ミュージカルは終わらない Musicals won't be over.

ミューオタるんによる純粋なミュージカルブログ

『The Band’s Visit』『迷子の警察音楽隊』2018.9.15.so

f:id:urara1989:20181010203300j:image

『The Band’s Visit』『迷子の警察音楽隊』とは

2016年オフブロードウェイ初演、2017年ブロードウェイ初演のミュージカル。

2007年公開の同名のイスラエル映画を基にしている。

最優秀ミュージカル作品賞を含めたトニー賞10部門を受賞し、各紙批評でも軒並み高い評価を受けた。

あらすじ

1990年代初頭、8人からなるエジプトのアレクサンドリア警察音楽隊が、イスラエルの空港に到着した。

彼らはペタハ・ティクヴァのアラブ文化センターで演奏するようにと招かれたのだった。

しかし、いくら待てど迎えがこない。

なんとか自力で目的に到着しようとするが、乗ったバスはベイト・ハティクヴァという、似ている響きを持つ名前の辺境の街に到着してしまう。

その日はもうバスがなく、演奏会は翌日の夕方だった。

昼食をとっていた食堂の女主人ディナは、この街にはホテルがないので、自分の家と常連客イツィクの家と店に寝泊まりしているパピの部屋に分かれて泊まるよう団長に勧める。

団長とカーレドはディナのもとに、シモンら3人はイツィクのもとにお世話になることになる。

お互いに言葉も文化も宗教も違い、不慣れな英語で意思疎通をとることに。

団長はディナに、昨今の音楽の話から、次第に、息子と妻の死などプライベートな話まで打ち明けるようになるのだった。

f:id:urara1989:20181010205444j:image

キャスト

Dina    Katrina Lenk

Tewfiq    Sasson Gabay 

Itzik    Pomme Koch

Haled    Ari’el Stachel

Camal    George Abud

Papi    Etai Benson

Telephone Guy    Adam Kantor

Avrum    Andrew Polk

Zelger    Bill Army

Simon    Joseph Kamal

Julia    Rachel Prather

Sammy    Jona Than Raviv

Anna    Sharone Sayegh

Iris    Kristen Sieh 

感想

観終わって、しばらく立ちあがることができなかった…舞台を観てこのような経験をしたのはいつ以来でしょうか。

各紙演劇評や各演劇賞で総じて高評価を受けたこの作品に、私もすっかり魅了されてしまったのです。

所謂アメリカ的な、歌って踊ってさぁ楽しく!という部類の作品ではありませんし、どちらかというと成熟した大人向けで、万人受けはしないと思います。

この作品を観ながら片手に持つべきなのは、ミディアムボディのワインであって、決してオレンジジュースではないのです。

さて、この日はrush ticketを取るべく8時半頃にBarrymore劇場前に到着。

着いた時に既に並んでいたのは2人だけ。

寝坊して焦ってきたにもかかわらず、週末なのに意外と列は作られていなかったので一安心して、前にいたD.C.から来ていた女の子としばしミュージカルや最近の米国の政治に関するトークで盛り上がっているうちに、あっという間に一時間半経過し、無事にrushを入手できました。

左前サイドのオーケストラ、若干partial viewではあるものの、やはり40ドル台のチケットはお財布に優しいですね。


A Collection of Moments | The Band's Visit

この作品は始まりと終わりに同じ下のような文句を観客に投げかけます。

Once, not  long ago, a group of musicians came to Israel from Egypt.

You probably didn't hear about it.

It wasn't very important.

休憩なしの一幕構成のショーでしたが、非常に濃密な時間を過ごしました。

私は中東文化に詳しくないですが、エジプトとイスラエルは使われている言葉が違うのですね。

言葉や文化、宗教の異なる者同士が、カタコトの英語と音楽を通じて心を通わせる様を描いています。

この戸惑いや可笑しさを俳優たちは見事に演じきっていました。

たった一晩の出来事ですが、心が通じ会うのに時間なんて関係ないのですよね。

というかむしろ、一晩だけであったからこそ、打ち明けられたこともあったのでしょう。

主演のKatrina Lenkは、国籍不明のいわく付きの美女、といった雰囲気で、この作品のiconicな存在として終始異彩を放っています。

『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』でイツハク役をしていたことは、ユニセックスな風貌から容易に想像できますね。

