『ジキル&ハイド』とは
ロバート・ルイス・スティーヴンソンによる小説『ジキル博士とハイド氏』を基にしたミュージカル。
1990年ヒューストンで初演、ブロードウェイでは1997年初演。
トニー賞では4部門でノミネートされた。
日本では2001年に鹿賀丈史主演で初演、2012年からは石丸幹二主演で再演を繰り返されている。
フランク・ワイルドホーンが初めて手掛けたミュージカルであり、また、ケリー・オハラのブロードウェイデビュー作でもある。
あらすじ
1888年秋、ロンドン。
医師であるヘンリー・ジキルは、長年、人間の善と悪を分離する薬の研究に身を捧げてきた。
それは精神を病み心をコントロールできなくなった父のため、ひいては科学の発展と人類の幸せに繋がるという強い信念に衝き動かされてのことである。
しかし、婚約者エマの父ダンヴァース卿、親友アターソンからは、神を冒涜する危険な理論だと忠告される。
研究の最終段階である薬の人体実験の許可を得るため、ジキルは病院の最高理事会に臨むが、理事会のメンバーである上流階級の面々によって要求は却下されてしまう。
その夜、ジキルとエマとの婚約パーティーが開かれるが、ジキルはアターソンとともに独身最後の夜を祝うため、いかがわしいパブ「どん底」を訪れる。
そこで娼婦ルーシーに出会い、彼女の言葉から、薬を自分で試すことを思いつく。
自宅に戻り、心を決めたジキルは、研究室で自ら開発した薬を服用する。
ほどなくして体に異変があらわれ、「自由だ!」とジキルから変身を遂げたエドワード・ハイドは叫びながらロンドンの闇の中に消えていった。
それから一週間。
部屋に閉じこもり、誰とも会おうとしないジキルの元にルーシーが訪ねてくる。
傷だらけの彼女の背中を治療するジキルに、ルーシーが語った加害者の名前はエドワード・ハイド。
ジキルは自分が凶悪な分身を生み出したことに慄然とする。
ハイドは理事会のメンバーに対して殺人を繰り返し、ジキルはハイドを制御できなくなっていくのを感じた。
キャスト
ルーシー・ハリス 笹本玲奈
エマ・カルー 宮澤エマ
ガブリエル・ジョン・アターソン 田代万里生
サイモン・ストランド 畠中洋
執事プール 花王おさむ
ダンヴァース・カルー卿 福井貴一
感想
先月に引き続き、国際フォーラムホールCにて。
初日に、しかも最前列センターで、堪能してまいりました。
今までの観劇人生を振り返っても、こんな良席巡り会ったことありません。
私の石丸さんへの想いが通じたのかしら…笑。
本作は、今まで何度もキャストを入れ替えて演じられてきた日本でも人気のミュージカルですが、実は私にとっては今回が初観劇。
何度も何度もオリジナルブロードウェイキャストレコーディングを聴き込んできただけあり、日本語訳がどうなっているか含め、とても気になっていました。
Murder! Murder!が、事件!事件!とうまく訳されていましたね。
素晴らしい。
最前列のメリットは、視界を遮られず、舞台を真近で観られることもありますが、それだけでなくオケピの中の息づかいも感じながら作品を楽しめることも挙げられます。
今回はいつもよりオケの雰囲気を感じながら鑑賞できたので、より臨場感があり楽しめました。
キャストについて。
石丸さんは前回の『スカーレット・ピンパーネル』の時も書きましたが、ワイルドホーン氏の書く曲の最後のロングトーンを、持ち前の歌唱力で気持ちよく歌い上げていました。
「This Is the Moment 」は石丸さんの声にピッタリですね。
瞬きしないようにして観ていました。
石丸さん最高です。はぁ。
生真面目なジキル博士と狂気に満ちたハイド氏の二面性を表すのは難しいと思われますが、3度目のジキルということもあり、うまく演じ分けられていました。
終盤に差し掛かるところで、自身の中にいるハイド氏を追い払おうとする楽曲があるのですが、これは圧巻でした。
そして、以前エマを演じ、今回からルーシーに挑戦される笹本さん。
ママになり、演技の妖艶さに磨きがかかっていましたね。
ただものすごく期待していただけに、「Someone Like You」が、うーん残念でした。
個人的にこの曲が大好きなので、今までネットで様々な方による歌唱を見てきており、ハードルが上がっているせいもありますが、まだ荒削りかなと感じてしまいました。
また、「In His Eyes」も、笹本さんならもっとできますよね、と思ってしまいました。
これから公演回数を積んで、磨いていっていただきたいです。
前回まで濱田めぐみさんが演じられていたので、濱めぐさんルーシーを見ておけばよかったなぁ…と激しく後悔。
だって、これ濱めぐさんに打ってつけの声域じゃないですか。
でも、濱めぐさんは今、メリポピを頑張っているんだから…と自分に言い聞かせました。
下は、以前の公演の制作発表より、濱めぐルーシーと笹本エマ。
宮澤エマさんはエマのイメージそのままの方だなと思っていました。
上品さなど努力しても出せない部分を元々お持ちで、さらに歌声も気品があるので、まさに適役だと思いました。
本当、この方、〜の七光りではなく素晴らしいミュージカル女優さんです。
博士の開発するあの薬ですが、蛍光色をどのようにして出していたのか、終始気になっていました。
また、研究室の大きなプロペラも、何に使うんだろうと…本筋には関係ないのですが。
大勢での群舞、合唱あり、ソロの迫力ある歌ありと、見所満載のミュージカルでした。
今回は初日ということで、終演後、演出の山田和也さん、作曲家のワイルドホーンさんが登壇してお話しされました。
ワイルドホーンさんはベースボールキャップをかぶったラフなスタイルで登場。
「この作品を日本で初演した時は、彼(演出の山田さん)の毛はもっと黒く、私の頭には髪の毛がありました」と会場を笑わせながら、自身のミュージカル作曲家デビュー作となった本作への思いを語られていました。