ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『屋根の上のヴァイオリン弾き』2017.12.14.18:00 @日生劇場

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屋根の上のヴァイオリン弾き』とは

1964年ブロードウェイ初演のミュージカル。

ロシア領ウクライナのシュテットルに生きるユダヤ教徒の生活を描いている。

タイトルは「屋根の上のヴァイオリン弾きのように、不安定な生活を送りながらも陽気な旋律を奏でるように生活する」様子を表しており、主人公は牛乳屋である。

今回は、日本初演50周年記念公演。

市村正親演じるテヴィエは、過去に森繁久彌西田敏行らが演じている。

あらすじ

1905年、帝政ロシアの時代、アナテフスカという寒村で酪農を営むテヴィエは信心深くて、楽天家で、25年連れ添っている妻のゴールデには頭が上がらないが、5人の娘たちを可愛がり、貧しいながらも幸せな日々を送っていた。

長女のツァイテル、次女のホーデル、三女のチャヴァ、年頃の娘たちの今の最大の関心事は自分たちの結婚について。

ユダヤの厳格な戒律としきたりにならい、両親の祝福がなければ結婚は許されない。

娘たちの連れてくる結婚相手は、親たちの理想通りにはなかなか行かない。

そんな中、時代の波はユダヤ教徒に厳しくなりつつあった。

キャスト

テヴィエ 市村正親

ゴールデ 鳳蘭

ツァイテル 実咲凜音

ホーデル 神田沙也加

チャヴァ 唯月ふうか

ラザール 今井清隆

モーテル 入野自由

パーチック 広瀬友祐

フョートカ 神田恭兵

感想

開演間際ぎりぎりの到着でしたが、久しぶりの日生劇場に行ってきました。

この作品の舞台版を観るのは初めてです。

今まで何かと予定が入り行けなかったこの作品、やっと観られて幸せでした。

この作品は本当によくユダヤの文化や習慣を丁寧に描いていますね。

玄関のドアの近くにメズーザーが置かれていて、出たり入ったりする時に手を当ててお祈りしていたり。

オープニングの「しきたり〜(Tradition〜)」にあるように、伝統や習慣を大切にするユダヤ教徒たち。

しかし、娘たちはそんな父親を尊敬しながらも、自分たちの愛する相手と人生を共にする選択をします。

最初は反対しながらも最後には娘の幸せを優先するテヴィエに、切なくなりました。

結婚パーティーで男女混合のダンスをしたり、親の選ぶ結婚相手を受け入れなかったり、「時代は変わっているのよ」という娘たち。

子どもは大人の思うようには育ちませんね、いつの時代も。

最後には生まれ故郷を追い立てられてしまうテヴィエですが、お嫁に行っても、どんなに離れても、家族は一つであるというエンディングを迎えられ、切ないながらも希望を持ちながら劇場を去りました。

役者さんはみなさん適役でしたね。

市村さんも久しぶりでしたが、相変わらず芸達者でしたし、鳳蘭さんも肝っ玉母さんでしたし。

娘たちの「マッチメイカー」も可愛らしいながらもしっかりと歌われていました。

ラザールの今井さんもいい味出されていましたが、テヴィエ役も適任かもしれないとお声を聴いて思ってしまいました。

ヴァイオリン弾きさんはfakeでしたが、クラリネット吹きさんは実際に舞台上で演奏されて、いい音色を響かせていました。

オケピはなく、舞台上の丘の下の部分にオケがいました。

派手さはないですが、哀愁漂うメロディアスな旋律とお父さんの悲哀が合い、なんとも言えない余韻を残す作品でした。


『屋根の上のヴァイオリン弾き』PV【舞台映像Ver.】

『ロバと王女(1970)』Peau d'Âne

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『ロバと王女』とは

ジャック・ドゥミ監督とミシェル・ルグラン作曲によるフランスのミュージカル映画

原作は「シンデレラ」や「長靴をはいた猫」などのシャルル・ペローによる同名の童話(邦題『千匹皮』)。

あらすじ

宝石を生むロバのおかげでとても裕福な“青の国”の王がいた。

しかしお妃が病気になり「私より美しい女性と再婚して」と遺言を残し亡くなってしまう。

お妃より美しい女性はこの世にただ一人、王女だけ。

父親である王に結婚を申し込まれ困った王女はロバの皮に身を隠し、姿を消してしまう。

そんなある日、王女の正体を知らない「赤の国」の王子がたちまち恋に落ち・・・

キャスト

王妃、王女 カトリーヌ・ドヌーヴ

王様 ジャン・マレー

王子 ジャック・ペラン

赤の国の王妃 ミシュリーヌ・プレール

リラの妖精 デルフィーヌ・セイリグ

赤の国の王 フェルナン・ルドゥー

医者 アンリ・クレミュー

大臣 サッシャ・ピトエフ

ナレーター ジャン・セルヴェ

感想

シェルブールの雨傘』、『ロシュフォールの恋人たち』などでおなじみの、ドゥミ監督×ルグラン作曲×ドヌーヴ主演のミュージカル映画

全二作のおかげで、本作は豪華な衣装や演出が用いられてファンタジーの世界が表現されています。

「シンデレラ」や「眠りの森の美女」などで有名なペローですが、私は「千匹皮」についてはこの映画を通して知りました。

日本ではマイナーな作品かと思われますが、ドゥミ監督は幼少期読んだこのお話がとても印象に残っており、ぜひ映画化したいと長年温めて来られたそうです。

上記の通り、近親相関をモチーフにしている作品です。

古来から童話やいいつたえを通して啓蒙されることが多いテーマですね。


ロバと王女(字幕版)

やはりドヌーヴの美しさは本作でも健在。

豪華なドレスを身につけて、より一層輝きを放っています。

お気に入りのシーンはお菓子作り。

王子のためにレシピを見ながら愛のケーキを作るシーンはとっても女の子らしくて可愛いです。

このシーンでは、ロバの皮ver.と太陽のドレスver.の2人を登場させることで、よりドレスを着た王女の美しさを際立たせています。

ルグランの音楽は、他の作品と比べると、そこまでキャッチーな音楽はないかなぁと感じました。

なぜか、全体的に、あまりルグランっぽくないんですよね。

また、一つ一つ演出が凝っていますね。

空のドレス、月のドレス、太陽のドレスなどの衣装。

王子を導く、目と口のあるピンクの薔薇。

王女の歌を歌うおうむparrot。

痰をだす代わりにガマガエルを口から出す、ロバの皮を下女にする女。

ケーキ作りで卵を割ったら飛び出すひよこ。

他にもたくさんありますが、ドゥミ監督が7歳くらいの子供の視点に立って作ったとおっしゃる意味がわかります。

ただ、ラストのヘリコプターで王様が登場するシーンは「???」となってしまいました。

映画全体の雰囲気が台無しです!

確かに題材に馴染みがなく、途中興味消失してしまうことがないとは言えませんが、ドヌーブの美しさ、映画全体に漂うファンタジー感は一見の価値ありです。

ヘリコプターを除けば、この作品の終わり方はなかなか好みです。

「王様と結婚したのよ」と意気揚々とやってくる妖精に続いてやって来た王様が、「王女よ、こんなところにいたのか。また一緒に暮らそう」と笑顔で言い、やや不満な表情で妖精の隣に立ちます。

「???」

このラストはどう解釈したらいいのでしょう。

王様はまだ王女を諦めていない?というようにも受け取れなくもないのです。

曖昧なまま終わらせ、後はおのおのに委ねるという形をとることで、映画が終わった後にファンタジーの余韻に幾度となく浸ることができますね。