彼女はこの役でトニー賞最優秀主演女優賞を受賞していますが、このperformanceを観て当然だと思いました。

音楽はアラブ音楽を連想させるようなexoticなものや郷愁を誘うようなバラードなど様々で、特に印象的だったナンバーが「Answer Me」。

それまでsoloが多かったところで歌われる合唱で、どこか懐かしさを感じる切ないメロディーにカタルシスを覚えました。


THE BAND'S VISIT (Broadway) - "Answer Me” [LIVE on TODAY]

Original Broadway Cast Recording も、イージーリスニングといってもいい感じの優れたアルバムになっています。

Vinylが出たら即買いしたいくらい、大好きな盤です。

実は、気に入ってしまって、脚本は既に購入済みなので、後でOBCRと照らし合わせながら読みたいと思います。

警察音楽隊”を構成する楽器たちは以下の通り。

  • oud ウード
  • darbuka ダルブッカ
  • clarinet クラリネット
  • violin ヴァイオリン
  • cello チェロ

ウードというのは、アラブ音楽文化圏で使われる琵琶に似た半円形の撥弦楽器

ダルブッカというのは、アラブ音楽やトルコ音楽で用いられるゴブレット形太鼓の一種。

また、見慣れたヴァイオリンなどの弦楽器やクラリネットはアラブ音楽を演出するために通常より低めにチューニングしているのだとか。

芸が細かいですね。

彼らの本番での演奏が始まろうとするまさにその瞬間に、この作品の幕はおります。

この映画を観たことはなかったのですが、今回の観劇で元の映画の方にも俄然興味が湧いて来ました。

機会があったらみてみようと思います。

『My Fair Lady』『マイ・フェア・レディ』2018.9.15.ma

f:id:urara1989:20181004225918j:image

『My Fair Lady』『マイ・フェア・レディ』とは

1956年ブロードウェイ初演のミュージカル。

原作は、バーナード・ショーの戯曲『ピグマリオン』。

作詞はアラン・ジェイ・ラーナー、作曲はフレデリック・ロウ。

ブロードウェイ初演時のイライザはジュリー・アンドリュース

初演時にはトニー賞6部門を受賞している。

「I Could Have Danced All Night」や「With a Little Bit of Luck」などスタンダードナンバー化している楽曲も多い。

日本でも繰り返し上演されており、2010年まで大地真央が20年間にわたってイライザ役を務めていた。

あらすじ

コヴェントガーデンで花売り娘をしているイライザは、音声学者のヒギンズ教授に出会う。

ヒギンズが「どんなに下世話な花売り娘でも、自分の手にかかれば半年で舞踏会でも通用するレディに仕立て上げられる」というのを聞き、イライザは興味を示す。

翌朝、イライザはヒギンズの家に赴き、自身を一人前のレディに仕立てるように頼み、ヒギンズの友人ピッカリング大佐がもし成功したら授業料を全額負担すると応じたこともあり、ヒギンズはイライザの申し出を引き受ける。

数日後、イライザの父アルフレッドが、ヒギンズに金をせびりに来るのだが、そこでヒギンズとアルフレッドは打ち解け、最終的にアルフレッドに6ポンド渡した挙句、アメリカの投資家への推薦状もしたためてしまう。

イライザの訓練は困難の連続だったが、何とか克服し、身分を隠してアスコット競馬場に乗り込む。

しかし、言葉の訛りはうまく直せても、話の内容は花売り娘のままだったイライザは大恥をかく。

またその社交場で貴族の令息フレディはイライザに一目惚れしてしまう。

競馬場での失態から6週間後、雪辱を期すため、イライザはトランシルヴァニア大使館の舞踏会に出席することになるのだが。

キャスト

Eliza Doolittle    Kerstin Anderson

Professor Henry Higgins    Harry Hadden-Paton

Alfred P. Doolittle    Norbert Leo Butz

Freddy    Jordan Donica

Mrs. Higgins    Rosemary Harris

Colonel Pickering    Allan Corduner

感想

この作品をブロードウェイで観ようかどうしようか直前まで迷っていました。

舞台がイギリスなので、ウエストエンドで上演されるとあれば是が非でも観たいと思っていたのですが、今回ブロードウェイでのあまりの人気を聞きつけ、マチネ公演を観劇しました。

