ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

舞台ミュージカルを中心とした、ミュージカル映画、演劇、オペラに関するブログ

『レベッカ』2018.1.26.18:00@シアタークリエ

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レベッカ』とは

2006年ウィーン初演のミュージカル。

ダフニ・デュ・モーリエによる同名小説を基にしている。

脚本・作詞はミヒャエル・クンツェ、作曲はシルヴェスター・リーヴァイ。

日本では2008年にシアタークリエのこけら落としシリーズの一環として初演された。

初演より演出は山田和也。

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あらすじ

「わたし」は、ヴァン・ホッパー夫人の付き添いでモンテ・カルロのホテルを訪れる。

内気で上流階級の振る舞いに不慣れな「わたし」、夫人から無作法さや無愛想さをどやされてばかりいた。

ある日、イギリスのコーンウォールに大邸宅マンダレイを構える上流紳士のマキシム・ド・ウィンターがホテルにやってくる。

優雅で上品なマキシムに「わたし」は目を奪われる。

ホテルの宿泊客達は、去年ヨットの事故で亡くなったマキシムの妻、才色兼備のレベッカの噂でもちきり。

翌朝、風邪で寝込んだヴァン・ホッパー夫人を部屋に残して一人朝食のテーブルに着いた「わたし」は隣のテーブルにいたマキシムから「一緒に朝食を」と声をかけられる。

夫人が寝込んでいる数日の間、「わたし」はマキシムと時間を過ごし、二人はどんどん惹かれあっていく。

ところが突然、夫人がニューヨークに戻ると言い出し、悲嘆にくれる「わたし」。

別れを告げるとマキシムは突然「わたし」にプロポーズ。

あまりの幸せに夢見心地の「わたし」に対してヴァン・ホッパー夫人は、先妻レベッカはイギリスで評判のレディであり、「わたし」にマンダレイの女主人が務まるはずがないと告げる。

「わたし」は愛の力でマキシムを幸せにすると決意する。

ネムーンを終えた二人がマンダレイに到着すると、家政婦頭のダンヴァース夫人はじめ、大勢の召使いに出迎えられ、その雰囲気に「わたし」は圧倒されてしまう、

マキシムの親友でありマンダレイの管理をしているフランク、マキシムの姉ベアトリスとその夫ジャイルズからは暖かく迎えられるものの、屋敷の全てを取り仕切るダンヴァース夫人との関係、女主人としての振る舞いに戸惑い始める「わたし」。

レベッカのものを生前と変わらずに管理するダンヴァース夫人、マキシムに隠れて屋敷に出入りするレベッカの従兄弟ファヴェル、入江のポートハウスで出会ったベン。

屋敷のいたるところ、人々の心の中にまでレベッカの存在は今も色濃く残っている。

期待に満ち溢れた結婚生活に忍び寄るレベッカの影。

そして、レベッカの死に関する疑惑が持ち上がる。

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キャスト

マキシム・ド・ウィンター 山口祐一郎

わたし 大塚千弘

フランク・クロウリー 石川禅

ジャック・ファヴェル 吉野圭吾

ジュリアン大佐 今拓哉

ベン tekkan

ジャイルズ KENTARO

ベアトリス 出雲綾

ヴァン・ホッパー夫人 森公美子

ダンヴァース夫人 保坂知寿

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感想

レベッカ』は今回が初めての観劇でした。

原作の小説よりもアルフレッド・ヒッチコックによる映画版でご存知の方が多いかもしれません。

初演の時からいつか観てみたいと思っていた作品だったので、ようやく観られて良かったです。

そう、今回は最高の座席で観劇させてもらったのです。

いつもチケット運がなくて、土日祝日のチケットを取るというだけで必死なのに、今回は東宝ナビザーブ先行抽選に感謝しかありません。

↓trailerです。 


ミュージカル『レベッカ』PV【舞台映像Ver.】

観劇直後の感想です。

ウィーン産ミュージカルによくみられるドラマ重視のミュージカルという印象でした。

ダンスナンバーはなく、タイトル曲以外、そこまでキャッチーなナンバーもありませんでした。

耳なじみのいい音楽がミュージカル観劇の楽しみの一つという人にとっては、この点物足りないかもしれません。

山口さんは一部でやや高音が出ていなかったので心配していたのですが、二部ではきちんと声が出ていたので、一部ではあえて優しさを演出しようとして弱めの声にしたのかなと思いました。

公演も終盤でしたし、お疲れもたまっていたのかもしれませんね。

ただ二部の怒りの表現や盛り上がりは見事でした。

大塚さんは唯一の初演からの生え抜きの「わたし」ということで、視線の動き、一挙手一投足に至るまで神がかっていました。

前半の無垢で世間知らずの雰囲気から、マキシムへの愛に目覚め、徐々にマキシムの妻らしく気丈に振る舞えるように成長していく変化をよく演じられていました。

保坂さんはお久しぶりでしたが、忠実と狂気のダンヴァース夫人の演技、タイトル曲の熱唱に魅了されました。

四季時代はどちらかというとお転婆少女やチャキチャキ母さんのイメージの知寿さんでしたが、ゴシックな雰囲気のこの役も適役というのは良い意味で予想外でした。

モリクミさん登場シーンでは音楽もアメリカ的になり、昏い舞台を和ませてくれる存在でした。

そのほか、吉野さん、KENTAROさん、アンサンブルの池谷さん、島田彩さんと枚挙にいとまがありませんが、芸達者な方々が脇を固めるというキャスト的には最高の布陣でした。

舞台装置はシンプルでしたが、左奥に置かれた階段やメイドの多さ、ダンヴァース夫人の気位の高さに大邸宅マンダレイの広大さを感じました。

「わたし」の衣装替えは非常に多く、いずれも可愛いデザインでいくつかはデッサンしたくなるほど。

モリクミさんは派手でラメや羽根などで着飾ってあって、間近で観ると圧倒されました。

↓よく見るとRの一画目の縦棒に女性の横顔が確認できます。この横顔と炎は舞台を観終わった人それぞれに想いを抱かせるものとなっています。

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事前に新潮文庫から出版されている小説の日本語版を読んではいたのですが、改めて舞台でこの作品を追ってみると、マキシムと「わたし」の恋愛、雇われの身の「わたし」の自立(成り上がり)物語、嫁姑を連想させるダンヴァース夫人と「わたし」の確執、レベッカ殺害疑惑のミステリー、死後明かされるレベッカの真意と、様々な要素を楽しめる作品だと感じました。

「死人に口なし」であるがゆえに、逆説的ではありますが、レベッカという不在者の圧倒的な存在感が人々を翻弄する様は、時に滑稽に、時に物悲しく思えました。