert Joy

Mrs. Burke    Luba Mason

Elizabeth Laine    Mare Winningham

Nick Laine    Jay O. Sanders 『Purlie Victorious』

Katherine Draper    Caitlin Houlahan

Joe Scott    Austin Scott

Mrs. Neilsen    Jeannette Bayardelle 『The Harder They Come』

Mr. Perry    Tom Neils

Gene Laine    Colton Ryan

Reverend Marlowe    Matt McGrath

Elias Burke    Todd Almond

Mr. Burke    Marc Kudisch

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感想

最近はジュークボックスミュージカル黄金期とでも言えるほど、ブロードウェイではジュークボックス作品が目白押しですが、本作はその中でもちょっと異彩を放っています。

ノーベル文学賞を受賞したボブ・ディランの楽曲で綴られていますが、彼の故郷であるミネソタ州ダルースを舞台にしているということ以外、ディラン自身とは関係のないお話になっています。

▼舞台映像


Show Clips: GIRL FROM THE NORTH COUNTRY

▼観劇後の感想

https://twitter.com/nyny1121/status/1232265238415912960

▼開演前

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すでにオフの小さな劇場で観ていた方からは、こじんまりとしたオフの雰囲気の方が作品に合っているという声も聞かれましたが、私は今回が初めてで全てが新鮮に映りました。

世界大恐慌の苦しい時代を生きる家族を描いていて、それぞれに悩みがあり、苦悩しながら生きている様子が描かれています。

字面で読むと重すぎて辛くなってしまうかもしれませんが、お話の辛さが音楽でやや緩和されている印象。

メザニン最前列でしたが、緑色の舞台に背景のダルースの青空が映えて、そこにアンサンブルキャストのシルエットが影絵のように見えて美しかったです。

舞台下手側奥にバンドが目立たないように鎮座していました。

音楽は物語の進行中にメインキャストが歌う場合もあれば、前方で進行している物語に合わせて、後方でアンサンブルがBGM的に歌う場合もありました。

この点、オフブロードウェイ公演時に単なる「musical」ではなく「play with music」と銘打っていただけあるなと思いました。

アフリカ系アメリカ人の養女」という設定は、奇遇にも同じ時期にブロードウェイで公演中の『Jagged Little Pill』と同じ設定ですが、こちらは現代のお話なので時代設定が異なります。

演じたのはKimber Sprawl。まだ新人ですが、パフォーマンスは素晴らしかったです。

そして、語らずにいられないのは、認知症を患った母親役のメア・ウィニンガム

子どもっぽい仕草や状況を理解できない演技が秀逸でした。

また、『Waitress』のCaitlin Houlahanにまた会えたのも嬉しかったです。

彼女の出演シーンが短かったのは残念。

▼「I Want You」


"I Want You" | GIRL FROM THE NORTH COUNTRY

▼「Slow Train/License to Kill」


"Slow Train/License to Kill" | GIRL FROM THE NORTH COUNTRY

▼SDでのKimber Sprawl

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▼SDでのCaitlin Houlahan
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▼SDでのMare Winningham
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