マチネ公演だったので、主演はunderstudyの方で、Lauren Ambroseではなくちょっと拍子抜けしましたが、とはいえブロードウェイ公演に出演するだけのことはある素晴らしいイライザを演じていらっしゃいました。

「なるべく安くたくさん観る!」がモットーの私ですが、実は今回の遠征で唯一、100ドル以上チケットに対して払った公演となりました。

しかし、オーケストラ席のやや左の最前列でしたし、その値の価値のある有意義な観劇となりました。


This is My Fair Lady | 2018 Tony Awards

今回のMFLの演出は、“イライザの自立”がテーマ。

日本版などで描かれていたイライザとヒギンズの恋愛の占める割合は少なくなっていました。

どちらのバージョンも好きですが、恋愛なしでも女性の自立をしっかり描くことでまた作品の意味合いが変わり、何度も見直したくなりました。

一番楽しかったシーンは、やはりイライザの父親のナンバー、つまり「運が良けりゃ」など。

一部の隙間なく、陽気さを絵に描いたようなおじさんが歌い踊る場面には瞬きをしたくないほどで、鳥肌が止まりませんでした。

ヒギンズの学者風情も名演でした。

ヒギンズ家の場面では、舞台の回転とともに家のセットも回る構造で、非常に観やすかったです。

セットの細工の細かいことといったら!

最前列にいても、オペラグラスを使って隅々までよく観察してしまったほど、本や実験装置がてんこもりのヒギンズの書斎をよく実現されていました。

そして、最後に付記しておきたいのが、唯一の日本人キャストである由水南さんが出演されていたこと。

冒頭シーンの花売り娘や競馬場での貴婦人など様々な場面でアンサンブルとして参加されていました。

途中、帽子が外れてしまうハプニングにも冷静に対応されていました。

高良結香さんに続き、ブロードウェイのショーで活躍されている日本人を見かけると、非常に励まされるとともに大きなエールを送りたくなりますね。

続きを読む

『Carousel』『回転木馬』2018.9.14.so

f:id:urara1989:20180930200203j:image

『Carousel』『回転木馬』とは

リチャード・ロジャース作曲、オスカー・ハマースタインII作詞によるミュージカル。

1945年ブロードウェイ初演。

原作はモルナール・フェレンツによる戯曲『リリオム』。

あらすじ

舞台はメイン州の漁村。

回転木馬の呼び込みを生業とする男ビリーは客として来ていた女工ジュリーを口説き、恋仲となる。

二人はやがて結婚するが、客に手を出したとしてビリーは回転木馬を解雇され、生活苦に苛立つビリーはジュリーに度々手をあげるようになっていた。

やがて、ジュリーが子どもを孕み、父親になる日が近づくのを意識したビリーは、焦りのあまり大金の盗みを企てる。

しかしあえなく失敗し、逃亡する際にビリーは事故死してしまった。

粗暴だったが愛していた夫を失い、悲嘆にくれるジュリー。

しばらく経ち、天界で暮らしていたビリーは、自分の子どもが苦難に陥っていると聞きつけ、星守starkeeperに許可を得て1日だけ地上に戻ってくる。

ビリーの娘ルイーズは、父親が泥棒だったという汚名から、友人らからいじめの対象となっていた。

ビリーはルイーズの前に姿を現し、天界の星のかけらを渡して励まそうとするが、警戒するルイーズに苛立ち、彼女をぶってしまう。

ルイーズは、ぶたれたのに痛くないことを不思議に思い、母親であるジュリーに尋ねると、ジュリーはそういうこともあるのだと、ビリーのことを思い出しながら娘に語りかけるのだった。

f:id:urara1989:20181004222535j:image

キャスト

Julie Jordan    Jessie Mueller

Billy Bigelow    Joshua Henry

Carrie Pipperidge    Lindsay Mendez

Nettie Fowler    Rosena M. Hill Jackson

Enoch Snow    Alexander Gemignani

The Starkeeper    John Douglas Thompson

Louise    Brittany Pollack

感想

今回の遠征2作目は、closingを目前にしていた回転木馬のrevivalです。

この作品は映画版も国内公演(この時のジュリーは笹本玲奈さんでした。)も観ていて、親しみのある作品でした。

冒頭の美しいovertureとバレエのみによるパフォーマンスが印象的で楽しみにしていたのですが、今回のproductionは期待を上回る感動的なものでした。

実際に回転木馬の舞台装置はないのですが、回転木馬を象徴するひさしの下でダンサーたちが見事に円舞し、人体だけで回転木馬の賑やかな様子を生き生きと表現していました。

振り付けはニューヨークシティバレエで主席振付師を務めたこともあるジャスティン・ペックで、ダンサーにもニューヨークシティバレエの方がいらっしゃるようです。

さらに、Nettie役のオリジナルキャストにはメトロポリタンオペラで活躍するRenée Flemmingが配役されていました。

つまり、非常にリンカーンセンター寄りといいますか、ダンスも歌唱も非常に徹底してクラシックな作品に向き合おうというproducerたちの意気込みを感じます。

ハリウッド大作を舞台化したミュージカル作品を上演する劇場が林立するブロードウェイ界隈で、この作品は格調高く、ひときわ際立っていました。

俳優に関してですが、キャロル・キングの自伝的ミュージカル『Beautiful』でも主演したジュリー役のジェシーミュラーはカメレオン女優の異名を持つ名女優さん。

キャリー役のリンゼイ・メンデスはこの役でトニー賞助演女優賞を受賞しており、彼女の歌う「Mr. Snow」はなぜか笑いが起きるほど、ユーモラスに感情を込めて歌うことができるのです。

さて、ビリー役のジョシュア・ヘンリーは、粗野で無骨な男を熱演しており、本作のleading actorとしての役割を全うしていました。

回転木馬の呼び込みの男が、ある女性との出会いから恋をし、父になり、家族を守るため必死になるあまり罪を犯し、死してなお一度も抱くことのなかった娘に愛を伝えるために地上に降り立つという難しい役どころなのですが、彼の素晴らしい名演に心打たれました。

作品全体についてですが、正直、この作品中のジュリーのことが映画版を観た時、あまり好きではなかったのです。

彼女は一目惚れしたビリーにDVまでされて我慢して、何というか、女性的で弱々しい女といいますか、『My Fair Lady』と同じような男性の考えたファンタジーと思ってしまったのです。

ただ、今回の観劇ではむしろ、ネティに「You'll Never Walk Alone」で励まされながらの、二幕以降のジュリーの気丈な立ち振る舞いや娘への諭し方に女性の強さを感じ、感動しました。

10代の頃に感じた印象からの変化に、自分自身驚いてしまいました。


Experience Justin Peck’s Stunning, Tony-Nominated Choreography of Broadway’s CAROUSEL

『Anastasia』『アナスタシア』2018.9.13.so

f:id:urara1989:20180929131251j:image

『Anastasia』『アナスタシア』とは

1997年公開の同名のアニメミュージカル映画をもとにしたブロードウェイミュージカル。

2016年にハートフォードでプレミア公演され、2017年にブロードウェイで初演された。

元々の映画版の楽曲からの6曲に加え、新たに16曲が舞台のために書き下ろされた。

あらすじ

1907年、ロシアのセントペテルブルクで、幼いアナスタシア王女に祖母であるマリアは、パリに発つにあたり、「いつか会えるように」と願いを込めて、餞別にとオルゴールを渡す。

1917年、舞踏会でアナスタシアたちロマノフ一家はボルシェビキによる襲撃を受け、亡くなってしまう。

アナスタシアだけはマリアからのオルゴールを取りに戻ったため、襲撃を免れたのだった。

1927年、ボリシェビキにより支配されたロシアで、「アナスタシアが密かに生き延びている」という噂が流れる。

これを悪事に利用しようとしている二人の男、ディミトリとヴラドがいた。

彼らは、何のゆかりもない少女たちをアナスタシアであると宮殿に連れて行き、対価をせしめようとしていたのだった。

そんなある日、彼らの前に、記憶喪失の少女アーニャが現れる。

ディミトリとヴラドは、アーニャをアナスタシア王女に見せかけるために、ダンスや礼儀作法を教えるのだった。

キャスト

Anya    Christy Altomare

Dimitry    Zach Adkins

Vlad    Ken Krugman

Gleb    Max Von Essen

Maria Romanov    Maria Briggs

Countess Lily    Vicki Lewis

感想

今回の遠征、最初の作品です。

今年に入り、YouTubeInstagramをはじめとしたSNSで、主演しているChristy Altomareさんのパフォーマンス、そしてお人柄に触れ、何というか人を惹きつける何かを魅せられて、観劇するに至りました。

後述しますが、彼女のhospitalityは素晴らしいです。

↓Christy Altomareによるiconicなnumber「Journey To the Past」


Anastasia Live on The Today Show - Video and Projection Design

舞台背景は巨大なスクリーンとなっており、ロシアの宮殿の様子やパリの街並みを非常に美しく映し出します。

「Journey To the Past」で背景がラストで徐々に遠景になっていく様子には鳥肌が立ちました。

また、電車での逃亡劇のシーンですが、背景の風景とともに実際に電車のセットを動かしており、thrillingに描かれていました。

実は映画は観たことがないのですが、元々あった「アナスタシア伝説」をもとに作られた作品とのこと。

生き残ったアナスタシアであると名乗るアメリカ人女性がかつており、実際に幼い頃のアナスタシアに仕えていた人物もこの主張を支持し、一大ムーブメントになったのだそうですが、近年のDNA検査で否定されました。

しかし、覚えていない自分の過去に、こんな秘密があるなんて、とても夢のあるお話ですよね。


Journey to the Past & Once Upon a December - Christy Altomare (Anastasia) 2017 Thanksgiving Parade

各紙の演劇評では賛否両論の本作ですが、私はとても好きな部類でした。

costumeも全て素敵で、オペラグラス越しに目を凝らして観ていました。

アーニャの人生がどんどん拓けていく様も、ディミトリとの恋模様も・・・胸がいっぱいになってしまいました。

終演後のステージドアでは残念ながらChristyに会うことはできなかったのですが(この日はChristyが尊敬してやまなかったブロードウェイの大女優Marin Mazzieが逝去されたり、彼女自身が新作ミュージカルのワークショップ中だったりと大変な1日だったのです。)、

なんと、ドアマンに渡しておいた贈り物とファンレターを、私の名前とともに翌日のInstagram liveで紹介してくれました。

これには一人で宿のベッドで号泣してしまいました。

Thank you, Christy!

ブロードウェイでの公演もまもなく2周年を迎えようというところ。

ぜひ体調に気をつけていただいて、ロングランされることをお祈りしています。

「Michael In the Bathroom」(from "Be More Chill")を和訳してみた。

今回は、来年2019年2月にオンブロードウェイが決定している、オフブロードウェイミュージカル『Be More Chill』『ビー・モア・チル』(以降、BMC)から、この作品におけるiconicなナンバーである「Michael In the Bathroom」「マイケル・イン・ザ・バスルーム」を和訳してみました。

特にteensから絶大な支持を受けている、今アメリカで一番hotなミュージカルと言っても過言ではない作品です。

まだ日本では馴染みが薄いかと思うので、『Be More Chill』の概要を説明します。

 学校では影が薄くオタクの高校生の親友同士ジェレミーとマイケルの2人は、ある日、ナノテクノロジーが駆使されたSQUIPという日本から輸入された不思議なpillを手にする。

なんと、このSQUIPによりたちまち人気者になれるというのだ。

実際にSQUIPの指示通りに行動し振る舞うとその通りに。

しかし、SQUIPの重篤な副作用に気づいたマイケルは、ジェレミーに止めるよう注意するが、ジェレミーはマイケルが人気者になった自分に嫉妬していると思ってしまうのだった。

と大まかにはこんな感じです。

この「Michael In the Bathroom」は、SQUIPのことでジェレミーと言い争いをして、パーティーなのにトイレに一人でこもるマイケルの独唱曲です。

いくつも韻がふまれていて、一曲の中にストーリーがあり、感情の流れを感じられる名ナンバーとなっています。

地方公演からずっとマイケルを演じ続けているGeorge Salazarの、感情をむき出しにした熱唱が胸を打ちます。

私は彼が2011年にリバイバルされた『Godspell』で「Light Of the World 」を歌うところを観たことがあるんですが、このように感情を爆発させてソウルフルに、且つ繊細に歌うことができる素晴らしい俳優ですね。

 


Be More Chill's Michael In the Bathroom

  •  原曲の歌詞と和訳

I'm hanging in the bathroom at the biggest party of the fall

I could stay right here or disappear, and nobody'd even notice at all.

トイレでぶらぶらしている、秋の夜長、パーティー

僕がどこかに消えても、誰も気づきやしないだろう

 

I'm a creeper in a bathroom 'cause my buddy kinda left me alone

But I'd rather fake pee than stand awkwardly, or pretend to check a text on my phone

僕はトイレにこもるキモい奴、友達が去ってしまったから

ぎこちなく立っているより、おしっこするフリするか、スマホでメール読むフリしていよう

 

Evetyrhing felt fine when I was half of a pair

Now through no fault of mine, there's no other half there

2人でつるんでいた時は、すべてうまくいっていたのに

僕の責任ではないけれど、そんな奴はもういない

 

Now I'm just Michael in the bathroom, Michael in the bathroom, at a party

Forget how long it's been

I'm just Michael in the bathroom, Michael in the bathroom at a party

No you can't come in!

I'm waiting it out 'til it's time to leave

And picking at grout as I softly grieve

I'm just Michael who you don't know, Michael flyin' solo, Michael in the bathroom by himself

All by himself

僕はただのトイレにこもるマイケル、パーティーなのに

どれくらい時間が経っただろう

トイレにこもるマイケル、パーティーなのに

今僕が入っているから入れないよ

パーティーの終了時間までここで待つんだ

そっと悲しみにくれて、壁の漆喰を剥ぎながら

誰にも知られないマイケル、ひとりでたたずむマイケル、トイレにこもりきりのマイケル

たったひとりで

 

I'm hiding, but he's out there, just ignoring all our history

Memories get erased, and I'll get replaced, with a newer, cooler version of me

あいつ(ジェレミー)は外にいて、きっと僕たちのこれまでのことなんか無かったかのようにふるまうんだろう

思い出は消されて、新しくてかっこいい僕に生まれ変わるんだ

 

And I hear a drunk girl sing along to Whitney through the door - I wanna dance with somebody!

And my feelings sink, 'cause it makes me think: now there's no one to make fun of drunk girls with anymore!

ドア越しに酔った女の子がホイットニー(・ヒューストン)に合わせて歌うのが聞こえるー「誰かと踊りたいわ!」と

それを聞いて僕の気持ちは沈む、だって酔った女の子たちをからかうような奴は誰もいないんだと考えてしまうから

 

Now it's just Michael in the bathroom, Michael in the bathroom at a party

I half regret the beers

Michael in the bathroom, Michael in the bathroom at a party

As I choke back the tears

I'll wait as long as I need, until my face is dry

Or I'll just blame it on weed, or something in my eye!

I'm just Michael who you don't know, Michael flyin' solo, Michael in the bathroom by himself!

僕はただのトイレにこもるマイケル、パーティーなのに

ビールなんか飲まなきゃよかった

トイレにこもるマイケル、パーティーなのに

涙を飲みこみながら

涙が乾くまで、いくらでもここで待とう

さもなければ雑草か何かが目に入ったんだと、うそぶこう

誰にも知られないマイケル、ひとりでたたずむマイケル、トイレにこもりきりのマイケル

 

Knock, knock, knock, knock

They're gonna start to shout soon

Knock, knock, knock, knock

Oh hell yeah, I'll be out soon

Knock, knock, knock, knock

It sucks you left me here alone-

Knock, knock, knock, knock

Here in this teenage battle zone-

Clang, clang, clang, clang

I feel the pressure blowing up-

Bang, bang, bang, bang

My big mistake was showing up-

Splash, splash, splash, splash

I throw some water in my face

And I am in a better place

I go to open up the door

But I can't hear knocking

Anymore

ノック、ノック、ノック、ノック

奴らすぐに叫び出すだろう

ノック、ノック、ノック、ノック

ああ、早くここを出なきゃなぁ

ノック、ノック、ノック、ノック

なんであいつ、こんなところに俺を置き去りにしたんだ

ノック、ノック、ノック、ノック

ここはティーンエイジャーの戦場だ

クラング、クラング、クラング、クラング

緊張してきた

バン、バン、バン、バン

ここに来たのが間違いだった

スプラッシュ、スプラッシュ、スプラッシュ、スプラッシュ

水で顔を洗って

ホッとしてドアを開けようとしたけれど

もうノックをする音は聞こえなかった

 

And I can't help but yearn

For a different time

And then look in the mirror

And the present is clearer

And there's no denying, I'm just-

何度も何度も、どうしても願わずにはいられない

そして鏡を見て

この状況はもはやあきらかだ

誰も否定できないさ、だって僕はただの…

 

At a party

Is there a sadder sight than-

*hums*

Michael in the bathroom at a party

This is a heinous night

I wish I stayed at home in bed watching cable porn

Or wish I offed myself instead

Wish I was never born!

I'm just MIchael who's a loner

So he must be a stoner

Rides a PT Cruiser

God he's such a loser

Michael flyin' solo

Who you think that you know

Michael in the bathroom by himself

All by himself

All by himself

パーティーなのに

こんな悲しい光景ってほかにあるかな

トイレにこもるマイケル、パーティーなのに

最悪の夜だ

家のベッドでケーブルテレビのポルノでも観ていたかった

さもなければこの自分を消してしまうか

生まれて来なければよかった

僕はひとりぼっちのマイケル

だからきっと頭のおかしいやつなんだ

PT クルーザーに乗ってるみたい(に不安定)だ

ああなんて負け犬なんだ

ひとりたたずむマイケル

君が知っていると思っているだけのマイケル

トイレにひとりぼっちのマイケル

たったひとりぼっちで

 

All you know about me is my name

Awesome party

I'm so glad I came

名前以外、誰も僕のことを知らない

最高のパーティーだな

ほんと来てよかったよ


George Salazar sings Michael in the Bathroom

Be More Chill (Original Cast Recording)

Be More Chill (Original Cast Recording)

 

 

Michael In the Bathroom

Michael In the Bathroom

  • provided courtesy of iTunes

 

『シティ・オブ・エンジェルズ』2018.9.2.so

f:id:urara1989:20180913000836j:image

f:id:urara1989:20180913000857j:image

シティ・オブ・エンジェルズ』とは

1989年ブロードウェイ初演のミュージカル。

『スイート・チャリティー』などを手がけたサイ・コールマン作曲、後に多くのディズニー作品を手がけるデヴィッド・ジッペル作詞。

トニー賞6部門で受賞。

今回は福田雄一演出。

あらすじ

ハリウッドでは映画『シティ・オブ・エンジェルズ』の製作が進行中。脚本家のスタインは、タイプライターに向かって日夜、映画のストーリーを綴っていた。

主人公のストーンはロサンゼルスの私立探偵。

彼を支えるのは秘書のウーリー。

ある日、謎の女性アローラが、継娘マロリーを探して欲しいと依頼する。

怪しく思いつつも依頼を引き受けたストーン。

ところが、この件から手を引けと暴漢から襲われる羽目に。

目を覚ましたストーンは元同僚のムニョスから女に弱いと揶揄され、かつての恋人ボビーと映画界の大物アーウィンとのトラブルを思い出す。

何もかももう懲り懲りと、ストーンは依頼を断りにアローラの家へ。しかし脅され、再びマロリーを探し始めることに…

名声を得るため、やる気満々でこの仕事に臨んだスタインだったが、プロデューサーのバディから脚本にあちこちケチをつけられ、削って、直して、悩んで…の繰り返し。

創作活動は混迷を極め、ある日思いがけないことが…

f:id:urara1989:20180913013327j:image

キャスト

ストーン  山田孝之

スタイン  柿澤勇人

マロリー/アヴリル  渡辺麻友

アローラ/カーラ  瀬奈じゅん

ウーリー/ダナ  木南晴夏

ムニョス/パンチョ  勝矢

ボビー/ギャビー  山田優

アーウィン/バディ  佐藤二朗

f:id:urara1989:20180913013340j:image

感想

この作品のOriginal Broadway Cast 盤が大好きでして、何度も繰り返し聴いていたこともあり、フルオケで聴く機会もそうそうないので、観劇することにしました。

『野郎どもと女たち』に代表されるような所謂バディbuddyもの、大好きなんですよね。

「You’re Nothing Without You」は名曲です。

↓ブロードウェイでの公演の一部をトニー賞授賞式のパフォーマンスより


City of Angels 1990 Tony Awards

例のごとく、日本公演キャストは全体的に若く経験不足なのは明らかだったので期待していなかったのですが、意外な才能を垣間見せてくれたのが山田孝之さんと木南さん。

この方々はいい声とミュージカルのセンスをお持ちで、新しい発見でした。

あとは、瀬奈さんと柿澤さんに支えられた舞台。

柿澤さんは、実に劇団四季時代の『春のめざめ』以来だから何年ぶりでしょう。

それ以外のキャストの方についてはノーコメントで…お察しください。

上記の曲は、一幕ラストに、それまでパラレルに進行していた映画の中と現実世界が交じり合う場面で歌われるのですが、この柿澤さんの最後のロングトーンが最高でした。

うーん、色々文句はつけたくなる場面は多々ありましたけれど、ここで帳消しにしてしまいたくなるほどでした。

文句をつけたい場面というのは、コメディのネタの浅はかさや下品さ、時事ネタの取り入れ方など、主に演出によるところ。

この演出のため、途中退出された方もいらっしゃいました。

ミュージカル作品は演出家による裁量で決めていい部分もありますが、今回のものとしては原作へのリスペクトに欠けていたように思い、私はとても不愉快でした。

笑わせれば全てOKなわけないですし、日本の観客を舐めすぎです。

また、ある出演者が「下手ですみません!」と言いながらダンスや歌をしていましたが、そういうことは言わないでおいてほしかったです。

たとえ下手であっても、黙っていても熱意は伝わりますし、そこまで下手だと自覚があるなら出演辞退していただければと思います。

『オペラ座の怪人〜ケン・ヒル版』2018.9.2.ma

f:id:urara1989:20180913000523j:image

オペラ座の怪人〜ケン・ヒル版』とは

1976年に初演された、ガストン・ルルーの同名小説を元につくられたミュージカル。

同じ題材を扱ったアンドリュー・ロイド=ウェバーのミュージカル(1986年初演)の方が巷では知名度が高い。

ケン・ヒルはロンドンを中心に活躍した劇作家、演出家として知られる。

あらすじ

「パリのオペラ座には幽霊が住んでいる」という噂が囁かれていた。

関係者たちは幽霊にまつわる慣習を守るようにと新支配人リシャードを諭すが、彼は全く取り合わない。

その夜、無名のコーラスガール、クリスティーンが歌姫カルロッタの代役を務めたオペラ『ファウスト』の公演で、出演者が不慮の死を遂げる。

遺体のそばには、幽霊からの謎のメモが添えられていた。

そして、幽霊からの突然の手紙がリシャードの元に。最高のボックス席の独占とクリスティーンの起用を求める内容に、リシャードはクリスティーン自身が関わっていると疑い、彼女を解雇する。

支配人の息子でクリスティーンの恋人のラウルも、彼女の楽屋から聞こえた謎の男の声に嫉妬し、かばおうとしない。

ところがそんなとき、カルロッタがどうしても歌えないと訴える。

喉を痛めたというが誰かに脅迫されている様子。

舞台にはカルロッタが立ち、歌はクリスティーンが歌うという妥協案がとられることになる。

だがその夜の『ファウスト』もまた、思わぬ大事故に見舞われるのだった。

動揺するクリスティーンは謎の男との不思議な体験をラウルに打ち明け、逃避行を約束する。

しかし物陰には謎の男=ファントムの影が。

恋が叶わぬことを知り、『ファウスト』のマルガレーテ役を演じることに。

これで騒ぎは収まるとリシャードは安堵する間もなく、今度は上演中の舞台からクリスティーンが消えてしまう。

彼女を救うために、謎めいたペルシャ人とともにオペラ座の地下に足を踏み入れたラウルたち一行を待ち受けるのは…。

キャスト

(会場にキャスト表が無かったので、公式HPに掲載されているもののみ)

ファントム  John Owen Jones

クリスティーン  Helen Power

感想

ALW版と比較して、クラシック、オペレッタ寄りという印象を受け、オペラ座という舞台に合ったナンバーで彩られている印象を受けました。

これはこれでよし。

ただ、今回の観劇で、改めてALW版のロック調のナンバーが、恋慕や嫉妬をいかに巧みに表現しているか、浮き彫りになったのも事実です。

また、ALW版よりもファントムの出番が少なく、『レ・ミゼラブル』のジャンバルジャン役としても知られるJOJの出演は二幕のごく終盤に限られていて、少し物足りなかったです。

確かにオペラ座の荘厳な雰囲気に合ったナンバーではありますが、笑いのシーンを増やしてもやや冗長になってしまった感じは否めず、もう一度観たいという類のものではありませんでした。

あまりにALW版に慣れ親しんでしまっているせいもあるかもしれませんが、少なくとも私はそうでした。


ミュージカル『オペラ座の怪人~ケン・ヒル版』公開ゲネプロ2018